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【我慢】【し続ける】ということ。
僕は老人ホームで働いている。
うちの老人ホームは、要介護(支援)認定を受けている方なら、一番軽度の要支援1の方から、要介護5の方まで入居できる。
介護度っていうのは、あくまでも介護の手間の度合いなので、要介護5だからなにもできないわけでもないし、要支援1の方は問題がない、ということではない。
全ての悩みは人間関係、とは確かによく言ったもんだなぁ…と思う。何歳になっても、それはそうなんだろう。
そもそも、介護が必要という共通点だけで、
あとは住んでいた場所も違う、生活様式も違う、 年齢も違う、違いだらけの人たちが集まる場所。
人それぞれ。
夏がダメだったりセロリが好きだったりする。
そんな中でずっと問題なく、誰からも【いい人】でいるのなんて、難しい。
普段なにも訴えず、ニコニコと過ごしてる入居者さん。
お住まいは遠方だったけど、一人暮らしが不安になり、ご家族の近く、僕の勤める老人ホームに引っ越してこられた。
どなたともよくお話をされ、落ち着いた日々を送っておられたが、少し前から同じフロアの入居者さんと些細な食い違いで関係性がこじれてしまっていた。
それでもその方は、
『何か気に触ることがあったのならごめんなさい』と、ご自分から声をかけられていたのだが…
…相手方からすると、その方が何を言おうが、もう『キライ』という思いが先に来てしまっているので、言われている内容は、入ってこない。
今思えば、そういう大人な態度が鼻についてしまっていたのかもしれない。関係性は、こじれたままだった。
つい先日、職員さんがその入居者さんと話をしている時、その方は難聴で、何回か聴き直しをされていた。
いつもニコニコの入居者さん、親切心からその方に『職員さんは、買い物に行きますけどほしいものは無いですか?と聞いてくれてるのよ』と伝えたんだけども、
『あんたには聞いとらん!黙ってい!』、と一喝。
そのニコニコの入居者さんの、ピンと張っていた糸が切れてしまった。
部屋から出てこれなくなり、その入居者さんの声が聞こえるだけで動悸がしたりするように。
「ずっと我慢してきたのに、ダメね。」と。
人生の大先輩に、若輩者が偉そうに言うけども、
【我慢】を【し続ける。】
のは無理だ。
だって、
自分でもう【我慢】って言っちゃってるし。
ほんとはしたくないこと、やりたいことを必死で隠してたっていうことでしょう?
何でもかんでも好き放題にもできないけども、
ずっと我慢もしなくていいから。
出会った人全てに愛されたいけど、
出会った人全てには愛されない。
みんなに愛されようとしなくていい、
合わない人とは距離を置いたらいい。
対処として、その方には別の階に移ってもらった。
毎日、部屋から出てきて他の方とのお話を楽しまれている。
次僕がやることは、きつく当たってしまった入居者さんの話を聞くこと、だろう。
全ての悩みは人間関係。
わざわざそこに足突っ込まなくて、いいのになぁ。