プライマル・ヘルス2「プライマル・アダプティブ・システム」
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今回は、メルマガ14号(2021.8.7)の配信内容です。
前回紹介しましたプライマルを基本と訳しましたが、基本より初期とした方がわかりやすいのでそちらに変更します。
また適応システムも連携システムに変更してみます。すると次のようになります
「ヒトには系統的発生からすると視床下部に代表される古い脳である初期脳(プライマル・ブレイン)を持つ。この部位を土台に免疫系や内分泌系が発達し初期脳連携システム(プライマル・アダプティブ・システム)という機能システムが出来上がる。このシステムが完成するまでの重要な時期を初期脳設定期間(プライマル・ピリオド)という。その期間中に基本的要求がどの程度満たされるかが、健康の初期状態(プライマル・ヘルス)を左右し、その後の個人の健康に大きく関与する。」
第2章 初期脳適合システム(プライマル・アダプティブ・システム)の具体例
(荒堀のリライト版)
胎児下垂体からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌は、妊娠3ヶ月で日内変動まで完成します。下垂体の分泌機能は視床下部からのホルモンで調節されますから、(初期脳の中枢である)視床下部は妊娠3ヶ月でフル稼働していることになります。またACTHは全身を駆け巡りますから、まもなく胎児副腎に作用して副腎からのコルチゾルも産生さるはずです。
したがって初期脳と免疫系の連携(初期脳連携システムの設定)の時期は胎児期の相当早い時点だとわかります。設定が完成するのも相当早いでしょう。これがヒトの健康の初期状態としてセットされるとなるとどうなるか。
これまで胎児の崔奇形性の時期のみを臨界期とよび注目してきましたが、視床下部など初期脳の機能連携システムが胎児期の初期に設定されるとなると、「奇形の有無どころではなく、脳の連携システムに注意せよ」となります。
この早い時期を初期脳連携システムの初期設定に関わる臨界期としなければならないのです。
ところで大学生の5月病はなぜおこるか?
それは新入生のストレスや興奮状態が高コルチゾル状態を引き起こし、コルチゾルでセロトニン分泌が低下し気分が落ち込むからです。またコルチゾルが高いと免疫系が抑制され風邪やウイルス感染を招きやすくなります。配偶者をなくした男性もストレスでコルチゾルが上がり、内分泌系と免疫系が抑制され6週間はうつ状態になると言われます。
しかし全員がその状態に陥るわけではありません。その理由について、オダン氏は初期脳連携システムがどのレベルで設定されたか、健康の初期状態が後年に影響することを示唆しています。
同様の例を出しましょう。
心が落ち着くにはセロトニンの働きが重要です。セロトニンの脳内分泌を増やす方法としては、日光浴、運動、喜怒哀楽の表出(涙の効果など)、睡眠の改善などがあります。
日光浴は網膜・視神経を通じてキャッチした光のエネルギーが、化学的エネルギーに変換され、それが脳の縫線核からのセロトニン分泌を増やします。胎児は光刺激を妊娠6ヶ月には感じる様になるので、それまでに子宮内に光刺激を当てることが必要でしょう。
初期脳連携システムがセットされる時期に刺激が届かないと、健康の初期状態(プライマル・ヘルス)は異なったレベルで設定されることになります。このときの初期脳の健康レベルが全身の健康レベルです。胎児への適切な刺激が必要です。こうなると具体的には、「ともかく余計な処方や介入はしないように」としか言えません。「胎教」を初期脳連携システム完成のための一助として見直さなければならないかも知れません。
出生後大脳新皮質は大きく成長し、理性面で脳全体の支配権を持とうとしますが、初期脳は喜怒哀楽、同情、反感、好嫌の感情など情動の中心でありつづけます*。つまり個体として生きるための強い衝動を与えるのは初期脳で、天地万物への帰属感、宗教的感覚もそうだといいます。
*他人を褒めたり非難したりする時、その説明をよく観察すると、後付であることがあります。つまり原因⇒好き嫌いになる、のではなくて、まず好き嫌いの感情⇒理由を後付、が珍しくありません。
初期脳の感情の理由付けや意欲の達成に、新皮質が駆り出されるのです。初期脳を古い動物脳と軽く考えるのではなく、初期脳は終生個人の核心に位置し続けます。
だからこそプライマル・ピリオドが重要なのであり、正常経過であっても妊産褥婦への生活指導が必要なのです。
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