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最大の強化は若手の成長~2024-24シーズンのレッズレディース

 記者席からちょうどシュートコースが見えた。
 (曲がれぇ〜!)
 声にこそ出さなかったが、本気で祈った。

 だがボールはストレートに飛び、右ゴールポストのやや右に切れて行った。
 終了の笛が鳴ったのは、それから何分後だったろうか。0-1の敗戦だった。

 9月22日、2024-25WEリーグ第2節、三菱重工浦和レッズレディースvsINAC神戸レオネッサ。開幕戦で日テレ・東京ベレーザに快勝し、ホームの浦和駒場スタジアムに宿敵を迎えたレッズレディース。ここで連勝を果たし、リーグ戦序盤で優位に立ちたかった。

 しかし前半に先制され、そのまま0-1の時間が続く。83分にこの試合、初めての選手交代があった。ボランチの栗島に代わってレディースユース在籍の前原嘉乃。トップ下を務めていた塩越柚歩が一列下がり、得点力のある前原が前線に入った。もう1人、左サイドバックの長嶋玲奈に代わって丹野凜々香。レフティーのサイドアタッカーだ。システムが3バックに変わり、丹野はウイングバックとして左の高い位置を取った。

 冒頭のシュートはその丹野によるもの。92分、遠藤優の右クロスをトラップして利き足の左で打った。
 本人は「左のアウトで外からポストを巻いて入るように意識して打った」と言うが、少し勢いが足りなかったのだろうか。ボールは思うような軌道を描いてはくれなかった。

 わずかのところで、同点ゴールと自身のWEリーグ初ゴールを挙げられなかった丹野だが、決定機にプレーできたことを称えたい。
 決められなければ意味がないという見方も間違ってはいないが、今季のレッズレディースは、チームの成長を強化の柱としている。
 丹野は2022年の春、レディースユースからトップ昇格し、一昨季、昨季のWEリーグ連覇を経験しているが、出場数は多くない。これまではリードしている試合の終盤投入されることが多かった。実戦経験を積む意味合いが強かったと思う。ジュニアユース、ユース時代は、左サイドをドリブルで切り裂きチャンスを何度も作っていたが、プロでレギュラーになるためには、さらに何かを向上させなければならない。それを知るための2シーズン半だった。

 今回のI神戸戦では、1点ビハインドの83分という時間に、前線の前原と共に出場。間違いなく、1点を取ってこい、という楠瀬直木監督の意図が見える。その役割に沿うプレーをして、失敗には終わったが、これまでの無得点とは意味が違う。自分のプレーが勝敗を直接左右したという経験は、今後の貴重な糧になるはずだ。

 来春昇格が内定している藤崎智子はレッズレディースアカデミーの3学年下。まだユース在籍中の後輩が、9月15日のWEリーグ開幕戦に先発し、先制点に絡んで自らゴールも挙げた。刺激にならないはずがない。
「でも焦っても仕方ないですし、一緒にやっていこうという気持ちです。昨季は、結果、結果と考えていましたが、今季は柔軟にやっていこうと思っています」と丹野は語る。

 今季、外部から即戦力を獲得しなかったレッズレディース。シーズンを戦っていくには、ユースからの昇格選手を含めた若手の成長が必須だ。
 まさに丹野が今後、決定機に決められるかどうかも、チームの強化が図れているかどうかの指標の一つとなるだろう。
 若手を試合で使いながら成長させていく。キャプテンの柴田華絵をはじめとした経験のある選手たちには、ある意味で我慢と、いっそうの奮闘が求められるし、采配を振る楠瀬監督には決断が必要になるシーズンだ。

 その苦しいシーズン前半を経て、後半に花を咲かせる。今季はそんな心構えでいたい。


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