新刊 ＳＦコミック「リサイクルブレイン」（原作：米村貴裕、漫画：筆野咲）
銀河企画からＳＦ漫画コミックの小説「リサイクルブレイン」（原作：米村貴裕、漫画：筆野咲）が発売されました。本作品は、前編《夢幻の生命》と後編《異界の生命》に分かれています。
1. 小説の概要
この作品は、未来的なテーマパークとその中で生きる空想生命体との関係が、現代の技術進歩と倫理の衝突を描き出す、非常に深いテーマを持っています。従業員の山野ハヤテと恋人であるドラゴンのヴィーネの関係を中心に、物語は進みます。「プログラムされた愛情」かもしれないという疑念が示すように、愛や感情の本質に踏み込む点が非常に興味深いです。
デジタルカルト集団の襲撃によって始まる波乱の展開は、未来技術に依存するテーマパークの表と裏を描き出すだけでなく、現代の「テクノロジーへの依存や信仰」に対する警告も含まれています。ハヤテが「現代文明を破壊しようとする」場面は、人間が技術や文明に抱えるジレンマと、それに抗う心理の象徴でしょう。
この物語は、空想生命体と人間との複雑な関係を通して、命とは何か、感情とは何かを問いかけています。倫理的な問題が山積みで、ハヤテが「自らの手で文明を破壊しようとする」理由や、それに対して立ちはだかる存在が何を象徴するのか。これらが、どのような結末に向かっていくのかに興奮が止まりません。
2. 前編のトピック
第１章「インディペンデンスの魔手」では、テーマパークでの平和な日常がデジタルカルト集団の襲撃によって一変する展開が描かれます。ハヤテの視点から、この襲撃がどのように非日常へと変わっていくかが感じ取れます。ここでのハラハラ感と、今後の波乱の予感が物語に引き込む強いポイントです。
第２章「ノラ空想生命体のテロ活動」では、空想生命体と人間が共存する中、テロ活動が発生することで、物語はさらに深い倫理的な課題に突入します。人類の未来を揺るがす脅威に直面する場面は、作品全体のテーマである「命と技術の倫理」を突きつけられる重要な箇所です。
第５章「プログラムされた愛情」では、ハヤテが自身の感情について深く葛藤するシーンがあります。恋人であるドラゴンのヴィーネとの関係に疑念を抱き、感情が「プログラムされたもの」かどうかを問う場面は、愛と感情の本質に触れる心に響くエピソードといえます。この疑念と葛藤が物語のクライマックスへとつながっていく点が非常に興味深いです。
このコミック小説「リサイクルブレイン」は、他にない独自の特徴がいくつかあります。空想生命体との恋愛ドラマと倫理の葛藤、近未来テーマパークの背後に潜む闇、文明崩壊と新天地創造を通した壮大なスケール、生命・倫理・創造力の三つ巴のテーマ。この作品は三つのテーマが複雑に絡み合う物語です。現代社会が直面するAIやバイオテクノロジーなどの倫理的な問題を背景にして、生命の尊厳や文明のあり方を問いかけている点が、他のSFやファンタジー作品にはない深みを与えます。これらの点から「リサイクルブレイン」は単なるSFやファンタジーの枠を超え、現代社会が直面するテーマを未来的に描いた、独自性の強いコミック小説といえます。
3. 特殊な用語
「インディペンデンス」
この用語は、第１章で登場し、主人公が働くテーマパークに不穏な影を落とします。ここでの意味は、デジタルカルト集団が目指す自立と支配の象徴とされ、彼らが抱く独自の思想や危険な目的が物語に波乱を引き起こします。
「プログラムされた愛情」
第５章で出てくるこの用語は、主人公ハヤテとドラゴンのヴィーネとの愛が「本物の愛」か「プログラム」かを疑う重要なテーマです。AIや合成された生命が発達した近未来においての倫理的問題が描かれています
「狂える愛の司法取引」
後編の第８章に登場するこの用語は、主人公とカルト集団、さらには異界の存在との関係が、法的および倫理的な取引の対象として扱われる場面を示します。
「フェーズ３」
第１２章で出てくるこの用語は、物語のクライマックスであり、古い文明の終焉と新たな生命や価値観の誕生を象徴しています。このフェーズは、再生や新天地の創造を通じて、文明の再構築に向けた希望を描いています。
4. 特設ページ
「リサイクルブレイン」ーーー 生命の情熱、科学の倫理、そして創造力が三つ巴に交錯する、近未来の空想科学コミック、現代に誕生。