マーケティングのインプットとアウトプット2 より高い視点からインプットをおこなう
マーケティングのテキストを作成するため、定期的に高校のマーケティングのテキストや販売士などのテキストを確認するようにしています。
これらは教材としてとてもよくできていますし、時流などもよく捉えています。
普段は企業のお手伝いをしていますが、実はそこで語る内容が、かなり体系的かつ網羅的に書かれているので、実は中小企業の経営者の方が読んでも、十分に役立ちます。こういう言い方をすると「子供扱いするな」とお叱りを受けそうですが、へたなビジネス書を読むより、よっぽど役に立つのではないでしょうか。
これは余談ですが、僕は時々Eテレのホームページから高校講座を観ます。番組が公開されているだけでなく、資料まであります。講義での教え方だけでなく自分自身の勉強にもなります。
経営学部で教えていた時、「大企業の社長になるわけじゃないから役に立たない」と言った学生さんがいました。大学は学問研究と教育の場ですから、「こうしたら儲かる」なんて話はしません。何度も書いていますが、そんな方法はありませんし、話す気もありません。そういう質問をする方は、高校の教科書を読んだ方がよっぽど役立つでしょう。
因みにヨーロッパでは、大学進学年齢がかなり高いです。一度社会に出て、必要だと思う学問を学び、その後ビジネススクールで実務を学ぶという例も少なくありません。
特に高校のテキストは、高校生が社会に出ですぐに役立つようにできていますから、かなり実務的な側面もあります。
そこで感じたのが、マーケティングのインプットとアウトプットです。
先に挙げた学生さんの例ではありませんが、高校を卒業して、経営層に採用されることはまずないでしょう。例えば小売業に就職したのであれば、当然最前線の売り場が担当になるのではないでしょうか。
この時、「レジ係りだからマーケティングは必要ない」なんてことは決してありません。取り扱う商品の知識だけでなく、そのお店のお客さんの特徴や混雑時間など、様々な情報を判断することで効率的に業務を行うことができますし、延いては顧客満足や店舗の評価に繋がります。その人自信の評価にも繋がるでしょう。
これはレジ係りのマーケティングです。
品出しや商品説明などを担当するようになれば、陳列方法やお客さんの希望を理解し、適切な購入補助が必要になります。
これは販売係りのマーケティングです。
売り場責任者になれば売り場全体を考えたマーケティングが、店長になれば店全体のマーケティングが必要になります。エリアマネージャーになればエリア全体のマーケティングが必要ですし、経営層であれば、企業全体の方向性を示すためのマーケティングが必要になります。
このように記すと、それぞれの人が個々のマーケティングを行っているように聞こえるかもしれませんが、それだけではありません。
その企業のマーケティングコンセプトを全ての人が理解していなければ、製品やサービスの内容や質に一貫性が無くなってしまいます。ですからそれぞれの立場や責任に即したマーケティング・マネジメントが必要になります。
ところが面白いことに、一定の業界では違った意味でマーケティングという言葉を使っています。例えば広告業界などてはプロモーションをマーケティングと呼びます。これはここでは記しませんが、一定の意図があるか、もしくは言葉をしっかり理解せずに使っているだけです。
またそれぞれの職種や業務毎の範囲によってマーケティングという言葉を使います。この時自分こそがマーケティングの専門家で、他の人は解っていないといった意見が聞かれることもあります。
残念ながら多くの人は足元を見ることはできますが、自分より高い所は見ることができません。ですから自分の及ばない範囲のものを違うと言ってしまうのです。
実はこれには僕もかなり苦しみました。
例えば僕はアメリカの航空産業の研究をしていました。ユナイテッド航空やUPSの経営戦略やマーケティング戦略といった研究をしていたのですが、おそらく多くの人のマーケティングという視点では、理解に苦しむのではないでしょうか。
そのため往々にして、「マーケティング」という言葉の意味や範囲が異なり、話が噛み合わないのです。こうした時、こちらから(視点が高い人が)会話に合わせるか、リーダーを努めなければならないのですが、僕の場合、年長者や経営者の方と仕事をすることの方が多いので、指摘することが難しいのです。
しかも僕は、世の中のあ経営者は仕事や会社の規模に応じて、僕が言う「マーケティング」を理解していると思っていたので、しばしば仕事がうまくいきませんでした。またここで話を強引に押し進めると、経営者の方の中には、「学者の机上の空論」とか「お勉強で仕事はできない」と仰る方もおられます。
これはどんなことにも言えることですが、人は自分で調べたものは正しいと判断します。また目の前にあるものが一番正しいと考えがちです。ですから自分の理解の範囲を越えるものは間違っていると考えるのです。
人が100人いれば100通りのマーケティングがあります。しかし例え自分の目の前の仕事に直接関係がなくても、より高い視点のインプットを理解することで、より適切なマーケティングができると言えます。