2020年4月24日の『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』
パン屋、ミニスーパー店員、専業主婦、タクシー運転手、介護士、留学生、馬の調教師、葬儀社スタッフ……コロナ禍で働く60職種・77人の2020年4月の日記を集めた『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』。
このnoteでは、7/9から7/24まで毎日3名ずつの日記を、「#3ヶ月前のわたしたち」として本書より抜粋します。まだまだ続くコロナとの闘い、ぜひ記憶と照らし合わせてお読みください。
【コロナ年表】四月二四日(金)
吉村洋文大阪府知事につづいて、大村秀章愛知県知事が授業時間確保のための夏休み短縮や土日登校の検討を表明。
ハンコの押印が在宅勤務を妨げているとの話題で、押印のために出社するのはできるだけ省いた方がいい、と竹本直一IT相がこれまでの態度を変更。
吉村大阪府知事が休業要請に応じないパチンコ店六店舗の名前を公表。
小説家の東野圭吾さんの代表七作品が初の電子書籍化。「外に出たい若者たちよ、もうしばらくご辛抱を! たまには読書でもいかがですか」と呼びかけ。
女子プロレスラー
❖ ハイパーミサヲ/東京都
出演予定の興行がことごとく中止となり、動画配信での無観客試合を実施。今後在宅でどのようにお客さんを楽しませられるか思案中。
四月二十四日(金)
高木さんが新企画について、各所に連絡することを忘れていた! これはまさかだったが、せっついてよかった。ここから加速していくしかない……。配信スケジュールをすり合わせ、何とか来週の火曜に放送開始をこぎつけた。
新企画は「ファン参加型で東京女子プロレスの二次元キャラをつくる」というもの。キャラクター設定で最初から決まっているのは、練習生ということだけ。選手は自宅から配信し、視聴者のコメントを拾いつつ、細かい設定を決めていく。ある程度固まったらキャラデザや声を一般募集するつもりだ。離れた場所でもファンと触れ合いたい、尚且つこの不安定な状況下でひとつでも目に見える創造物を、と思い考えた企画。無事に完成するかどうかはわからないけれど、これでひとつ扉が増えた気がする。
私たちはたくさんの扉を持っていていい。不安や悲しみに支配されそうなときに。暗く窓もない自分の中にひとり閉じ込められたときに。子供じみたふざけた色でも、扉と言えないような陳腐なものだとしても。私たちは助かっていい。美しくなくても、かっこ悪くても。私のやることが誰かの扉になる可能性は少ないかもしれない。だけど選択肢のひとつとしてあってもいいんじゃないか。かつての私が路上プロレスを見たことで扉をひらけたように、可能性はゼロじゃないから。
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校長
❖ 中野浩/六二歳/神奈川県
神奈川県の桐光学園で卒業式や入学式、高校総体などの中止や規模縮小の対策に追われる。生徒の気持ちを考えるといたたまれなくなる。
四月二十四日(金)
五月六日までの休校を五月末まで延長することにした。生徒たちの心のケア、学習の遅れを考えると、苦渋の決断だった。やはり、生徒たちや教職員の命を守ることが最優先目的なのだから、この決定も致し方ないと思う。休校で授業ができない日は、四月で十七日、五月で十八日、計三十五日に及ぶ。この三十五日分をどのように補っていくか。案として出ているのは、七月末まで授業をやる、八月の授業開始を早める、文化祭や体育大会の行事を中止にして授業に当てる等々。来春に受験を控えている高校三年生の学習体系をどのように構築していくかを筆頭に、各学年に具体的かつ体系的な学習システムを提供したい。本来であれば、五月十九日から四日間行われるはずだった前期の中間試験も延期になった。六月以降も休校という最悪のシナリオも想定せざるを得ない。その場合、期末試験だけで前期の評価を出すことも考えられるが、大学の推薦入試、AO入試に出願を希望する高三生には、夏休み前に仮評定を出さなければならない。高三だけでも中間試験は実施したい。一クラスの人数を分割したり、教室の二方向のドアと窓をあけて換気したり、手洗い・マスクの着用を励行する等、「三密」にならないような環境作りが求められる。一刻も早い推薦、AOに関する大学からの情報が待たれる。
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劇団
❖ 劇団KAKUTA/結成二四年目/東京都
五月一三日〜一七日公演予定のカクタラボ「明後日の方へ」を延期。YouTubeチャンネルを開設し、読み合わせ動画などを配信する。
四月二十四日(金) KAKUTA団長 成清正紀
コロナにより色んな職種に影響がでている。演劇人はもともと「金いらんから創作させてくれ!」というようなヘンテコリンな生き物だ。貧乏への耐性は強いけど創作を止められることがとてもとてもキツい。もうアナログ軍団と言っていられない。何とか舞台以外の場所での発信を見つけないとと、苦手なデジタルの海へと舵を取ってみればこれはなかなか面白い。どこに着くのかは分からないけど、毎日願う気持ちで手綱を引き寄せる。これからZoomでの読み合わせ配信だ。さあ衣装と小道具を用意しよう。
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(すべて『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』より抜粋)