読者レビュー『マル農のひと』
2020年8月31日に発売された金井真紀『マル農のひと』。書店員さんや読者からいただいた本書の感想をお伝え致します。
書店員さんからの声
農業にはこれっぽっちも興味のない私が、道法さん(上司の言うことを聞かずミカンの声を聞いた農家のおっちゃん)のあまりにもパンクな生き方に魅了され、読み終わる頃にはすっかり農業の面白さにハマってしまいました。肥料も農薬も極力使わない、自然に対して傲慢な生き方をしない…という農法を聞くと、いかにも「いいひと」のように聞こえますが、「銭を儲けること」がまず第一で、それから好きな農業をすれば良いと説く道法さん、マジ、信用出来る…!大きな組織の中にいても決して自分を見失わず、左遷されまくってもめげずに己の道を突き進む道法さんの生き方を読んでいると勇気が出ること請け合い。大げさでなく、希望そのものみたいな1冊です。 市川真意(ジュンク堂書店 池袋本店)
読後感を一言でお伝えすると、まさに「感動!感動!」です。道法さんが無意味な組織のしがらみを、結果でもってバッサバッサと打ち負かしていく様は、今絶賛放送中のあのドラマを見ているよう。『日曜劇場 道法正徳』でした(笑)。金井さんの軽妙で読みやすい文章と、道法さんをはじめとしたクセが強すぎる登場人物たちに元気をもらい「なんかこの先もおもしろいことが待っていそうだぞ!」という気持ちになりました。 木村勝利 (TSUTAYA BOOKSTORE ららぽーとEXPOCITY店)
彼が編み出した「道法スタイル」はこの業界では有名な農法であるらしい。農業の「の」の字も知らない私にはたして理解できるだろうかと読み始めたが、ここで語られている問題は、私の従事する仕事(書店員)もまた抱えているものではないか…!?という気持ちになり、ページを繰る手が止まらなくなった。「なにかを変えるということは、前任者を否定することになるじゃろ」私もつまらない遠慮ばかりして、自ら袋小路に入っていたのかもしれない。仕事に対して最も大切なのは「自分が信じたことをどこまで突き通せるか」なのだと教えてもらった気がした。理由がわからない慣習に苦しんでいる人、普遍的な「組織のモンダイ」に悩んでいるすべての人に読んでほしい一冊。 五坪侑恵(タロー書房)
読者からの声
自分の家は農家だったので、子供の頃手伝っていた畑のことや、産みたての卵のあたたかさを久しぶりに思い出しながら読みました。ひとの人生って面白いなあ。農業界の変人たちをコロナがなかったらひとりひとり訪ねて見に行きたいくらい! そして、色んなひとに会ってこんな話が聞けちゃう金井真紀さんってほんとうにうらやましいと思った。ひととの繋がりや勇気にわくわくしながら読みました。 (78歳 女性)
農業の話?と思って読んでみたら組織の大小を問わず、あらゆる場面で自分たちが繰り返してきた「モンダイ」について書いてあってほんとうに刺さりました。道法さん、キャラの濃さに爆笑しながら、なんだか眩しいんだよな…。 (47歳 会社員男性)
道法正徳さんに一度お会いしたことのある方なら大抵の人は、その奇想天外な発想と、にくめないお人柄に惹かれてしまう。じっくりお話を伺っているうちに、気づけば道法ワールドの中にすっぽりと入りこんでいたりする。
「お会いしたことのある方なら」と書いたが、今回の著書『マルノウのひと』は、道法さんに会わずして彼の世界観にどっぷりと入り込めてしまう超ラッキーな一冊ではないか。果樹農家、自然栽培農家、有機農家はもちろん、新規就農者、研究者、パーマカルチャー実践者、あらゆる農林業に携わる方、多くの方に読んでもらいたいが、もしかしたら、一人じっくりと自宅の庭のブドウの木に向き合うお父さんや、家庭菜園で多種多様な野菜を手がける研究熱心な奥さんなどの手に渡っても面白いと思う。いつの日か、道法理論が当たり前のように井戸端会議や市民農園で語られる日が来るかもしれない。小さくて強い農業が日本各地に広がることを夢見る。著者の金井さんが、「道法さんという幹に、味わい深い枝や葉っぱや花実がついて、うん、なんだかいい感じの樹になった!」と書かれていたが、私も似たような感覚を持った。道法さんが駆け抜けた時代は、まさに高度経済成長真っ只中。
大量生産、大量消費が大前提のモノづくりの世界の中で、様々な違和感を感じ、行動に移した異なる人生があった。登場人物お一人おひとりがの道法理論に導かれるようにして道法さんの人生と絡まり合いながら、大きな樹になろうとしている。次の時代が求めている「本質を探す人々」なのだろう。道法さんを幹にして、大木がより一層太く強いものになっていくことを期待してやまない。 赤堀香弥さん(だいこんや農園)
農業をやっていたことがあるので、農業の本としてもとても面白く勉強になりました。同じく農業をやっている友達にぜひ薦めたいです。肥料を使わず、植物そのものが本来持っている力を発揮させる、という道法さんのやり方は、全てにつながる大事なことだなと感じました。でも道法さんを魅力的にしているのは、何よりも著者の金井真紀さんの文章だと思います。金井さんの、付かず離れずの、冷たすぎず、かといって近くなりすぎない絶妙なスタンスの取り方があるからこそ、すらすらと、あっという間に読むことができました。
(60代 女性)
池井戸潤作品並の痛快さ!!!
農業について全然知りませんでしたが、楽しく読めました。ミカンって農薬も肥料も使わなくても甘くなるんですね、というのも面白かったのですが、何よりもこのミカンの作り方を編み出した道法正徳さんがすごく面白い方で、なるほど、マル農の人、という感じ。パンクでロックで、池井戸潤の小説に出てきそうなおっちゃんです。組織にこれでやって、と言われたやり方って本当に正しいの?と立ち止まって考えて、自分が正しいと思ったやり方を貫く。農業だけでなく、あらゆる仕事にいえると思います。あとイラストや装丁が可愛いです。
(20代 女性)
この本に描かれているのは、ちょっとした気づきや疑問から自分で考え至った事に対し、ひたすらに身をもって実践を重ねる道法さんの姿や、そのフォロワーの皆さんの姿でした。
全編にわたって農業を扱いつつも、組織の「慣習」や漫然と流れる「空気」に反して新しい道を開くには、どういった態度で望めばよいのか?という点で、職業を問わず生き方に指針を与えてくれる良書だと思います。
小難しい科学/化学的な分析というよりは、実践と結果検証、その体験の繰り返しにより革新的な手法を見つけるという話にはわくわくさせられます。(そこには「信じる」という要素も関わってくるかもしれません。)
道法さん達の物語に加えて、短い解説コラムもあり、自然農や無農薬栽培などに元々知識・関心のある方は改めて考えるきっかけになり、全く知識が無い方にも入りやすい内容となっています。「あるある、日本の組織ってそうだよね。。」「道法さんはすごいな!自分ならどうするかな、、」そんな事を考えながら読むととても楽しめると思いました。
(30代 女性 飲食店経営)