真新しい冷蔵庫【/#042】
祖父母が使っていた冷蔵庫を譲り受けて8年ほど、先日とうとう壊れた。
牛乳や卵を入れる冷蔵室が、なんだかぬるいのだ。
冷蔵庫って壊れるんだと体験したのは、実は初めてである。
よくよく記憶を遡ってみても、購入した覚えはない。
初めての購入に戸惑いながらもどうにか決めて、翌週我が家に冷蔵庫がやってきた。
説明書を読みながら、わからないなりになんとか動かしてみる。
冷えてきたころを見計らい、動線や配置を考えながら食材を移した。食材を入れる位置に明確な決まりはないが、おすすめの場所はあるらしい。
我が家で使ってきた冷蔵庫は、おそらく10年以上前に発売されたものだろう。
となると、私の家電知識は10年前で止まっている。数年で買い替えるスマホなどはともかく、10年レベルともなると、もはや未来の製品だ。
真っさらな白い冷蔵庫はなんだか輝いて見えるし、冷えも格段に増している。
しかし一点の染みもない白さが無機質で、外観の銀色はなんだか私の物になっていないように思えて寒々しい。
メーカーの機能性に魅せられて買ってみたけれど、使いこなせるほど我が家の物になったと思えるのは、いつになるのか。謎の不安がやってくる。
それでも、おそらく10年以上経つと、また買うときが来るのだ。
そのとき、今新品の冷蔵庫はこれからの我が家の歴史と共にあるはずである。
そう思うと、今はまだよそよそしく感じる大きな箱も、10年先を約束した切符のようだ。
私は、ようやくホッとした。
「ようこそ我が家へ」
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