過去の私の俳句を斬る③
昔の自分と、俳句を通じて対峙する。
書をめくりあたたかな風おこりけり 新治(平成27年)
初めて句会に出した4句のうちの一句です。季語は、あたたか。
本のページをめくると、軽やかな風が生じて、あたたかく感じられたという句ですが、動詞2つ入って、ちょっと煩いようです。
また、「めくる」は他動詞なので、書をめくったのは私自身ですが、「おこる」は自動詞なので、風が勝手に生まれたという意味になります。動詞の主語がそれぞれ異なるので、何となく捻じれているような印象も受けます。(「おこしけり」なら確実に主語は私)
季語の あたたか は季節の空気感や体感を表すもので、自ら作り出すものではない、という指摘もあてはまるかもしれません。
あたたかやページめくれば小さき風 新治(令和3年)
こんな感じでしょうか。
まずあたたかな空気だけを見せておいて、あとから私自身(の指先)と本と風が登場する、という順序にしました。背景があってモノが出てくる方が、この句の場合は良いような気がします。
「ページ」と書く代わりに、例えば、「図鑑」とか「辞典」とか「手帳」とか、具体的なモノを持ってくることもできそうですね。この中だと、「手帳」が春らしくていいかもしれません。