マネジメント 新たな価値に合わせたマネジメント
近年、人的資源管理が注目を集めています。以前(20世紀)には、「人事、労務、労使関係」と呼ばれていた分野のマネジメントです。‘以前’と記したように、人的資源管理(HRM)という考え方は、実はそれほど新しいものではありません。さらに発展した考え方として、既に戦略的人的資源管理(SHRM)があります。
とは言え、SHRMをグーグルで検索しても、論文や学術書、行政機関の記事しか挙がってこないので、一般には知られていないと考えるべきでしょう。
人的資源管理をはじめ、近年、新たなマネジメントが注目されています。先進的な企業では、CEOと同格の立場で、CMO(マーケティング)やCDO(デザイン)、CFO(ファイナンス)、CBO(ブランド)などがあり、最も新しい部類てはCXO(顧客体験)などもあります。
マネジメントと言うと、「管理」と訳されるため、どうしても「モノ」や「作業」のような、数値的に捉えやすい「管理」を思い浮かべる方も多いでしょう。こうした誤解については、以前の記事で述べました。
『マネジメント 「Management」を使い分ける』https://note.com/sbelabo/n/n824bb2c1a8ce
今回例に挙げている様々なマネジメントは、このような誤解の下に考えると、「管理できないもの」のように感じる方もおられるでしょう。しかし今、実際にこうした役職に、若く優秀な人材が求められています。
そのため今回は、このような新しいマネジメントについて考えます。
・経営資源のおさらい
新しいマネジメントを述べる前に、まずは「経営資源」についておさらいしましょう。
経営資源とは、経営戦略を実現するために必要な、競争優位を確立するための要件で、バーニーのRBV(Resource Based Vew)が有名です。企業の経営資源は、いわゆるヒト・モノ・カネに加えて、知識( 社内に蓄積された技術などを含む)や時間といったものが挙げられます。
この場合、人的資源とは、単に「生産力の単位」としての「ヒト」ではなく、企業が競争優位を確立するための「能力」を指します。
つまり経営資源とは、企業が目的を達成するために必要となる、様々な面からの要素です。そして現在の競争では、ハード面と同様かそれ以上にソフト面での経営資源が重視されています。
・新しいマネジメント
そもそもマネジメントは、20世紀に入り、工業生産の効率をいかに高めるかという視点からスタートしました。しかし1950年代、経営学の基本的な問題が顕になる頃には、単に物理的な管理では不可能という判断がなされます。
1980年代には、生産の中心がサービスへと、また現在では経験材( 経験価値)へと変化した結果、単に製品のスペックで品質を語ることができなくなりました。そのため、最初に挙げたような、ソフト面のマネジメントが重視されるようになりました。
・新しいマネジメントの事例:デザイン・マネジメント
それでは新しいマネジメントにはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは多くの方が「マネジメントできるの?」と、疑問に感じると思われる、デザイン・マネジメントを例に考えます。
一般的に「デザイン」と言うと、「製品の色や形」というイメージかと思います。勿論、そうした要素は重要で、場合によってはそのブランドを確立する要素になります。しかしデザインには、製品やサービスの役割やコンセプト、企業が目指すべき姿を体現する役割など、非常に広範な役割を果たします。
またデザインは、製品やサービスだけでなく、プロモーションや販売、その会社の社員が発する言葉や態度にも影響を与えます。
旧来のデザインは、まず「製品デザイン」があります。これに従って生産計画を立てて、量産、販売計画に展開を進めます。
販売計画に合わせて、プロモーション計画が必要になるので、この段階で広告のデザインが行われます。
これまでの企業は、かなり乱暴な言い方をすれば、サプライチェーンや企業内の業務の川上から川下に合わせて、それぞれが必要とするデザインが行われていました。
しかしこの場合、例えば営業部が考える年間計画を、生産計画の変更によって変えなければなりません。変更分は、例えば販促物などが無駄になります。こうしたことは企業内のバリューチェーン全体で発生し、大きな損失(コスト的、労働的ムダ)を生み出します。そしてこのような‘ムダ’が、部署間の軋轢を生み出します。
新しいマネジメント、例えばデザインマネジメントでは、CEOが示す方針の下に、製品、サービス、プロモーション、財務、必要な人材計画などといったことを統一的に考えて実現します。これは結果的に、その企業の「文化」や「ルール(理念に準ずる)」までもきていすることになり、新たな価値創造のマイルストーンになります。
新しいマネジメントについて、デザインマネジメントを例に説明しましたが、こうしたマネジメントを統合していくこと、各C×Oが、CEOの下、統一した企業の指針を示すことで、本当の意味で、社会の要望に応えることがてきる企業が生まれます。
だからこそ、今新しいマネジメントが求められています。