マネジメントサイクルとは PDCAは万能ではない
今回はマネジメント・サイクルについて考えたいと思います。
日本人が大好きな、と言うとかなり含みを持って聞こえると思いますが、特に日本ではマネジメント・サイクルと言えば[PDCA]を指すことがほとんどです。
しかしマネジメント・サイクルには様々なものがあることをご存知でしょうか。
僕のnoteでは毎度のことですが、辞書では以下のように説明されています。
・マネジメント・サイクル
経営とは、計画・組織・指令・調整・統制の五つの機能の循環したものであるとされており、この循環過程をいう。統制の結果、判明した諸事実が再び計画に反映され、五つの過程が繰り返される。
(大辞泉)
またファヨールが述べた管理過程論では、経営管理を「計画」「組織」「指揮」「調整」「統制」するプロセスであると定義しています。
PDCAとはplan-do-check-act(action)
のサイクルで品質の改善を行う手法です。第2次対戦後、日本品質管理に貢献したデミング博士によるもので、デミンクホイールとも呼ばれます。
ところがデミング博士本人の談によれば、日本で独自に発達したものとされ、後にPDSAが適切であるとしています。
それではなぜこのようなことが起こったのでしょうか。
戦後日本は、戦後復興と産業の発展のため、様々なことをアメリカから学び、また多くの調査団を派遣しました。アメリカとしても、いつまでも敗戦国を助ける訳にいきませんし、戦後の冷戦体制を考えれば、日本の復興・発展は不可欠だったため、人材を派遣しました。
よだんですが、この時多くの言葉が‘輸入’されました。例えば「物流」という言葉は‘fisical distribution’を「物的流通:物流」と訳したものです。
明治維新以降、富国強兵か軍国化へと突き進んだ日本は、戦後に資本主義化します。その中で民間による工業生産の発展が不可欠でした。つまり大量生産の品質管理が不可欠だったのです。
日本人に解りやすく説明された品質管理マネジメント(PDCA)は日本人の特性と相まって、効果を発揮し、いつの間にかマネジメント全般の手法と考えられるようになりました。
しかし元来品質管理・改善の手法であるPDCAはCの段階で評価を行うために、一定の時間を必要とします。そのため1980年代に日本型生産管理の代表であるカンバン方式が評価され(ジャパン・アズ・ナンバーワンが代表的)PDCAを早く回すという、ちょっと意味不明な表現が現れました。
マーケティング・マネジメントサイクル
これはフィリップ・コトラーの「マーケティング原理」ても記されているマーケティング・マネジメントです。本書ではマーケティング制御と説明されており、「何を達成したいか」→「何が起きているのか」→「なぜそれが起きているのか」→「どのように対処すべきか」というルーチンです。
OODAループ
1990年代に入ると、社会環境の急速な変化や、多様性、不確実性が顕著となり「VUCAの時代」と呼ばれるようになりました。こうした中でOODAループが提唱されました。これ米空軍から提唱された意思決定プロセスです。
ただしこのOODAループについても、例えばインターネットなどでは、かなり間違った表記が目立ちます。僕の嫌いな言葉の一つですが、「PDCAはオワコン」などという内容は、完全に間違った理解です。何故なら先にも述べた通り、PDCAは品質管理や品質改善スキームだからです。まあそもそもロジックはコンテンツではないので(笑)
面白いことにこうした記事は、僕の目には、PDCAもOODAも同じように間違えているように感じます。
いずれにせよ、これらのループは、元来の目的に即した手法を選択する必要があります。
どれかが最良とか万能といつものではありませんのでご留意を。