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テレワークするなら「ヘッドセットマイク」の価値を理解しよう

筆者はテレビ会議システム及びWEB会議システムの販売促進担当をしてました。冒頭から宣伝で恐縮ですが、職を退くにあたりそのときの知見をまとめたサイトを2年ほど前に公開したところ、今となってなかなか好評です。

今の情勢によってテレワークという言葉が流行り、とにもかくにもそれにかこつけた情報が溢れています。
テレワーク(リモートワーク)といっても、会社の勤務規定やセキュリティ規則などソフト面からシステムなどハード面、更には利用する側の気の持ちよう(「ハート面」とでも言いましょうか)まで、テレワークを成功裏に導くための要素というのはあまりに多岐に渡るのです。感染病が流行ったからとか、オリンピックの間だけとか、そんな急ごしらえでできる仕業では本来ないのです。

だから、テレビ会議の元専門家として迷えるテレワーカーの皆様にお役立てできるとすれば、そのほとんどが突き当たる問題に対して即効性がありピンポイントな情報を簡潔に提供することだと考えます。この記事はその一つです。

「音はシステムでの扱いが難しい」

ところで皆さんは、日頃から音響システムに対して非常にフレンドリーに接しています。電話にはじまり、イヤフォン、ヘッドフォン、スピーカーを使って音楽をたしなみます。ライブハウスでプロの演奏も楽しむ。更にはスピーチやカラオケではマイクを使って自分の声を拡声し、趣味で楽器を弾き録音さえします。

だからなのか、多くの方は、WEB会議・テレビ会議システムで相手と声をやり取りすることに対して、なんら難しいと考えていないのです。しかしどうでしょう。遠隔会議システムで円滑に相手と声をやりとりすることは実は技術的に非常に繊細で、基礎知識なしに立ち向かえば落とし穴にはまりまくるのです。

そのことを理解いただいた上で、私が伝えたいのは、本来は実に専門的な分野である音響システムにおけるワードの正しい意味と、リモート会議システムで発生しがちな問題に対する対処法です。毎回1テーマで書きたいと思います。今回は次の内容です。

「有線ヘッドセットマイク」が絶対に必要な理由

自宅から一人で会議システムを使うときには、いくら耳が窮屈であってもスピーカーからは音を出さずに、ヘッドセットマイクを使いましょう。それが一番失敗しない方法です。

そもそも「ヘッドセットマイク」という用語自体耳慣れないかもしれませんが、ヘッドフォンと、自分の口元で声を拾うマイクが一体となった機器で、テレフォンオペレーターが使っているものをイメージしてください。

ならば、iPhoneについている「EarPods」のようなイヤフォンタイプで良いのか?というと、聞くだけなら良いですが話す場合は心もとないです。なぜなら、EarPodsならリモコン部分にマイクがついているものの、リードとリードの間にあるので位置や向きが不安定で、服に擦れたり周囲の雑音を拾いやすいからです。うっかりミュートし忘れてコーヒーに手を伸ばしたときに会議参加者全員にガサガサと音を鳴らしたりしたらけっこう恥ずかしいです。

説明を続ける上で、用語の説明が必要です。マイクを使う上で意識しないといけないのがマイクの「集音範囲」です。一般的にマイクが集音できる空間の広さを言いまして、マイクの「指向性」と、集音可能距離で決まります。

「指向性」というのが専門用語ですが、つまりどの向きからの音をよく拾うように設計されているのかがそれです。たとえばマイクの商品には使用者にわかりやすく目安として「360°/半径3.0m」「120°/半径1.5m」などと書かれることがあります。
本当はもっと詳細に、ピークに対して何デシベル減衰するのはどこまでなどと仕様があるはずで、きっちりとした数値ではなくあくまで目安であることは注意が必要です。1.5mと書いてあっても3メートル先の人の雑談を拾ったりもします

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つまり、EarPodsで言えば、使ってたらリードがねじれたりしてマイクの穴の向きが変わるものの、耳や口からの距離はだいたい一定の場所にあることからすると、範囲は30センチ程度で、口がある側に裏表関係なく集音できるようにしている、という設計が予測されるわけです。ですがそんな理想的にはいかないので、結局はマイクに口を近づけて話したりする配慮が必要になります。想像するに長時間はしんどい姿勢です。

一方で、マイク位置が固定されたヘッドセットであれば、声だけを伝える上で理想的な範囲のみが集音されるように設計されているので、余計な環境音は減衰させた上で、声は明瞭に相手に伝わるというわけです。

その理由で、数千円程度の安いものであっても、ヘッドセットマイクは数万円以上のスピーカーフォンよりずっと高音質に聞こえます。
安くて問題の少ないロジクールの製品を紹介します。一時期の需要拡大で価格が倍になりましたが、ようやく供給が追いついて以前程度の価格になってきました。下の機種は私が仕事で何個も買いましたが一個も不具合がなかったものです。

とはいえ、複数人どうしの会議であれば、ヘッドセットは使わずにマイクスピーカーを使うことになるでしょう。しかしそれでも有線ヘッドセットマイクが「絶対に必要」とまで言うのは、大きな理由があります。
音響的に複雑さをもたらす空間の要因が排除されているヘッドセットマイクを使ってもうまくいかなければ、設定がおかしいか、ネットワーク環境がおかしいか、そもそも製品のバグ、というように要因が大きく絞られます。つまり不具合発生時の切り分けに必須となるからです。

なお、自宅から一人での会議参加であっても、コードが邪魔だからBluetooth型のワイヤレスタイプやピンマイクにしたいといったことは当然あるでしょう。それらは確かに音響空間の影響を受けにくいという意味では共通しています。しかしBluetooth等ワイヤレスがゆえのノイズの懸念が残り、余計な要因を増やしてしいます。「有線」ヘッドセットマイクが必要、とあえてつけたのはそのためです。

実際に起きうる状況として、相手からこんな指摘をされたとします。

「なんか声が小さい」「エコーが聞こえる」「雑音が入る」「こもって聞こえる」

こんなときには、パソコンの設定が悪いのか?会議システムの設定か?マイクの位置が悪いのか?マイク製品自体の設定か?複数のマイクがONになっているとか?いや、一時的にネットワークが輻輳しているのか?Wi-Fiルーターの調子が悪い?・・・などなど、チェック要素が山ほどあるわけです。

いやいや、一回テストしときゃ、そんなに多くの切り分けは発生しないでしょう。そう思いますよね。
しかしパソコンなんて再起動するたびに設定が戻ることもあるし、USBを挿す順番でデバイスの認識が想定外になることもあります。ひどいケースではWindowsUpdateしたら設定が戻るとか、デバイスドライバーが自動更新されて変わったなんてこともしょっちゅうです。WEB会議製品もそうです。SaaSで製品バージョンが自動アップデートされたらデフォルト設定が変わったなんてこともあります。

それに加えて、自宅からのテレワークということを考えれば、部屋を変えたら音環境は変わるし、ものが動いただけで変わります。扇風機の風は言語道断、エアコンの風でもマイクに当たったら相手にずっと騒音を贈り続けます。自宅ネットワークも帯域保証契約しているリッチな人など皆無でしょうし、ワイヤレスデバイスなら他の電波との干渉もある時間帯だけ発生しているかもしれません。

そんなときに、多くの要素を排除したシンプルな状況を作る必要があり、ヘッドセットマイクが大活躍します。これでもダメなら、パソコンまたは会議ソフトの設定か、またはネットワークの問題くらいに大きく絞られてきます。

普段使わないとしても、安い製品で良いので有線のヘッドセットマイクは必ず常備したいです。会社から配布されなかったら買ってもらいましょう。

まとめと予告

今回は最もシンプルな「ヘッドセットマイク」の話でした。自宅からのリモートワークでPC内臓のマイク・スピーカーを使っているとすれば、すぐにでもヘッドセットマイクを買いましょう。

しかし、ヘッドセットマイクはあくまで一人用。今のパンデミックな状況では、出社は認められたものの出張が減って拠点間会議はWEB会議になったとか、なるべく出社せずコワーキングスペースで数人が集まってリモート会議するとかいうケースも増えているようです。
また、無事開催されたとして、東京オリンピック期間の都内の混雑を回避するために、Web会議の運用頻度を高める用意しているところもあるでしょう。

そのようなわけで、一人参加に限らず、大会議室や複数人参加パターンの「マイクスピーカー(スピーカーフォン)」について次回は投稿しようと思います。

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