今日ご紹介するのは、"GEMBA" (ゲンバ)という単語。
もともと日本語の「現場」(げんば)という名詞が、ビジネス英語として使用されている ものである。
日本語がそのまま英語として使われている単語には、"SUSI"(スシ)とか、"RAMEN"(ラーメン)、"SAMURAI"(侍)など、日本文化に関するものが多い。
この"GEMBA"も、日本の製造業における「現場主義」からきているもので、日本文化のひとつといってもよさそうだ。
”GEMBA”という単語をGoogleにて検索すると、たくさんのページがヒットした。そのうち、英語版Wikipediaの説明がわかりやすかった。
ここから、"GEMBA" の定義 の部分を抜粋してみよう。
"Genba (現場, also romanized as gemba) is a Japanese term meaning "the actual place". Japanese detectives call the crime scene genba, and Japanese TV reporters may refer to themselves as reporting from genba. In business, genba refers to the place where value is created; in manufacturing the genba is the factory floor. It can be any "site" such as a construction site, sales floor or where the service provider interacts directly with the customer." (サザヱ訳:現場とは、「実際の場所」という意味の日本語である。日本の捜査機関は犯罪の発生場所を現場といい、日本のテレビレポーターは、自分たちを、現場からレポートすると言う。ビジネスにおいて現場とは、価値が創造される場所を意味し、製造においては現場とは工場を指す。建設現場や、販売フロア、サービス提供者が顧客と直接交流する場所など、いろいろな場所に使われる。)
そして、同じページ内に、"Gemba Walk" という用語の解説もあった。”Walk” は「ウォーク」「歩く」という意味の単語だから、「現場ウォーク」とは、現場に行く、現場を視察するというという意味だろう。
Gemba walks denote the action of going to see the actual process, understand the work, ask questions, and learn. It is also known as one fundamental part of Lean management philosophy. Taiichi Ohno, an executive at Toyota, led the development of the concept of the Gemba Walk. The Gemba Walk is an opportunity for staff to stand back from their day-to-day tasks to walk the floor of their workplace to identify wasteful activities. The objective of Gemba Walk is to understand the value stream and its problems rather than review results or make superficial comments. (サザヱ訳:現場ウォークとは、実際のプロセスを見に行き、仕事を理解し、質問をし、学ぶという行動を指す。リーンマネジメント主義の基本的な要素のひとつとしても知られる。 トヨタの幹部であった大野耐一が、「現場ウォーク」の概念を開発した。現場ウォークとは、スタッフが日々の業務から一歩離れ、作業場に出向き、無駄な活動を特定する。現場ウォークの目的は、価値の流れを把握するためであり、結果をレビューしたり表面的な意見を述べたりするためのものではない。)
このように、英語版のWikipediaにおいて、トヨタ自動車の大野耐一氏が、現場主義の概念の生みの親として紹介されている。大野耐一氏は、トヨタ自動車の元副社長で、かんばん方式など生産管理のあり方として世界的に有名となった“トヨタ生産方式(Toyota Production System、略称TPS)”を体系化した人物だ(以下の日本版Wikipediaの解説より)。
「トヨタ生産方式」とは。トヨタ自動車のホームページに記載があった。
トヨタ自動車のクルマを造る生産方式は、「リーン生産方式」、「JIT(ジャスト・イン・タイム)方式」ともいわれ、今や、世界中で知られ、研究されている「つくり方」です。「お客様にご注文いただいたクルマを、より早くお届けするために、最も短い時間で効率的に造る」ことを目的とし、長い年月の改善を積み重ねて確立された生産管理システムです。
そして、トヨタでは、「三現主義」という原則に基づいてモノづくりが行われている。以下のサイトにその用語解説があった。
机上の空論ではなく、実際に「現場」で「現物」を観察し、「現実」を認識した上で問題解決を図るという考え方のことだ。
日本の効率的な生産管理システムや考え方が、世界で研究され、その結果、"GEMBA" という単語がビジネス英語に取り込まれているというのは、とても誇らしいことだと感じる。
さて、そろそろ英語フレーズの実例をご紹介しよう。
ビジネスにおいては、以下のような会話で使われる。
Why are we seeing such a huge decline in sales? Let's find out what's happening in GEMBA . (どうしてこんなに急激に売り上げが落ちているのか? 現場 で何が起きているのかを探ろう。)
この例文では、"GEMBA" という単語を、「現場」という、日本語そのままの意味 で用いている。
Executives should not stay in the office, they should do more GEMBA ! (幹部はオフィスにいるばかりでなく、もっと現場の視察 をしないとだめだ!)
こちらの例文では、"GEMBA" という単語を、「実際に現場に行って、現場の様子を視察すること」 という意味で用いている。先のWikipediaの"Gemba Walk" の意味に近い。ビジネスでは、この後者の用法で用いることも多い。
使い勝手が良いので、是非使ってみていただきたい。
ご参考になれば幸いです!
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