俳句を推敲するときのアタマの中
今日は6月30日、1年の折り返しですね。
夏越の祓といって、茅の輪をくぐったり、人形(ひとがた)を納めたりして、半年分の穢れを落とし、残り半年を元気に生きるための区切りの日になります。
当然、季語になっているので、一句を得たいと思ってしばらく悩んだのですが、良いところまではきても、なかなか成案になりません。
そこでふと思ったのですが、俳句のアイデア→推敲の繰り返し→成案までの一連のアタマの中を見えるようにしたら、俳句作りの参考になるのではないでしょうか。
どこまで整理がつくか、役に立つか立たないか分かりませんが、ちょっとやってみたいと思います。
アイデアの拾い上げ
特段、珍しいものではありませんが、こんな光景を目にしました。
「神社に、夏越の祓の、茅の輪が設置されている。御幣が日の光を返しながら風に揺れている。」
とりあえず、ここから俳句になりそうなところをピックアップして、
「神社に、夏越の祓の、茅の輪が設置されている。御幣が日の光を返しながら風に揺れている。」
と、幣(ぬさ)に着目することにしてみます。
とりあえず俳句っぽく整形
アイデアが拾えたら、とりあえず俳句の姿に整形していきます。
定石としては、
「季語を含まない12音」+「季語を含む5音」
あるいは
「季語を含む5音」+「季語を含まない12音」
の形に入れ込めば、俳句っぽくはなります。
幣は季語ではないので、中心になる季語としては、「夏越の祓」を置くことになりますが、これだと「なごしのはらえ」と7音も使ってしまうので、他の情報が入れづらい。
傍題の「夏祓(なつはらえ)」か、「茅の輪(ちのわ)」が使いやすそうです。
これらを踏まえて・・・
(初案)幣は日の光を返し夏祓
これはこれでマズイところはないかもしれませんが、すこしのっぺりとしていて芯がない感じもします。
問題点は2つあります。
① 「切れ」が明確でない
この句は、「返し」で切れて、「夏祓」の体言止めもあるので、いわゆる「切れのない」句ではないのですが、「返し」は連用形ですので、少し中途半端に言い終わっている感じがします。
② 意味が重複している
「日」と「光」で意味が少し重なっています。「日を返す」で十分に光は感じられると思います。
これらの問題点を踏まえて、いろいろとやりくりをしていきます。
あれこれと推敲
問題点を踏まえて、いろいろと言葉を入れ替えたり語順を整えたりしていきます。「光」を削って「切れ」を作って・・・
(2案)幣は日を返してゐたり夏祓
これだとますます平凡。どんな風に日を返しているか描写してみる?
(3案)幣は日をきらりと返す夏祓
ちょっと合わないか。しかも「返す」は終止形と連体形が同じ形だから切れも弱い・・・
語順を変えてみる?
(4案)夏祓幣は日をひたすら返し
「夏祓」「幣」と漢字が続いて暑苦しい。やっぱり季語は下五にしよう。
日を返すを諦めてみる?
(5案)日に褪せてなほ幣白し夏祓
声に出して読んでみると、調べが悪い(なおぬさしろし が滑らかに読めない)
(6案)幣は日に褪せても白し夏祓
これは結構いいかも。
しかし、実際に目にしたのは、真新しい真っ白な幣・・・いくら良い句でも嘘は・・・やっぱり「日を返す」に戻そう。
と、こんな感じで、行ったり来たりしながら、言葉遊びをしています。
助詞を入れ替えたり、語順を変えたり、類語辞典にあたって別の言葉を調べてみたり。
そして一応の完成形へ
言葉をさんざん当てはめて、
(成案)幣は日を確と返しぬ夏祓
という句を得ました。意味の重なりはなく、切れもしっかりあるので、一応の完成形としました。
これが正解かどうかは、まだ、よく分かりませんが、実際に目にした光景を、読み手にも伝わるように描写することは、できたのではないかと思っています。