名探偵の言い訳
僕は老人ホームで働いている。
天気が良い日は自転車で
西野亮廣さんのVoicyを聴きながら
通勤するんだけど、
西野さんが二日酔いだったか、
僕の出勤時間にはまだVoicyが投稿されておらず、
音楽を聴きながら通勤していた。
中島みゆきさんのファイト。
#闘うぞぉ
寒がりなので最近はもう
ウインドブレーカーの下に
ユニクロのダウンベストを着ている。
※余談だけども、一年前まで僕は超ガリガリだったので、ダウンベストを着ると職員さんから【ねずみさんが外付けの筋肉着てる。冬だなぁ。】とからかわれていた。
※さらに余談だけども、一年続けてきた筋トレ+プロテインで5キロ増えたので職員さんから【いじりにくくなりましたやん】とからかわれている。
#愛されてるなぁ
寒がりだからダウン着てるのに、
それで自転車をこぐと暑くなる。
今ぐらいの時期が一番着るものに困る。
#結果なんの話しやねん
いつも通りの坂道。
僕は自分で言うのもなんだけども、
些細な変化によく気付く性質で。
だれそれが髪の毛を切ったとか、
入居者さんが顔色が悪いとか。
なんというか…
頭の中にある絵と違う部分が気になる。
入居者さんの体調変化に早めに気付けるのは
僕の特技の一つだと思っている。
坂道を登っていると、
視界の左すみに普段と違う何かが映り込んだ。
少し通り過ぎながら、
何が見えたのかを認識する。
人、だ。
人がうつ伏せに倒れている。
庭の中に紛れていたので、
見つかりにくくなってしまっていた。
自転車をおり、すぐ駆け寄る。
前頭部と頭頂部に擦り傷。
微量だけど出血してる。
声をかける。
動いている。
こっちを向いて、何かを訴えている。
口は動いているんだが、
何を言ってるか聞き取れない…!
…イヤホンを外す。
「起こしてくれるかー…。」
よし、ちゃんと喋れている。
#ちょっと慌ててただけ
表札を見て名前を確認。
『お名前言えますか?』
「〇〇…」
間違えずに言えている。
痛いところはないか確認。
四つん這いにまではなんとかなることができる。
大きな骨折などはしてない様子。
介助にて立ち上がってもらうが、
ふらつきが強い。
玄関に座ってもらう。
…その間、何人か通り過ぎるんだけど、
だれも立ち止まってはくれない。
#傍観者効果キライ
『こけてしまわれたんですか?』
「日課の水やりをしようと外に出たらふらついてしまって。
頭を壁で擦ったみたいだけど、もう大丈夫だから。」
『失礼ながら、お家の中にどなたかおられますか?』
「ばあさんがいるけど、まだ寝てる。」
『お二人だけ?』
「2人やなあ」
老老介護、かな。
『ヘルパーさんなどは
おうちにこられていたりしますか?』
「前はきとったけど、もう断った。」と。
断っただと…!?ヘルパーは来てないのか…
このまま離れるのはちょっと不安だぞ。
しかし、
玄関に見覚えのある置き型の手すりが。
これはレンタル品では…?
#キラリ
レンタルならケアマネがいるはず。
事業所がわかれば一報入れておくんだが…
『ケアマネージャーの事業者の名前などは
わかりますか?』
「わからん…ありがとう、
ほんとにもう大丈夫だから。」と。
確かにこちらはうちの入居者さんではない。
倒れてたのも恥ずかしいだろうし、
初対面の奴に無理にいろいろ
聞き出されるのも嫌だろう。
その場は失礼させていただいた。
…しれっと帰り際に玄関の住所を確認。
地域包括支援センターにありのまま話す。
たまたまその方と面識があるような
職員さんが出てくださって(!)、
個人情報もあって
どこに事業所が入ってる、とかまでは
もちろん教えてもらえなかったが、
先方の事業者に伝えてくれるようだった。
#勝手に一安心
#お節介だったかもしれないけど
どんなことが起ころうとも、
なにも慌てることなく、
もん題点を客観的に見つめ、
だい丈夫ですか、と頼ってもらう。
【どん・な・もん・だい】
これがプロの介護職ですよ。
#えっへん
余談だけども
完全に遅刻したんだが、管理者から
「どうしたんですか。珍しいですね」
と聞かれて、
『道で倒れていたおじいさんを介抱していました』
と答えた時の管理者の顔。
そしてそう言った後の僕の顔。
…嘘じゃないんです!!!
本当なんですって!!!!!