過去の私の俳句を斬る④
昔の自分と、俳句を通じて対峙する。
朧夜に足音まるく長く伸び 新治(平成27年)
初めて句会に出した4句のうちの一句です。季語は、朧夜。
春の夜は満月でもぼんやりとしていて、影も足音も、やわらかく感じられる、という句意でしょう。「音が丸い」という把握は、そこそこ詩的ではあります。
ただ、句の中に切れがなく、下五も連用形で終わっていて、中途半端な感じがします。べたーっとしているのが、句の表す光景とも相まって持ち味なのかもしれませんが、どこかすっきりしないような、気持ち悪さがあるような気もします。
足音も影も円かに灯朧 新治(令和3年)
灯朧(ひおぼろ)と置いたのは、具体的なモノを登場させたかったためです。ちなみに、「ひ、おぼろ」と読点を入れて読むため、下五でも問題はありません。
「足音や影がまるい」という軽い謎を作っておいて、その答えは「灯りが朧だから」と種明かしをする、という作りになっています。
明確な切れ字は入っていませんが、意味の上では円かに、で切れていて、また、下五が体言止めで終わっていますので、やや引き締まった表現になっているのではないかと思います。句の柔らかさは、少し失われてしまったかもしれませんが・・・