映画感想文~憧れを超えた侍たち~
振り返るといろいろあった
WBCで日本が優勝してから早2ヶ月ちょっと。もはやペナントレースが交流戦真っただ中なので、余韻はいったん消えて、別の空気が漂っている野球界。
とは言え、大谷翔平と吉田正尚のニュースは見ない日がないし、スポーツニュースはヌートバーのことを報じるようになった。
日本球界では佐々木朗希は相変わらずえげつないストレートを投げているし、岡本和真は永遠のアーチを高らかに打ち続けている。そういえばこの前源田壮亮が一軍に戻ってきた。話題の中心にいる選手はWBC戦士たちが多い。
この映画、話は栗山監督の就任直後から始まる。
ネタバレは極力避けるが、公開期間が短いこともあるため、もし見てみようという方は参考にいただければ幸いだ。
ポイント1 すごいぞJ SPORTS
さて、まず一つ目のポイントは制作がJ SPORTSであること。
J:COMやスカパー!などでお世話になっている方も多いと思うが、長らく年代別の侍ジャパン関連ドキュメンタリー作品を制作している。WBC公式映像で放送を続けていたのもJ SPORTSだ。
なので本当に野球がわかっている作り方をしている。
とっさのカメラワークがすごい。音の出し入れ、BGMの使い方、臨場感が半端じゃなかった。あえて泣かそうとか、そういった演出がないのもまたいい。(自然に泣けました)
また、会議やベンチ裏の映像がたくさんあったこと。ここまでの取材ができるのは本当にすごい事。特に権利関係がいろいろとややこしそうな国際試合、そして各球団の選手たちの様子をつぶさに試合前から試合後まで記録に残せているのがただただすごい。
ポイント2 栗山監督
優勝監督の栗山監督。この映画を通してどうして栗山監督が長年北海道日本ハムファイターズの監督を続けられたのかがよくわかった気がした。
多分だけれども、誰よりも悩んで頭をフル回転させていたはず。
けれどもよくありがちなワンマンではなく、しっかり自分の意思をコーチに伝えたり、意見を聞いたり、時には選手と同じ目線に立つ。なかなかできるものではない。
少しでもいい点があれば選手に直接伝え、気になったことは自分で聞いたり調べる。野球の監督のイメージとは違った印象を受けたが、令和の上司部下の関係でいうとこんな人がいたら部下はやる気出るだろうな、と思った。
私は序盤の会議の場面、栗山監督がスタッフに向けて言った一言に感銘を受けました。そこまで考えているんだと。一昔前の野球界なら考えられなかったなと。
多分今年「理想の上司」としてたびたび名前が上がるでしょう。
そんな人に私もなりたい。
ポイント3 重圧
国を背負うのがどんなものなのか、ということが端々にわかるシーンが満載。
村上が、源田が、佐々木がペナントレースで見せたことない表情を見せる。
その言葉の一つが譫言のようなものになっていたり、興奮から口調が先走っていたりしているものなど、様々なものがあった。
試合中のベンチ裏のやり取りは見ているこちらからはわからない。それをいいことに好き勝手言う人もいると思う。
けど、極限の状況下で、人ってこうなるのか、ということもよくわかる。そんなシーンがたくさん盛り込まれている。
よく切り取られたあのシーンの裏にこんなことがあったのか、と再確認ができるので、ぜひ。
総評
ドキュメンタリーとして、スポーツものの映画として最高だった。
というのも、この映画結末はわかっている。我々の知らない物語は、グラウンド以外のところの部分だ。そこを占める割合はもちろん多いのだが、それが試合のあのシーンにどう結びついていくのか。という答えが少し見える気がするのだ。
最高のチームはどんなチームなのか。掲げた理想をどう叶えていくのか。そんなプロジェクトが成就する過程を追える。素晴らしかった。
私も野球を伝えるメディアの末席にいる身ではあるが、こんな物語を紡げるようにしたい。そう思った映画だった。
結末がわかっているのに泣ける、笑える。そんな映画だった。
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