出産の医療保険化について ⑦
SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ96号(2023.07.12)の配信内容の続きです。
↓前回の内容はこちら↓
自費診療と保険診療
日本での医療費は保険点数で細かに決められていますが、保険を「使わない人/使えない人」に対しては、自費診療となるので、医療機関は料金を自由に設定できます。
しかし自費とはいえ、一部のブランド病院は別として、お産の料金は産婦人科医会などの取り決めもあり、ある程度の範囲に定められています。その料金によって国の出産一時金などの補助金額も算出されていますので、全くの自由料金体制とは言えないところがあります。
しかし誘発分娩や吸引分娩、輸血等に対して、どの程度の病状ならばどの治療に何日間保険を適用するのか、などは施設や医師の考え方によってまちまちです。そして医療を施し保険を使うほど総医療費は積み上がって高くなりますが、保険によるカバー率を高くなるので患者の支払額は少なくなります。
例えば私の勤める病院の場合、緊急帝王切開ではほとんどが保険でカバーされますから、50万円の出産一時金でおつりが来ます。
逆に医療介入の無い自然なお産では保険適応はゼロですから、自己負担は大きくなり、最も安い平日の時間内のお産でも自己負担金が発生します。
もう少し詳しくいうと、入院しているだけでかかってくる様々な加算があります。例えば、
急性期の看護補助者を一定程度雇っている加算
看護職員の処遇改善に取り組んでいる加算
臨床研修病院の資格を認められている加算
救急医療や周産期医療に取り組みさらに医師の処遇改善に取り組んでいる加算
感染症対策チームを持っている加算
紹介・逆紹介が多い加算
医師をサポートする医療事務を多く雇っている加算
病棟へ薬剤師が出向いて仕事をする加算
等など21の入院加算項目があり、自費の患者さんにはすべて算定してよいことが認められています。
急性期の大きな病院ではほとんどの項目が国に届けられ認められていますから、これらがすべて加算されます。
一方保険入院の場合はDPCによる丸め評価(包括評価と言います)のため、ひっくるめて算定するので半額くらいになり、さらにこれが保険で3割負担になりますから、個人負担は自費に比べて半額×30%となり、トータルでは15%の負担で済みます。
入院加算すべてを計算すると正常分娩では64,370円の加算額を支払うところ、保険入院だと9,655円で済みます。
要するに保険だと丸めで割安になるのに自費だとすべて積み上げることになる、ということです。
病院であれ助産所であれ、正常分娩であれば施設の売り上げ(つまり収入)は少なくなる一方、産婦の自己負担額は多くなるという仕組みは、不合理だと思います。
お産の何を評価するのか
仮に「楽に生まれたのだから安いのは当たり前」という屁理屈があったとしても、だからと言って「医療の力を借りずに生んだら負担金が多くなった」というのは、庶民の肌感覚からすると納得できないものがあります。
医療を使わずに生んだのなら、逆ご褒美があってもよいのではないでしょうか。
結局この話は、お産の何を評価するのか、という根本問題に関係します。
分娩の意義や価値をトータルに評価するならば、寄り添い、励まし、摩り、受容するのドゥーラー役割を果たしながら行う分娩介助の技術料は、癒着などのある複雑な帝王切開の技術料と同等であっても良いように思います。
これまでのお産の料金体系では、安心安全なお産とそれに続く女性の成長や母子の成熟支援などと言った助産師本来の役割が考慮されていませんでしたが、この機に助産師本来の業務への評価を点数化する必要があると思います。
(次号へ続く)
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