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【英語】elevator speech(エレベータースピーチ)/ elevator pitch(エレベーターピッチ)

今日ご紹介するのは、英語のフレーズというよりは、ビジネスの場面で出てくる、"elevator speech"(エレベータースピーチ)という概念についてだ。"elevator pitch" (エレベーターピッチ)とも呼ぶ("pitch" ととは、「宣伝文句」という意味の名詞)。

誰か重要な人で、なかなか会えない人、話せない人と、たまたまエレベーターで乗り合わせたとしよう。たとえば、会社の社長であったり、重要な取引先の重役であったり。

エレベーターが目的の階に到着するまでの数十秒の間に、その人に挨拶をし、自分を知ってもらう、またとないチャンスだ。話しかけないともったいない。

そういう、突発的に与えられたチャンスにも即座に対応できるような、相手に何かをアピールする、短く簡潔なスピーチが、"elevator speech" "elevator pitch" なのだ。

Googleにて "elevator speech" や "elevator pitch" を検索すると、Wikipediaに以下の説明があった。

"An elevator pitch, elevator speech, or elevator statement is a short description of an idea, product, or company that explains the concept in a way such that any listener can understand it in a short period of time."

(サザヱ訳:「エレベータースピーチ、エレベーターピッチ、エレベーターステートメントとは、アイデアや製品、会社についての短い説明であり、どんな相手でも短い時間に理解できるようにそのコンセプトを説明するものである」。)

"elevator speech" "elevator pitch" に「エレベーター」という用語が使われているからといって、必ずエレベーターの中で使うものばかりではない。展示会場やパーティーで出会ったり、たまたまトイレの前で出会ったりする場合もある。

そんなとき、偶然降ってきたまたとないチャンスを逃さないように、普段から"elevator speech" "elevator pitch" を用意しておくとよい。

では、"elevator speech" "elevator pitch" は、どのようにして作ればよいのか。ググっていると、以下のサイトが見つかった。

このページによると、"elevator speech" "elevator pitch" は、次の要素を含むという。

基本的なエレベーターピッチの要素:
❖ 自分の名前
❖ 会社でのポジション
❖ 担当している業務
❖ 会社の名前・説明・セールスポイント

きわめてシンプルだ。これを、ごくごく簡単に言うと、

「自己紹介」+「ひとことアピール」

だと思う。

とにかく、エレベーターに乗っている間くらいの短い時間なのだから、無駄は極限までそぎ落とさなければならない。しかも、数十秒の間で相手の印象に残るような、個性的なアピールができれば尚良しだ。

私の体験談をひとつ。

約8年前、勤務先の海外本社オフィスに初めて出張で出かけたときのこと。たまたま、出席していたミーティングの会議室のあったフロアから、1階に降りるため、エレベーターに乗った。

すると、なんと、そこに、本社の社長が、たった1人で乗っていたのだ。偶然、2人きりで、1階まで同じ箱に乗って下りることになった。

彼の名前を、仮に、Mr. John Smith(ジョン・スミス氏)だとしよう。スミス氏は、世界中で何万人もの従業員の頂点に立つ、当社グループで間違いなく一番偉い人だ。当社のグローバル公式ホームページに、彼の写真が大きく載っている。

そのスミス社長が、私を見て微笑んで、「ハーイ!」と言ってきた。

ドキッとしつつも、「ハーイ」と言われたので、反射的に、「ハーイ」と返した。

そして、次の瞬間、私は、自分の取るべき行動を、即座に決断することを迫られた。

エレベーターの到着する1階まで、数十秒の時間がありそうだ。沈黙したままでいるべきか? いや、それだとなんか気まずいし、せっかくの機会だから、挨拶くらいすべきではないか?

このシチュエーションは、まさに、巷で言う、「エレベータースピーチ」の場面、そのものではないか!

俄然、全身に緊張が走る。

ええい、いちかばちか。

そして、私は意を決して、話しかけてみることにした。

"Hi, I am Sazawe from Japan.  I joined this company just last month and I am in charge of marketing for Product X.  Before that I worked for Company X.  Very nice to meet you, Mr. Smith."
(ハーイ、私は日本から来たサザヱです。先月入社したばかりで、マーケティング部門で働いています。その前はX社で働いていました。お会いできてうれしいです、スミスさん。)

と、とりあえず一気に自己紹介をした。当時は入社したばかりで、英語で毎日自己紹介をしているような状況だった。これが幸いして、この自己紹介フレーズは反射的に口をついて出た。

すると、スミス社長が、相好を崩し、ニコニコしながら、次のように答えてくれた。

"Oh, please call me John.  Welcome to our company!"
(オー、ジョンと呼んでくれよ。入社を歓迎するよ!)

ここで、スミス社長が手を差し伸べてくれて、握手した。大きな手で、がっしりとした握手だった。

ほっ。これで何とか、会話のやり取りが成立した。

しかし、それで終わりではなかった。

"So, tell me, Sazawe.  How do you like our company?"
(ねえ、教えてくれよ、サザヱ。弊社はどうだい?)

私が競合他社で働いていたことを意識してか、会社についてどう感じているか、という質問を投げかけてきたのだ。

この人は、何と言っても、グローバル本社の社長さんだ。ここで誤った回答をしてしまうと、せっかく入社したのに、すぐクビになったり、冷や飯食いの会社人生になってしまうかもしれない。

失敗は許されないわよ、サザヱ。さて、どうする?

"Oh, I enjoy working every day.  I like our company mission, vision and products, but what I like most is inclusive atmosphere.  People here are so nice to newcomers like me.  I made a right decision!"
(毎日楽しいです。会社のミッションもビジョンも製品も、でも一番好きなのはこの会社のインクルーシブな雰囲気です。会社のみんなは、私のような新参者にも皆さんとてもよくしてくれます。私は正しい決断をしました!)

はっきり言って、こびへつらい、である。我ながら、よくこんな、あからさまなゴマスリが言えたものだ。

でも、外資系企業や、海外での会話は、一般的な日本人が見るとドン引きするくらい、オーバーなものでちょうどよい。

すると、スミス社長は満面の笑みで、次のように答えた。

"Great to hear that.  Good luck, Sazawe.  Looking forward to seeing you soon!"
(それは素晴らしい。頑張ってね、サザヱ。また会えるのを楽しみにしているよ。)

ちょうどエレベーターが1階に着いた。スミス氏は、私に白い歯を見せ、キラースマイルを向けた後、上質そうなジャケットの裾をふわりと翻しながら、エレベーターから軽やかに降りていった。

“Thank you very much, John!” と、お礼を言って、その後ろ姿を見送った。脇の下に、たっぷりと汗をかいていた。

その日の夜。滞在中のホテルでお風呂に浸かりながら、1人反省会をした。こういうこともあるのだなあ。一応、何とか会話は成立したが、たどたどしかったし、平凡だったなあ。もっとインパクトのある自己アピールを、ビシッと決められたら良かったなあ、と。

それ以来、なんとなく、ではあるが、自分の中で、エレベータースピーチ的なものが徐々に出来上がってきた。

皆さんも、エレベータースピーチで、いざというときのチャンスを、しっかりつかんでください!

ご参考になれば幸いです!

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