なにを、どう伝えるか。


僕は老人ホームで働いている。

そこの入居者さんたちは、
文字通りここがホーム。

ここで、暮らしている。

ここでの生活を支えていくのが、
僕たちの大きな仕事。


生活を支えるには、
『誰々さんが腰痛かったよ』
『熱出てたよ』
という、情報の共有が重要。

その共有範囲はホーム内だけではなくて、
リハビリの先生、往診医など
生活に関わる皆が同じ情報を共有してるのが理想。

逆に多くの人が関わるからこそ、
経験や業種からそれぞれの解釈があるし、
観察した事実を伝えることが大事。


そう、事実を伝えることが大事なんだけども…


事実だけ伝えてどないすんねん、という話。




今日『血痰を吐いた方がいる』
という申し送りがあった。

「ええっ?!血痰??!」

とびっくり。

すぐ、その入居者さんのところに行って
直接見て、聞いて、
それを申し送った職員さんからも話を聞いて、


ふむふむ。


ティッシュに血混じりの痰がくるんであるのを見て、
その方がゴホゴホと咳をしていたので、
血+痰+咳=『血痰を吐いた』の申し送りになった。

その方の口の中を見ると、
歯茎から出血していて、
口腔ケアでキレイにしたら、
血は止まった様子。

多分これが事実であり、ここまでが観察。


ちょうど今日往診予定だったのでその際報告、
としていた。


で、往診の際、担当の職員さん、
『今日この方、血痰を吐いたそうです。』

往診の先生、
『あー。えっと、いつ?どんな時に?今も続いてるの?苦しそう?』

担当さん
『あっ、ちょっと…えーっと、その見た人に聞いてきます。あ、ネズミさん(僕ね)、誰が見たんでしたっけ?血痰なんですよね?」



まさかの右から左へ受け流す報告。

事実は大事。
それはほんと。

…でも、言われたことを
そのまま言えばいいってもんじゃない。


僕が説明して、
様子観察、口腔ケアはしっかりと。
となった。



僕は医師ではないので判断はできない。
でも、入居者さんの一番近くにいるのは、
僕ら職員。

判断はできなくても、
一番その人のことを知ってる。

そこには自信と責任が必要。

責任を持って、観察した事実を
自信を持って、申し送る。


観察っていうのは、
現場に足を運んで、
実際にその人から話を聞いて、
現場の状況を自分の目で見る。

聞いたことをそのまま言うだけじゃあ
申し送ってる意味がない。


なにを、どう伝えるか。

そこにも聞く相手への配慮が必要、
と思った。

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