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地方で子育てしながら出版社勤務!編集者を続ける秘訣は「著者への愛」
SBクリエイティブ・新書チームの「お母さん」です
はじめまして。
SBクリエイティブ・学芸書籍編集部の美野と申します。
「SB新書」の公式noteは、チーム所属の編集者が、毎月リレー形式で執筆するというもの。年次の順で2回目の執筆を担うこととなりました。
新書チームでは一番の「ネエサン」。というより、もはや親子ほど年の離れた若い編集者たちから強烈な刺激を受ける日々で、「私、チームのお母さんって言ってもいいんじゃない?」と思っています。「お母さんらしいことをしているのか」と言えば、むしろ真逆なのですが。単純に年齢で言えば、「お母さんほどの年であります」ということで、この場では「新書チームのお母さん」として、どうぞよろしくお願い申し上げます。
簡単に自己紹介を。
今は廃業してしまった「海竜社」という、編集者が3~4人ほどしかいない小さな出版社に14年ほど勤めておりました。その後、ご縁をいただき2015年にSBクリエイティブに移り、いまに至ります。
前職の「海竜社」という出版社(について語りだすと大変長くなってしまうので、だいぶ端折ります)は、宇野千代先生や宮尾登美子先生、瀬戸内寂聴先生、田辺聖子先生、佐藤愛子先生、曽野綾子先生……と、名だたる文芸作家による「女性の人生書」を40年以上つくり続けた老舗の出版社でした。そこで学んだことや経験したことは本当に多くて、とてもここでは書ききれないので、また機会があれば……。
そんなおばちゃん編集者の私ですが、訳あって、2018年から岡山県で地方勤務をしております。
岡山でリモートワークしています
「え? 編集者って地方でお仕事できるの?」と思われる方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
著者やライター、デザイナーやイラストレーターが地方で仕事をするのは、それほど珍しくありませんが、「編集者が地方で大丈夫なの?」と思われたあなたへ。どうやら大丈夫なようです。なんとか7年(うち産休1年含む)続けてこられました。
コロナ以降、都内でのリモートワークを認める版元も増えましたが、私のように、フリーという立場ではなく、会社に籍を置きながら地方勤務を許されているケースは稀だと思います。しかも、コロナ以前の2018年から。
これだけでも、SBクリエイティブという出版社の「時代を読む力」と「懐の深さ」を感じるではありませんか。そんな器のデカい会社のもと、年下だけどとても頼りになる小倉副編集長(同note 1回目ご参照)をはじめ、新書チームの面々、営業部の皆さん、著者さん、デザイナーさん、印刷屋さんと、関係各所のご協力をいただきながら、地方勤務を続けております。本当に有難い限りです。
地方勤務は「ストーカー」と「ハイエナ」の気概で
さて、地方勤務での一番の困りごとと言えば、「著者とのコミュニケーション」。これに尽きます。
今のように、原稿がメール添付で送られてくるわけでもなく、データ入稿やPDFでのゲラ(本の体裁に組まれた校正紙)のやり取りが主流ではなかった頃。手書きの玉稿を、ホテルのラウンジや先生のご自宅へ直接頂きにあがるような時代を知る最後の世代としては、「著者さんには直接お会いしてナンボでしょう?」という古い価値観があります。
いや、それより何より、私は会いたいのです。著者に。なぜなら「アナタノコトガ好キダカラー」(byチャン・ドンゴン)。はっ、ごめんなさい。こんなところに「新書チームのお母さん」が出てしまう。若い人はご存じないかもしれませんね。あったのですよ、かつて。韓流スターのチャン・ドンゴンがカタコトの日本語で「アナタノコトガトゥキダカラー」と叫ぶCMが。
脱線、お許しください。そうなんです。「私は著者に会いたい」のです。けれども、地方勤務で、そのうえ幼い子を育てながらの7年間。0歳から保育園に預けているとはいえ、びしょ濡れの布おむつ(布おむつ推奨の園だった)は毎日20枚くらい出るし、幼稚園に入ったら入ったでお弁当を作らねばならぬ日々。とても幼子を置いて、何泊も東京出張はできません。
でも「著者には会いたい」。そこで私は、ストーカーのごとく、担当する著者の講演日程をチェックするようになりました。「私が日帰りできる近県でのご講演ならば、先生方にお会いできる!」と。
大阪に、広島に、四国に、岡山に、あの先生がいらっしゃるとわかれば、即メール。「お会いしたいので、ご講演の前後でお時間をください。ついでにご講演内容も録音させてください(もちろん主催者のご許可もいただきます)」と。本当に図々しい。まるでハイエナ。
でも実際に、そんな講演会場の控え室で決まった企画は、いくつもあります。さらには、ハイエナ精神で得た講演録をもとに誕生した書籍も。
担当書籍紹介:『なんのために学ぶのか』 池上 彰 著
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若き優秀な面々による「SB新書」のnoteを乞うご期待!
そんな私のもとへ、ある年、大好きな池上彰さんから、こんな年賀状が届きました。
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「仕事のバイタリティに圧倒されます」と。
違うのです。白状します。私は、それほど仕事に貪欲なわけでは決してないのです。
けれども、先生方に会いたいのです。なぜなら「あなたのことが好きだから」。
私の仕事へのモチベーションは「先生が好き」。これだけ。
「この先生のあんな面、こんな面を知ってほしい」、「先生のこの斬新な考えを知ってほしい」、「この魅力を伝えたい」……。これは、仕事を始めた頃(始める前)から、ずっと変わりません。
ただ、このモチベーションは、ときに市場を見誤り、独りよがりな本を作ってしまう危険を大いにはらんでいます。
そんな私の暴走に歯止めをかけてくれるのが、年下だけど頼りになる小倉副編集長と、親子ほど年の離れた新書チームの若き面々。「新書チームのお母さん」だと思っているのに、独りよがりな企画を提出しては、若い人たちを困惑させ、冷静なダメ出しを喰らい、より良い企画のヒントをもらう、地方勤務の日々です。
来月以降も、そんな若き優秀な面々による「SB新書」のnoteを、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年2月6日 学芸書籍編集部・美野晴代