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"CRUISEする"というあそびから生まれた”医療の枠を超えていく会社”のおはなし

ずいぶん涼しい季節に、いや寒くなりましたね。ついこの間まで汗をだらだらかいていた気がするのに、もう冬の気配。お鍋の美味しい季節になりました。

この季節になると、ボクの人生のタイムラインはこんな話題で溢れます。

「大雪山系旭岳で初冠雪!昨年より5日遅く」
「今年の夏はラニーニャ現象だったから大雪かも!?」
「どうやらカメムシが大量発生しているらしい!」

ボクの周りには雪を待ち望む人たちがたくさんいます。

かくいうボクもその1人で、いまではすっかりウィークエンドボーダー、しかも年間滑走日数は片手で数えるくらいではありますが自称スノーボーダーです。経験年数だけは立派に積み上がっていて、もう25年くらいやっているんじゃないでしょうか。びっくりします。

若い頃はただ楽しくて楽しくて、冬だけじゃなくて1年中スノーボードのことを考えていたし、稼いだお金のほとんどを注ぎ込んでいた気がします。でもいまは子どもたちに教えながら滑ることがほとんどだから、ゆっくりまったり楽しむ感じだったり。謙遜でもなんでもなくぜんぜん上手じゃないんです。

スノーボードの魅力、それはたくさんあります。大自然との距離感だったり、ウェアやギアのファッション性だったり、スポーツとしての面白さだったり、たくさんあるんだけれど、ボクがいちばん魅力に感じているのは、"不自由の中の自由"における"解釈のスポーツ"であるということだと思っています。

もともとスキーヤーのためのゲレンデを主なフィールドとしながらも、聡明期はゲレンデで滑ることができなかった先人達は裏山・バックカントリーを滑ってカルチャーを育ててきました。そのカルチャーをベースとして、整備された山へフィールドへと移すことになります。ボクが大学生のころ、長野オリンピックくらいが大きな節目だったように感じます。そして当たり前の話ですが、スノーボードは雪の上を滑るわけですから、雪の質や気候にめちゃくちゃ影響を受けます。そしてスケートボードカルチャーに大きな影響受けるスノーボードは、時代によって滑り方・スタイル・ファッションといったことにも変遷があったりします。時代・場所・気候を捉えながら自分なりの解釈で楽しむ、そんな自由なスポーツだと思っています。

フィールドに関して言うと、多くの人は裏山・バックカントリーを滑ったりすることはなくって、ほとんどの人がゲレンデを滑っています。裏山・バックカントリーまで含めて俯瞰してみると、滑るためのフィールドは山全体になるのでかなり広範囲になりますが、ゲレンデに限ってみたとしても、斜面やオブジェクトをどう解釈するか?ということが求められる、"不自由の中の自由"における"解釈のスポーツ"、ボクにとってはそういう遊びなんです。

例えて言うと、ゲレンデの脇に雪の壁があったとき、その壁をどう使うか?ということ、つまりどう解釈するかというところにセンスや経験が見てとれる、そしてその解釈を本人が楽しんでいれば称賛し合えるカルチャー。単純にスキルだけではない”多面的におもしろがる”感じ。ひとことで”スタイル”という言葉でまとめてしまうことがありますが、そういう”多面的におもしろがる”ところは競技スポーツが出自でない故のおもしろいところ、同じ3S(サーフィン・スケートボード・スノーボード)でカテゴライズされるスケートボードやサーフィンにもそういう空気感があるように思います。

ボクは小学生のころにスケートボード、思春期にスノーボードに出会って、いろいろな影響を受けてきました。ウェブサイトをつくること、プログラムを書き始めたきっかけは、山の近くに住んでいるカッコよくてカルチャーに対するアンテナ感度の高い人たちが話すことを離れていても見たい・聞きたい・知りたい、じゃあインターネットを介して情報として発信できないか、と思ったことだったりします。

そしてボクがスノーボードを通して得た”多面的におもしろがる”こと、何かの対象があったとき正面からだけではなくいろんな角度で捉え直してみるということは、ボクが会社組織を出ておいかぜという会社をつくること、そしていまお客さんの課題に対して向き合うときの行動原理になっています。

おいかぜにはボクと同じようにスノーボードカルチャーに魅了されて、”多面的におもしろがる”ことから気付きを得てビジネスを展開しているお客さんがいます。

大阪でくるーず薬局という調剤薬局・在宅医療の事業を展開されているmedical cruiseさんです。

代表の芳川さんはスノーボーダー。とある縁でおいかぜにウェブサイトの制作をご依頼いただいて、くるーず薬局さんのサイト制作をお手伝いさせていただきました。とてもアットホームで地域に根差した調剤薬局を軸とした医療事業者さんです。初めてのお手伝いのときから芳川さんの視点はおもしろいなぁ、ユニークだなぁと思っていたのですが、ある日そんな芳川さんからメッセージをもらいました。

僕なりに考えて作ってみたのですが、
もっとみんなが大切に出来るように、愛着をもてるように
くるーずっぽく、そしてチカラ強く
おいかぜさんでデザインして
もらうこととかって可能ですか?
A3とかでスタッフに伝えるものとして考えてます。

ここでお見せすることはできないのですが、それは会社の理念やビジョンや行動指針が書き綴られた資料でした。彼の想いが溢れる、彼の会社で大切にしている言葉たちでした。それを11月に開催する社員総会で発表したいとのことでした。

コロナ渦の4月、さっそくリモートでいろいろ話してみることに。彼が事業としてやっていることは、その想いの言語化そのものなので、もしかしたらボクがお手伝いすることはないかもしれない、そんなことを考えながら話していたとき、思いがけない話になりました。

柴田「そもそもmedical cruiseの"cruise"ってどういう意味なんですか?航海するって意味ですよね?」

芳川「くるーず薬局のときにお話をしたとおりで航海するって意味も込めてるんですけど、実はスノーボードのクルージングって意味の方が強いんですよね。でもスノーボードのクルージングの説明を社員にしてもポカンってされるので……」

柴田「え!それめちゃくちゃ芳川さんらしくて良いじゃないですか!!それをちゃんと言語化してみませんか?」

くるーず薬局のくるーずは航海するって意味だ、そう聞いていたはずが、まさかのスノーボードのクルージングという言葉も含まれているなんて!びっくりしたのと同時に、とても嬉しくなったことをよく覚えています。ボクと芳川さんは、その会話からひとしきりスノーボードのクルージングについて語り合ったあと、ある動画に辿りつきました。芳川さんが挙げてくれたこの動画、ボクもSNSで見つけて大好きな動画でした。スキルははちゃめちゃ(上手いなんてもんじゃない!つまり上手い!)だけど、クルージングってこういう楽しさあるよなぁ、ワクワクするなぁって思わせてくれる、とてもとても良いムービーです。

ダイレクトにこの動画を社員さんに観せることが一番手取り早いはずなのですが、これってスノーボードをやっている人にしか伝わらない。たぶん。

でもこの温度感でクルージングの本質を伝えたい、ボクと芳川さんは何度もコミュニケーションを重ねました。

彼がスノーボードのクルージングから着想を得て会社名にまでつけたという起点、それは”当たり前のことを当たり前にせず視点を変えて何事もおもしろがって取り組んでほしい”ということ、”医療の枠を超えてお客さんの暮らしや人生に寄り添うためにどんな些細なことでもいいから行動してほしい”ということなのです。芳川さんはその行動のことを”CRUISEする”と名付けてくれました。

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何気ない会話から始まった、会社の根元の言語化から、リーフレットとムービーをつくることになりました。

ボクが芳川さんの想いを言語化し、小室さんがディレクションとイラストを、ムービーは撮影からオーサリングまで中西ちゃんが担当してくれました。上の画像はリーフレットの一部。medical cruiseのコアである"CRUISEする"ことを、スタッフのみなさんやこれから新しく入ってくる学生さんたちにわかるよう・伝わるようにデザインしました。同じコンセプトで制作した映像、こちらは近日完成予定。とても楽しみです。

芳川さんは社内のことやスタッフのことをとても大事にしています。それが今回のリーフレットと映像の制作に繋がったわけですが、社内に対して自社のことを言語化して伝えていくインナープロモーションは、最終的には広報として絶大な効果を発揮すると思っています。いろいろと内情を知っている社内のスタッフに向けた情報発信というのは、とても本質的で中身が詰まったもになります。わかりやすく言うと嘘がつけない。それが会社の外の人たちに滲み出るように伝わったとき、効果的な広報・情報発信にしかならないわけです。

 ボクはmedical cruiseさんの打ち合わせに行くのが大好きで、いつも楽しみにしています。それは芳川さんと話すことはもちろんのこと、medical cruiseのみなさんの明るくて元気で、いつも前向きに自分の視点を持って、患者さんや患者さん家族のことを思って行動している姿を見ることができるから。

ボクたちの”CRUISEする”という言語化のお仕事が、medical cruiseのみなさんの”はたらくをデザインする”ことにつながって、芳川さんの理想とする会社づくりの"おいかぜ"になれば、こんなに嬉しいことはないなって、そんな風に思っています。


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