抜身の刀
僕は老人ホームで働いている。
けども今日は休み。
奥さんは別件で出かけていたので
子供と三人で昼も夜も外食になった。
休みの日はご飯を作ったりするので、
昼夕外食はまぁまぁ珍しくて、
僕もお子らも楽しんだ。
…んだけど、
下の子にとってもヒヤヒヤした。
まー正直。
遠慮はない。
小学校一年生といえば
こんなもんだとは思うけど…
お昼のラーメン屋さん、
僕は、美味しかった。
僕なりのラーメンが美味しいかどうかの基準、
それは、一口目から美味しくないこと。
一口目から美味しい、と思ったラーメンは
ほぼ100%、最後まで美味しく食べれない。
濃いんだと思う。
はじめ「ん?薄いかな?」って
思った時の方が最後まで美味しくいただける。
#なんの話
僕は先に食べ終わって、
子供らを待っていたら下の子が
『このスープ美味しくない』
と普通の音量で言い放つ。
「やめとけ!」
と慌てて制し、
子供の分をさっと食べて店を出た。
下の子からしたら
シンプルに薄かったらしい。
「一生懸命作ってはる人の前で
料理の文句は言うたらあかん。
言うんやったら、お店出た後や」
と、お願いした。
晩ご飯、
ハワイアン…バー?カフェ?みたいなお店。
夕方早めに行ったので比較的空いていた。
料理を待ちながら
学校の話、
TikTokの話、
あつ森の話…
…
隣の席のマダムたちの音量がでかい。
静か目の店内に響き渡っている。
ペチャクチャペチャクチャゲラゲラゲラゲラ…!
うーん、うるさい( ̄▽ ̄;)
でもなぁ。
喋ってはいけない場所ではないし、
静かにしてください的なことを言うのもなぁ…
これは、仕方ない。
諦めてご飯を食べていたら、
再度下の子が、
『むちゃくちゃうるさい。』
と、普通の音量で言い放つ。
「やめとけ!」
と再度制すも、
ペチャクチャゲラゲラ…
スン…
完全に聞こえてるやん!
#ごまかし効かず
静かにご飯が食べれるようになったけども、
味は分からなくなっていた。
その正直さが羨ましくもあった。
まるで抜き身の刀のよう。
まっすぐ。
キラキラで、
切れ味抜群。
自分はもう鞘に入れっぱなしだなぁ。
ただ過ごしているだけで、
多くのことに気を遣ってるんだな…
と、正直な下の子を見て
しみじみと思った。