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レッズレディースジュニアユースをもっと見たい~高円宮妃杯準優勝

 決勝から9日も経った分、長い。そして主観たっぷり。

 浦和レッズジュニアユースとレッズレディースジュニアユース。U-15年代の男女ダブル優勝を願って、昨年の12月27日、味の素フィールド西が丘に出かけた。

 正直に言えば、女子の優勝はかなり期待でき、男子はかなり苦戦するだろうと思っていた。
 女子は2日前の準決勝を自分の目で見ており、何度も言うが球際の強さ、組織的な守備、ボールへの執着心、シュートの意識の高さ、スピードなどが素晴らしかった。それは決して"当社比"ではなく、過去11年間で9回決勝に進出しており、うち5回優勝という強豪中の強豪、JFAアカデミー福島を下したことで、客観的にも示されたと思った。

準決勝でJFAアカデミー福島を下し、強さを証明した(2024年12月25日)

 一方、今季の男子は今季の公式戦何試合かを見てきたが、脆さを露呈して負けた試合もあった。関東リーグで2部から1部へ昇格を決めたことや、今大会への出場を果たしたことは強さを示しているが、よく言う「絶対王者」のようなものではなく、さらに決勝の相手であるガンバ大阪ジュニアユースの強さを聞いていたからだ。

 ただ、男女のトップチームのように、ほとんどの試合(浦和レッズは全試合)をスタジアムで取材し、練習も見て、選手から話も聞いているわけではない。少ない取材ともっと少ない外部情報によって危なっかしい判断をしているだけだ。

 たとえば女子に関して言えば、今年のJFAアカデミー福島がどれくらいの強さだったのか、決勝の相手であるセレッソ大阪ヤンマーガールズU-15がどれほど強いのか全く情報がなかったし、準決勝までの4試合をほぼ危なげなく勝ってきたことが良い傾向だと言い切れるのか、という一抹の不安があった。
 逆に男子に関して言えば、大会出場を決める関東予選の最後の試合は延長勝ちだったし、準決勝までの4試合はすべて僅差の勝利でPK勝ちが2回、終了間際の決勝点が1回と、薄氷を踏むような思いで勝ち上がってきた。悪く言えば、どこで姿を消していてもおかしくなかったわけだが、逆に粘り強さにかけては"天下一品"だとも言えた。客観的な見方をすれば優勝は難しそうだが、負けるところも想像しにくかった。一縷の希望がそこにあった。

 決勝は、両チームについての、その不安と希望が的中する結果となった。

 11時から行われた高円宮妃杯JFA第29回全日本女子U-15サッカー選手権決勝。
 開始1分にレッズレディースジュニアユースがC大阪ガールズU-15から先制した。片岡菜葉、宮野咲希、増田彩衣里とつなぎ、最後は1トップの中原心愛がロビングのシュート。相手GKが前に出ていたわけではないが、女子中学生のGKが最も苦手とするクロスバーのギリギリ下を通り、しかも上から落ちてくるという絶妙のコースだった。

 その後レッズは持ち味である球際の強さや組織的な守備で相手のシュートを2本に抑え前半の40分を終える。欲しかった追加点は56分に生まれた。相手エリア内のDFに中原が猛烈なプレスをかけボールを奪うとゴール前に送り、上がってきた片岡が蹴り込んだ。前半1点、後半1点。理想的な展開でリードを広げた。こんな早い時間にそんなことを考えてはいけないと思いながらも、レディースジュニアユースが持ち味を発揮して2点目を挙げたことで、勝ったと思った。

 だが相手は、その持ち味を消してきた。前半の終盤からロングボールでチャンスを作っていたが、それを徹底。少ない手数でレッズ陣内にボールを送るようになった。レッズレディースもキャプテンの眞﨑玲愛を中心としたDF陣がケアし、GK秋本悠眞の良い飛び出しでゴールを割らせなかったが66分、絶妙の場所にボールが出て、押さえに出た秋本が間に合わず、シュートを決められた。
 なるほど。後ろからのビルドアップはハイプレスやインターセプトを受けて奪われるから、中盤での勝負を避けて、ロングボールとFWの足に懸ける。レッズから点を取るにはこれしかないと思った。
 
 全体を下げてGKの前にスペースを与えないという手もあっただろう。だがレッズレディースは守備を固める戦術を採らなかった。ロングボールを出させないように意識はしたが3点目を取りに行く姿勢を最後まで貫いた。しかし相手のロングボールへのこだわりと、それを点にする俊足FW田村胡桃のうまさが同点ゴールを生んだ。3分の後半アディショナルタイムが残り1分を切ってしばらく経った時間帯だった。

 10分ハーフの延長に入ると、それまで負けることがほとんどなかった球際でレッズレディースがボールを奪われることがあった。2-0から追いつかれたことはもちろん、失点自体が今大会初めて。3点目が早く欲しいという気持ちが焦りを生んだのかもしれない。そんなショートカウンターから延長後半16分に決勝点を決められた。相手に傾いた流れを取り戻すことはできなかった。

 西が丘には、メンバー外の選手はもちろん、レディースユースの選手たちも応援に駆け付けていたし、楠瀬直木監督を始めトップチームの選手たちもかなり訪れていた。

ゴール裏でサポーターと一緒に応援するレディースユース、ジュニアユースの選手たち。トップの選手たちもスタンドで応援していた

 百武江梨監督は今季での退任が決まっている。5年前にレディースジュニアユース監督に就任し、現在トップにいる角田楓佳らを率い、8月のJ-GREEN堺で第24回大会優勝を果たしているが、大会が年末に移行し、決勝が西が丘で行われるようになってから優勝はない。ファミリーの多くが見守る中で自身最後の優勝を決めたかっただろうが、それはかなわなかった。
 だが、素晴らしいチームを残してくれた。これまでのレディースジュニアユースは、「上手い」という印象が濃かったがいろいろな局面でこれほどの「強さ」を感じたのは初めてだ。この選手たちの多くが来季高校生になってレディースユースで活躍してくれる期待はもちろん大きいが、それだけでなく、来季以降のレディースジュニアユースも楽しみだ。この決勝に先発11人の中に2年生が4人、1年生が2人、途中出場4人のうち2人が2年生だ。

 来季はもっとレディースジュニアユースを見に行きたい。彼女たちがどう成長していくか、その過程をできるだけ取材した上で、12月の西が丘で玉窓の宮日杯を掲げるところが見たい。
 そんな時間が取れるのか、と自問しながらも、そう決意してしまう準優勝だった。
 百武さん、ありがとう。

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