教師にスキルなんかないと思ってた。
息子は1月に2歳になったばかり。
月齢の割によく話すし、こちらの言うことも理解できるようになってきた。
前より会話ができるようになってきて楽しいし、もうそれはそれは可愛い!!!
でも当然、まだ理解できないこともたくさんある。
旦那は息子と話していてうまく伝わらないとき、伝えよう伝えようの気持ちが前のめりになって、同じことを言い換えて、何度も何度も繰り返して話していることがあった。
そもそも旦那が息子に話すときは、並べる単語が多すぎるな、と前から感じていた。
私はこの旦那と息子のやりとりが気になって気になって仕方なかったのだが、あ、こりゃ職業病だ、とある時気づいた。
(初めましての方もいると思うので言っておくと、私は公立中学校の数学教員である。)
1.私たちの仕事
私たちはまっさらな子ども相手に、はじめての知識を教えるのが大きな仕事だ。
ひと昔前の学校のように、1時間教員がしゃべりっぱなし、生徒はノートを必死に写すだけ、みたいな授業はさすがになくなってきているが、それでも私たちの説明が必要な場面は必ずある。
私たちは、「ここぞというときの説明」に全身全霊の準備をする。
(全身全霊はちょっと盛ったな)
説明してから子どもの顔色を見渡すと、1回の説明でちゃんと伝わる子もいれば、もう1回話せばいけそうという子もいれば、ハテ?みたいな顔の子もいる。
ここで気をつけたいのは、全員が分かるまで説明しなきゃ!と、説明を何度も繰り返さないこと。
説明というのは繰り返せば繰り返すほど、相手には伝わらなくなるし、相手は話を聞かなくなる。
あ、先生説明伝わらなくて焦ってるな、と子どもも気づくのだ、そりゃ冷める。
つまり、大事なことほど、1発で、短く、正しく伝わるように準備しておかないといけないのだ。
2.伝える工夫
大事だと伝えるために、どんな手段を使うか。(口頭?スライド?実験?板書?プリント?)
自分が言うのか、子どもから引き出すのか、子ども同士のやり取りの中で見いださせるのか。
引き出すのだとすれば、どんな言葉で、どんな問いをするか。
子ども同士のやり取りだとすれば、グループにどんな課題を与えるのか。時間はどのくらい取るか。グループ編成はどうするか。
こういった細かいことが、授業準備の中で一番重要で、時間をかけることだったりする。
1クラス30〜40人相手に、それも学力差は大きく、発達障害を抱える子が数人必ずいるような集団相手に、たった1人で50分授業をする。
「中学生の勉強なんて簡単じゃん、教えることの何が難しいの?」と教育関係者ではない人に聞かれたことがあった。
私たちにとって難しいのは、中学校の学習内容そのものではない。
1時間の授業で大切なことを、子どもに確実に「伝える」ことなのである。
子どもがどこで躓くかを細かく予想したり、子どもの理解を促すためにどんな活動を取り入れるか、どんな仕掛けをするか、工夫を凝らすことにあるのだ。
3.目線を落とす
しかも私たちは、自分の得意教科を専門にしているので、特に経験が浅いうちは、なかなかわからない子の躓きが理解できない。
この、「わからない子の目線に降りる」ということも、かなり経験を積まないとできないことだったりする。
わからない子の目線で、わからない子にも伝わるような言葉で表現する。
「教師は世間知らずだから…」と、教師である自分自身に自信のない、自己肯定感の低い人間がこの業界には多いし、私もその1人だが、これだけは人に胸を張って誇れる、私たちのスキルなのかもしれない。
4.旦那に気づかせてもらったこと
こんな話をやんわりと、旦那に話したらちょっと感動された。
短く伝わるように話す、というのは、分かりやすく話す上司たちに共通している!
旦那は消防士で、今年度は避難訓練担当、子どもの前で話すこともあるらしく、参考になったようだった。
確かに私たちはずっと学校で生きてきて、外の世界を知らず、世間知らずかもしれない。
でも、教師だからこそ身につくスキルもあるのかもしれないと、ちょっとだけ自信をもらえた出来事だった。
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