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「Pokemon LEGENDS アルセウス」の面白さを言語化してみる

こんにちは。
今回、PokemonLEGENDSアルセウス(以下LA)の面白さを自分なりに言語化しようとしてみます

はじめに

私は「野生ポケモンとの戦闘」がLAを面白くしている重要な要素だと考えています。
『過去作とは一線を画す、野生ポケモンの力強さと彼らと向き合うスリル』『ただ戦闘するだけでない様々なアプローチで捕獲を試みる駆け引き』
といった独自の要素が見られる、LAの特徴の一つですね。

ここでは、そんな『LAにおける野生ポケモンとの戦闘』について、
・臨場感
・場面転換
・ゲームシステム
の3つの観点から語っていきます。

では始めて行きましょう!
※以下常体が続きます。


臨場感のある戦闘

LAの戦闘の臨場感。
これを切り出すべく、例としてオヤブンとの戦闘の流れを追っていく。


強大なポケモンであるオヤブンと真っ向から勝負をして捕まえるのは困難であり、時間もかかる。そして何より”恐ろしい”。

なので、できることなら戦闘を介さずに捕獲したいものである。
そのために草むらに潜入し、煙幕を撒く。
そして、「どうかバレないように」と念じながら、巨大なオヤブンの懐に潜入する。
BGMも美しい環境音から一転して緊迫感を高めるものになり、画面上に暗いエフェクトが出現する。
「ゲームの駆け引き」「音やビジュアル」の全てが、
プレイヤーをオヤブンに対峙させる

文字通り目を光らせながら練り歩くオヤブン。
彼らが気配を感じ取り、こちらに向かってきた時には
「どうか見逃してくれ」と震えながら、プレイヤーはじっと身をひそめる。

オヤブンの視界に入らないよう慎重に移動する。
警戒心を緩めるために餌を投げ、隙を作ることを伺う。
移動も餌の投球も、失敗したら命とり

こうして相手の隙を見つけ出し、いざボールを投げる。
この投球が成功するかが命運を分ける
オヤブンの背面に直撃したボールは強烈な効果音がその重みを語る
そして、場面が「潜入」から「捕獲」へと移り変わることを告げる。

巨大なポケモンは小さなボールに入り込む。
先ほどまで対峙していた巨大な脅威は画面から消え、一瞬の静寂と緊張が訪れる。
プレイヤーはボールの揺れを固唾を飲んで見守る。

祝福の花火が上がれば捕獲成功だ
心地よい花火の音に続いてファンファーレが鳴り、画面は再び明るくなる。巨大な脅威はもう目の前にはいない。
プレイヤーは張りつめていた空気から一気に解放される

しかし、運悪くも餌がポケモンに直撃してしまったり、
煙幕が思ったより早く切れてしまったり、
あるいは、ボールから脱出されてしまったら…

オヤブンが大きな雄たけびを上げ、集中線のエフェクトが脅威を強調する。
ここからはオヤブンのターン。最早ヒトの小細工で対処するのは困難だ。

一瞬でも気を緩めたら、野生の力に屈服させられる。
軟弱なヒトは早急な判断をしなければならない。

野生の脅威に屈して退避するか、
仲間のポケモンを信じてポケモン勝負をしかけるか、
あるいは暴れるポケモンに生身で立ち向かい、攻撃を必死に躱しながら泥団子を当てていくか。

このように、LAにおける野生ポケモン捕獲の工程では
『生身の人間が強大なポケモンに抗う過程』がそのままゲームの駆け引きとして落とし込まれている。
そして、(コマンド操作ではなく)直接的にキャラクターを動かすアクション操作も相まって、プレイヤーは実際に野生ポケモンと向き合っているかのような没入感を得られる。

そして、BGMやSE、エフェクトが場面の転換を印象強く描くことで、
臨場感はさらに高められているのだ。

場面転換で強調される没入感

ここからは、「場面転換」について深掘りしていく。

過去作においては、草むらを歩き野生のポケモンとエンカウントしても
「ゲームの敵とエンカウントした」といった印象に留まっていたかもしれない。

しかし、LAでは話が違う。
シンボルエンカウントとアクションパートによって「自然を探索する中でポケモンに遭遇した」という体験をリアルに描いている

また、ポケモンを捕獲する際の手間が、それぞれのポケモンの在り方に説得力を与えている。
オヤブンをはじめとした強大なポケモンに対しては、先述したような命がけの駆け引きが必要になる。
それは探索パートとはある種の線引きがされた、”別の場面”と呼べる状況だろう。それに伴い、BGMやエフェクトの変化、そしてRPGパートといった『場面転換』が発生する。
しかし、ビッパのような大人しいポケモンに対しては、マップを散策している片手間でボールを投げて何事もなく捕獲することができてしまう
RPGパートに移行することも無ければ対峙してもBGMが変わることも無く、”何事もなく”処理が終了する。

これがもし『あらゆるポケモンで共通して、捕獲の際には”場面転換”が起こる』という仕様であった場合、その”場面転換”は説得力を失い、単なるゲームの処理でしかなくなってしまうだろう。
しかし、LAでは簡単に捕まえられる穏やかなポケモンが相手なら、何事も無かったようにスマートに、テンポよく捕獲を遂行できる
一方で対象のポケモンの脅威性が上がれば上がるほど、
立ち止まったり潜入を行い、索敵範囲外から狙いを定めてボールを投げ、
戦闘を行い…と、様々な手続きを踏む必要性が生まれ、その分だけ緊迫感に晒されることになる。

そして、アクション/RPGパートの切り替えは、最大の「場面転換」の演出と捉えることもできる。

もし、戦闘を介さずにアクションパート内での捕獲を狙っていたにも関わらず、RPGパートが発生しているのであれば、それは「隠密・捕獲に失敗し、苦肉の策として荒ぶるポケモンとの戦闘をしている」ことを意味する。
また、元から戦闘を狙っていたのなら、それは「相手の隙を伺って勝負をしかけにいく攻勢の場面」となる。

この両方が、それまでのアクションパートとは明確に違う場面である。そこで操作方法の転換を挟むことで、場面転換により強いメリハリを与えていると言えるだろう。
なお、野生戦闘BGMのイントロが過去作のもの以上にハキハキしたものである点も、場面転換を強烈に描く手段になっている。

加えて、探索・捕獲パートと敵対・戦闘パートのギャップによる恩恵として『見た目から”捕獲が簡単な穏やかポケモン”に分類していた相手が、いざ対峙すると好戦的で凶暴であった』というイベントを印象強く描けることも挙げられる。自然はヒトの尺度では測れないものなのだ。

”緩急”で描く、ポケモンの脅威

続いて、ポケモンの脅威度とテンポの連動に触れる。
まず、アクションパートでビッパ等を相手にしている時は、ゲームはサクサク進む。
一方で強大なオヤブンに立ち向かう際には、アクションパートでも慎重な観察と行動が必要になるため、テンポは若干落ちることになる。
そして、そこからRPGパートに入るとアクションのリアルタイムな操作
コマンド操作と準ターン性のシステムに変化し、テンポはさらに一段階下がる

このように、敵の脅威性が上がるにつれて少しずつテンポを落とすことで、通常の散策パートと強敵に立ち向かう場面にギャップを与え、それぞれの解放感と緊迫感を演出していると言えるだろう。

そして、これらの変化は極めてシームレスに実行される。
場面切り替えにかかる時間自体が短いだけでなく、場面も(戦闘用のマップに移動するのではなく)アクションパートのものを引き継がれ、それぞれのパートは地続きに感じられる。

このように、『演出としてゲームテンポを変化させる』だけでなく、
単純なテンポの”ロス”は削減し、テンポの変化は演出として意味のあるものに留める』という高度な緩急の管理を行い、臨場感を極限まで高めているのだ。

野生の脅威を示す”対複数の戦闘”

野生ポケモンを力強く描く画期的な要素が”対複数の戦闘”である。
今作における「複数のポケモン」との駆け引きは、このゲームの魅力を凝縮したシステムと言えると考えている。

先ほどはオヤブンとの対峙を例にした話をしたが、それ以外にも”脅威”との駆け引きが発生する時がある。
それが、群れのポケモンなど、複数のポケモンを相手にする時だ。

群れのポケモンを相手にする場合、上手に潜入を行えば群れのポケモンを一網打尽に捕獲できる
ポケモン達が無抵抗のまま次々とボールに捕らえられ、気づいたら画面上から脅威が消滅する絵面は、さながらボーナスステージと言えるだろう。

しかし潜入に失敗し、そして相手のポケモンが抵抗してきた場合。
多数のポケモンから集中砲火される危険な状況が発生する。
そして、戦闘を行う場合でも、1体多ではかなりの苦戦を強いられる

穏やかなポケモンでも群れていればヒトを容易く屈服させる力を持ち、強いポケモンの群れは見た目通り最悪最恐の試練としてプレイヤーに襲い掛かるのだ。(勿論、それを制圧できれば大儲けだ。)

このような、複数のポケモンを相手にする際の「上手くいけば一網打尽、しかし失敗すれば野生の暴力にさらされる」というバランスは、駆け引きとして魅力的なだけく、”野生ポケモンの脅威”の描写としても秀逸と言えるだろう。
ヒスイの夜明けでポケモンの群れとの対峙をエンドコンテンツの1つとして設けたことには、感服せざるをえない

”脅威と向き合う体験”を成立させるゲームバランス

このように、LAでは野生との戦闘で様々なスリリングな駆け引きを楽しめるが、それを実現させているゲームバランスにも注目したい

記事中で、「野生ポケモンとまともに戦うのは怖い」と主張してきた。
しかし、”ゲームオーバーが発生するか”という観点では、実は野生ポケモンは大した脅威ではない
アクションパートでポケモンの群れやオヤブンから集中攻撃をされようが、逃げに徹すれば簡単に振り切りれる。また、戦闘からはいつでも確実に離脱可能な上に、仮にポケモンが全滅しても別にゲームオーバーにはならない。

そう、気を付けてプレイをしていれば、ゲームオーバーは殆ど発生しないのだ(落下事故を除く)

一見すると、ゲームオーバーのリスクが低いことは、ポケモンの脅威を陳腐にしてしまうように思えるだろう。

しかし、ゲームオーバーが発生するリスクが低いことで、プレイヤーは躊躇なく”脅威”と向き合うようになっている。
もし、少しでも操作を間違えたらゲームオーバーになり、リスポーン地点に戻されアイテムを没収される仕組みになっていたら、プレイヤーは『ゲームオーバーを回避するため、そもそも危ないことをしない』ことを選択してしまうかもしれない。特に、『ポケットモンスター』シリーズにはゲーム慣れしていないユーザも多い。彼らに(ハイリターンであっても)ハイリスクな行動を楽しんでもらうのは難しいだろう。
それでは、野生の脅威と向きあうスリルは味わえない。
だからこそ、ゲームオーバーのリスクを抑えることで、カジュアルに”脅威”を楽しめるよう背中を押すことができる。
そして、脅威と向かいうことを前提にゲームが設計できれば、野生ポケモンの脅威をめいっぱい描くことができるのだ。

加えて『”多”のアドバンテージが大きく、1対多での戦闘ではレベル差のアドバンテージがあっても普通に苦戦する』というバランスにも注目である。
このバランスのお陰で、敵ポケモンのレベルを上回るポケモンを育てていても慎重なプレイングが要求されるため、緊張感のあるゲーム体験が楽しめる。
どんなにヒトの手持ちポケモンが強くなっても、「常に”自然”が圧倒的なパワーを持ち、ヒトはそれに抗い攻略する』という前提を一貫して提供することができるのだ。

(その一方で、敵ポケモンが格上でも工夫すれば捕まえられるのもまた両バランスである)

また、LAは「ポケモン図鑑を埋めるゲーム」という前提を置き、多様なポケモンの捕獲を求めることで、”脅威”と向き合う動機付けをしている点も、普段のポケットモンスターにはない工夫だと言える。
(他のゲームでは珍しい話ではないが…)

おわりに

というわけで、PokemonLEGENDSアルセウスの楽しさについて、自分なりに書かせていただきました。

皆さんも何か「アルセウスはこれが楽しい要素なのではないか」といったものがありましたら、是非是非発信していってください!

誤字脱字や誤情報のご指摘、その他の連絡があれば@Tausend_Pfeile まで。
それでは。

2024/10/8 追記
・一部文言の誤字脱字の修正、および表現統一を行いました。
・その他大幅な表現修正や改修を行いました

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