弱みは強みに変わるのか1 弱みと違いを区別する

ビジネスアイデアの文書で、よく「弱みを強みに変える」というものを目にします。これについて、僕自信はかなり懐疑的に思っています。
今回は世の中で言われている「弱みを強みに変える」ということについて考えてみたいと思います。

自己肯定の話
「弱みを強みに」という話でよく例に挙げられるのが、自己肯定の話です。自分の弱点だと思っている事を、見方を変えるという内容です。
これは人の考え方や捉え方、また姿勢の話です。ネガティブな気持ちを切り替えるというもので、それぞれ一人一人の問題だと言えるでしょう。

松下幸之助氏の話
松下幸之助氏は「なぜ成功できたか」という質問を受けると、「凡人だから」と答えています。学校へも行っておらず、何もわからないから、衆知を集めて尋ねたと語っています。
これを「弱みを強みに変えた」と記している文章を見かけますが、僕は違うように思います。松下氏は自分の弱みを強みに変えたのではなく、自分の弱みを自覚したうえで、謙虚に努力したのだと思います。もしこの時、松下氏が「お前は俺が集めた人材だ、教えろ」なんて態度だったら、その後の発展はなかったのではないでしょうか。

ビジネスの成功例 の話
ビジネスの成功例にも、「弱みを強みに変えた」という紹介が見られます。これについても、僕はそうは思いません。弱みではなく、その産業の一般的な常識と違う点を、消費者にとってどのような価値があるのか、視点を変えたのだと思います。僕はこれを差別化可能な相違点と呼んでいます。
端的に言えば、その企業に適したターゲットと市場を選択したに過ぎません。(これについてはマーケティングでとりあげます。)

特にビジネスモデルの事例などを見ると、とても安易に「弱みを強みに変える」ことで、成功するかのように書かれているものが目立ちます。こうした文章を目にすると、うんざりしてしまうのですが、、、

例を挙げましょう。
例えば背の低いバスケットボール選手が、ポジションを変えて活躍したという例があります。この事例には大きな問題があります。
この例を見て「小さくても努力すれば活躍できる場がある」と考えれば良いのですが、なぜか「自分のポジションが悪い」と考える人もいるようです。後者ほど安易に「弱みを強みに変える」ことを選び、努力を怠ります。
またこの事例には、決定的な問題があります。
そもそもこの選手は、かなりの運動能力や技術が備わっていたはずです。そうでなければ、ポジションを変えただけでは活躍できません。加えてなぜポジションが変わったのでしょうか。僕は、例えば監督やコーチが変わったのではないかと推測します。何故なら、ポジションが変わっただけで活躍できる選手を、優秀な監督が見逃すはずがないと考えるからです。
つまりこの選手は、「弱みを強みに変えた」のではなく、適切な場を得ただけなのではないでしょうか。

いずれにせよ、単に「弱みを強みに変える」ということは簡単にはいきません。まずは自分の弱みを客観的に観て、どのような特徴があるのかを考える必要があるのではないでしょうか。

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