
美しさは潜んでいる
うなだれるほどの暑さが嵐とともに緩やかに熱が冷めてきた。
休日にむくりと起きて、リビングに上がると出来上がった自由研究(ほぼ妻の努力)を宝物のようにキラキラした目で見つめる子供達。
猫たちが窓際で外の世界を眺めている。
風がふわりと吹いて、猫たちが目を細める。風が少し秋の匂い。
何かが変わってきた感じを猫たちも気づいているのかもしれない。
地下のデスクで会計処理。
数字は無機質なのようでいて、時期ごとに有機的な動きをする。
確か毎年、この時期は凪いでいる。そんな感じがある。
淡々と処理していき、銀行へ向かう。ATMは土日が空いている。
ふぅと一息ついて。積み残しの仕事を振り返る。
掃除を怠った部屋に埃が積もるように小さな業務が残る。
コンビニで買った弁当食って暗がりの地下で黙々と作業。
妻が子供用プールを片付けている。
みんな、夏の終わりをうっすら感じてる。
娘は小さなカゴをもってきて、プチトマトを採取している。
猫はみんな下にいるから玄関で並んでおすわりしてる。
平和な週末。夏の終わりが流れていく。
最近、こんな仕事をした。
京都伊勢丹のtebacoポップアップのクリエイティブを担当しました。
— 松倉 早星 / Nue inc (@sbr_m) August 24, 2019
「夕露」というお題をいただき、夏と秋のあいま、夏の湿気と秋の涼しさで夕暮れ頃、草木に露のたまが結露します。昔の人は、それを「夕露」といい四季の変化を楽しんでいました。ばりおしゃれ。 pic.twitter.com/Ux0XegSOlm
思考プロセスはツイートにまとめておいたけど、過去の人たちは自然の微細な変化を楽しみ、文化としてきた。それを言語化する中で日本語は豊かに育ったのかもしれない。現代人の僕らでは見落としてしまうような小さな変化に美しさを見出した。
プロセスを要約すると「自然ではなく手に持つスマホの画面を見ている」というファクトから、それを否定せずにスマホというもう一つの目のフィルターとなるような透明なフライヤーを作った。
そのフィルターを通じて目線をあげる。自然へと向かわせる。
中には露をモチーフとした有機的な円にグラデーションを施した。
これ越しに撮影すれば幻想的な写真が取れる。記憶が美化されていくように撮影された風景は瞬時に過去となり、スマホの記憶となる。
世界には微細な美しきものがひしめいているのだと思う。
過去の日本人がそれを見出し続けてきた。
プールの片付けでたまる水の波紋とか、赤々とみのるミニトマトのわずかな色味の違い。ふわりと流れる風の匂い。
そんな細やかな風景に美しさは潜んでいる。
それを見いだせるかは否かは、こちら次第なのである。
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