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物語の書き方
ウェルメイドの物語(よくできた物語)というのがある。映画でもテレビドラマでもアニメでもゲームでも、鑑賞してカタルシスを得られるような物語である。そういう物語を、どうやって作るか、私なりに考えたことをシェアしたたい。
物語を書きたい人に参考になれば幸いである。
簡潔にいうと、よくできた物語というのは、「死」を受け入れる過程を、しっかり描いた物語だ。
物語は、生きている人間を描くものではない。
死んだ人間を描くものだ。ここがわからないと、物語を創造するのが困難だ。
なので、物語を書く人は、「死」を意識して書いて欲しい。
そして、女の人が死んでいるケースが圧倒的に多い。日本文学は、死んだ女を描く物語だ。欧米の文学は、神の死を描いている。
『君の名は』というアニメがあった。私も観て、よくできたアニメだと思った。テレビで放送したのを酔っ払ってみていて、ボロボロ泣いてしまった。
あらすじは端折るが、『君の名は』のポイントは、三葉が既に死んでいるということだ。死んだ三葉を、瀧という男子高校生が、時空を超えて救い出すというファンタジーである。
ファンタジーはというのは、生者と死者が、交流可能だと条件づけられた世界を設定して、想像力を駆使することで生まれる。
YouTubeで観て、なるほどと思ったので、紹介した。解剖学者の養老孟司さんと脚本家の倉本聰さんの対談で「死」について語っていた。
養老先生は、5歳で父親と死に別れたそうである。その後、道で出会った知り合いに挨拶するのが苦手で、母親によく叱られたそうだ。養老先生が、40過ぎて、地下鉄の中で、なぜ、挨拶するが苦手か、その理由に、自分自身の力で、気がついたそうである。
それは、臨終の父に「さよなら」を言えなかったからだ、と。
そして、その瞬間に、地下鉄の中で、涙が溢れてきて、「父が死んだ」と初めて、理解したそうである。
死者に「さよなら」と言わなければ、その人は、死んでいないのである。死者が生きているという錯覚、あるいはファンタジーの中で、生きることになる。養老先生は、父親の理不尽な死を、30年以上も受け入れられなかったことを告白していた。
子供は、死を受け入れられない。大人は子供の死を受け入れられない。
女性が子供が死ぬという現実を、どう受け止めるか?
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」
これは、村上春樹の『ノルウェイの森』の有名な一節である。
あの小説は、ワタナベ君の頭の中で直子が、死ぬまでの過程を描いた物語である。死を受け入れていく話である。
人間は、惰性の中で生きているので、死んだものを、まだ生きていると錯覚する。死を死として受け止めることは、脳みそを一部入れ替えるほどに、大変なことだ。また、親しい人の突然な死は、あまりに理不尽なので受け入れがたい。想像力の中で、死者が生きていると仮定して、やりくりしている。
四十九日や、お盆というのは、死者への想像力に関わっている儀式だ。
『君の名は』で言えば、三葉という主人公の女子高生は、既に隕石の衝突で死んでいるのである。その理不尽な死を、まだ、子供である者の死を、同じく子供である、瀧という男子高校生が、どうやって受け入れるか? というのが、『君の名は』の物語のテーマである。
隕石が衝突しないパラレルワールドがあった、ということで、あのアニメは、終わっている。それは、商業ベースのファンタジーなので、ああいう結末しかとりようがない。
通常は、理不尽な三葉の死を、子供であり女性である者を、何らかの形で時間をかけて、受け入れて、生きていくのである。あるいは、受け入れるまでの過程が、物語なのである。
日本で創作される物語では女の人が死んでいるケースが圧倒的に多い。日本の近代文学は、死んだ女を描く物語だ。欧米の近代文学は、神の死を描いている。
川端康成の『雪国』は、葉子という、死者をイキイキと描いている。彼女は、生きながらに死んでいる。御墓参りが、生きがいの女である。『君の名は』の三葉によく似ている。
日本の物語で、神の死を描いているものを、私はほとんど知らない。(なぜ、日本には「神の死」を描いたものが、ないのか、問い続けてみてください。)
『こころ』はKの死を描いている。でも、Kは前近代の人である。先生も、然りである。
死者をイキイキと描ければ、生者を描くのは簡単なことだと思う。
そして、「死」を想像するのは、難しい。
動物は、どれも「死」を本能的に、避けて生きているから。
(ざっくり要点だけ書いたので、機会があれば続きを書きたい。)
(おわり)
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