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さいしんコラム#1220 ホッとした理由/伊藤美紀と池田咲紀子のこと

 さいしんコラムには、レッズレディースがタイトルをとるべきチームであり、監督はもちろん選手たちも多くがそう感じていること。今回の皇后杯優勝も、そのメンタリティーが引き寄せたものではないか、ということを書いた。

 さらには、そのメンタリティーはクラブスタッフ全員が共有して欲しいものだし、浦和レッズ=男子チームもそれを持って欲しい、という願望も匂わせたつもりだ。
 だが、勝者のメンタリティーとは勝ち続けて、王者のメンタリティーはタイトルを獲り続けて備わってくるものだと思う。さらに突き詰めていくと、毎試合勝たなくても最終的に優勝すればいい、というような余裕も生まれてくるのではないか。

 たとえば2007年Jリーグ第33節で、鹿島が1人退場になりレッズが数的有利になった試合、引きこもる相手を攻めたててここで優勝を決めようとするのではなく、鹿島は引き分けでは優勝がなくなるんだから、いつまでも引きこもってはいられない。最終的に出てきたときにカウンターを狙うか、こちらもガチガチに守って引き分ければいい、という考えも生まれてくるのかもしれない。(「清尾淳のレッズ話#323」参照)
 それで言うと、2007年のレッズに備わっていたのは「王者のメンタリティーA級」ぐらいで「S級」はまだ取得前だったのかもしれない。まあそれは、ホーム最終戦で鹿島を下して優勝、という美酒に一度は酔いしれてからにしたい、というのも間違いなくあるが。

 さて、皇后杯優勝に関しては、他のことも書きたい。
 前回のPK戦でレッズの7人目キッカーを務め、左ポストに当てて外した伊藤美紀。その瞬間、優勝を逃したということに加え、相手が古巣のINACだということで、メンタルが心配だった。しかし、泣き崩れる彼女のところにチームメートがやってきて「大丈夫だから」と声を掛けてくれたことに救われ、強くなって立ち直った。その後のリーグ戦2連覇に伊藤が果たした役割の大きさは誰もが知っている。
 今回の決勝でPKキッカーには入っていなかったが、準決勝のINAC戦で3-1のリードを3点差に広げ、勝負を完全に決定づける4点目を挙げた。そのことについて聞いてみた。

◎伊藤美紀
「決勝で自分がPKを外して負けた相手との準決勝だったので、去年の嫌な思いを蘇らせるというより、払拭できたというか、気が晴れた気持ちでした。昨年の皇后杯が終わった後にリーグとかで対戦はして勝ったりとかありましたけど、今年の皇后杯準決勝が終わってスッキリした気持ちを考えると、やっぱり皇后杯での悔しさっていうのは皇后杯でしか返せなかった、返せたっていうのは思いました。あの悔しさをバネに1年間やってきた結果が、今年の舞台で出せたと思うので、そこまで持ってきてくれたみんなにも感謝したいですし、本当に周りの皆さんの力があったと思います」
 もちろん決勝でもポジションを変えながら、最後まで戦い抜いた姿も多くの人を感動させただろう。

 そして、もはやキング、いやクイーンか。その風格が漂うGK池田咲紀子。今回は、相手の3人目のキックを止めると、5人目キッカーとして登場し、元チームメートでもある相手GK平尾知佳選手に触られながらパワーで決めた。自分で止めて、自分で決めて、と美味しいところを持って行った感じだが、昨年の大会では準決勝、決勝ともキッカーとして成功させているし、必ず1本は相手のキックを止めている"PK戦職人"なのだ。
 そんな池田が今回はキッカーとしては5人目で登場した。昨年は準決勝、決勝とも4人目だったのだが。その理由は本人に聞いてもわからなかった。ただこう言った。
「1本止めて、最後は自分で決めて来いってことだな、と。絶対3本目までに1本止めてやる、と思いました」
 こんなふうに思えることがすごいし、それを実際やってしまうところがもっとすごい。

 レッズレディースのエピソードはまだまだあるが、それはまた今度。
 3年ぶり2度目の皇后杯優勝、おめでとう。
 そして4年連続のタイトル獲得、ありがとう。



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