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3月21日(2007年) アジアにURAWAの名を刻んだ日 または 「アジアがちょろい」と感じたことを反省した日

 2007年3月21日(水・祝)。浦和レッズはオーストラリア・シドニーのオージースタジアムで、シドニーFCとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ第2節を戦った。これがACL初めてのアウェイだった。

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ACL遠征として最高の始まりだった

 オーストラリアへアジア遠征、というのも一般的には奇異に聞こえるかもしれないが、この前年オーストラリアサッカー連盟がAFC(アジアサッカー連盟)に加入したのだから仕方がない。サッカーにおける“アジア”は東西に広いだけでなく南北にも大きく延びた。
 考えてみればレッズのアジア初遠征がインドネシアや中国ではなく比較的馴染みやすい英語圏の国であり、時差がほとんどなく、しかも試合日が祝日だったこと、つまり「行きやすかった」ことは、後のACL遠征にかなりの影響を与えたかもしれない。いや、最高の始まりだったと言ってもいい。
 正確なカウントがされたのかどうかわからないが、一説では1,500人のレッズサポーターがオージースタジアムに乗り込んだとされる。ここで「ACLアウェイ」に“ハマり”、それがまた仲間に伝播していったのだろう。

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敵城に乗り込む赤い戦士たち

 僕は前日にシドニー入りし、試合日は早めにスタジアムに行ったのだが、もう何人かのサポーターが来ていた。ある意味いつもの光景なのだが、「ここシドニーだよね」とみんなで笑い合った。
 待っている間にサポーターが増えていく。スタジアムの外の道を見ると多方向からこちらを目指して歩いている赤い影がいくつも。この日はレッズ後援会のツアーも行われた。それらしく集団も見えた。

 このシドニー戦で僕が最も印象に残っているのは、スタジアムの門が開き、入場したレッズサポーターがスタンドに入っていくときの光景だ。
 何度も言ったことだが、中世の戦いで敵の城に兵士たちがなだれ込んでいくのは、こんな様子だったのかな、と思った。美しかったし、頼もしかった。圧巻だった。
 スタンドに次々とダンマクが張られ、そこが「レッズのゴール裏」に変わっていく樣も見ていてワクワクした。以前、チームのマネージャーだった水上裕文さんから「アウェイのスタジアムに行ったら、僕らはまずそこに“駒場”を作るんです。できるだけホームの雰囲気に近付けて選手を迎える準備をします」と聞かされたことを思いだした。

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まずは雰囲気でアウェイを実感

 だが、やはりそこはアウェイだった。遅れて入ってきたシドニーサポーターたちは、しっかりと陣取りされたレッズ側を見て驚いたかもしれないが、すぐにブーイングやヤジの口撃を始めた。ウォーミングアップのときの応援チャントに太鼓を使っていたのが珍しかったのか、猿が太鼓を叩くおもちゃのような真似を僕に対してする若造もいた。
「てめえら、後で吠え面かくなよ!」
 温厚な僕も、ついつい攻撃的になってそう言う。ここだけの話だが、海外に行ったときの僕の楽しみの一つは、ふだん言えないようなことを口にできることなのだ。周りに日本人がいたら大変だが。

やはり簡単ではなかったACL

 だが試合はもっとアウェイだった。
 前半2分に先制されると23分にはPKを与えてしまい0-2。早い時間に2点差となって、なおも劣勢の展開。2週間前のグループステージ初戦で「アジアもちょろい」と思ってしまったことを後悔する。オージーはボンボン蹴ってくるものと思っていたが、パスワークもなかなかだった。
 どうなることかと思ったが、前半30分にロブソン・ポンテが1点を返し、1-2で後半を迎える。前半よりも相手に慣れてきた感じがあり五分の展開に思えた。そんな中、後半9分、ポンテの右クロスを相手GKがファンブルし、シドニーゴール前に詰めていた永井雄一郎の足もとに。すかさず永井が蹴り込んであっけなく同点となった。
 その後はレッズが優勢に展開するが、そのまま終了。とにかくアウェイで0-2から追い付いて引き分け。当時のグループステージは1位チームのみ勝ち上がりだから、満足はできなかったが、悪くない結果だと自分を納得させた。あとで思えば、十分な結果だったわけだが。

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 翌日のシドニーの新聞にはレッズサポーターの写真が大きく載っていた。
 シドニーに、そしてアジアに「URAWA」の名を刻み込んだ気がした。

 さて、みなさんは2007年3月21日、何をして何を感じていましたか?

※【あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~】は、レッズサポーターのみなさんから投稿を募っています。浦和レッズ30年の歴史をいっしょに残していきましょう。詳しくはマガジン「あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~」のトップページをご覧ください。


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