【無料公開】和田靜香『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』
10月24日(日)晴れ 選挙ってなんで休みがないの?
なにもう〜、高松ってオシャレじゃん!
見て、これ。見て、ここ。
ここは高松港の真向かい。海の見える「北浜アリー」なるエリア。「ロサンゼルスのフィッシャーマンズワーフ、ニューヨークのピア17、ボストンのファニエルホールマーケットプレス」を目指すとかなんとか(ホームページより)。なにもう〜、おしゃれ過ぎ。ちなみにフィッシャーマンズワーフはロサンゼルスではなくサンフランシスコ(と、友達に指摘された)。思いっきり間違えていても問題ないあたりが、高松ののんびり良さだと言っておこう。……って、23日はどうした? いきなり24日ってなんだ?というみなさま。23日の日記はお休みしました。ハイ。理由は後ほど……(小川さんはもちろんお休みしてません。71ページのスケジュールを参照してください)。
で。この一角には私の本をたくさん並べて売ってくれた「ブックマルテ」さんというすてきな本屋さんがあり、訪ねてみた。写真集が並んで、めっちゃオシャレ。代官山の蔦屋書店を思い出す。
高松に来てから1週間。ホテルと小川事務所の往復、そして街宣、さらに島、の日々だったんで、こんなオシャレなところがあるなんて、知りもせず。ビックリした。ここは元々古びた倉庫街。それをJA香川と協力して、若い人たちが中心となって再生し、カフェや雑貨屋さん、本屋さん、ギャラリーなどが並ぶオシャレエリアになったそう。地方再生には古びたものを生かしたまちづくりが大切。オンボロに見える、その歴史にこそ価値がある。
って。「和田さん、あなた、選挙の取材じゃないんですか? 何をはしゃいでるんですか?」というツッコミをまたいただきそうですが。でも、社長(本の出版元、左右社の小柳さん)が高松まで週末を利用してやって来たんだもん。せっかくだから、観光するよね?
おいしい肉うどんを食べたり(さすが香川よねぇ)。
「カヌレ」とコーヒーを楽しんだり(社長が「この焦げたみたいの美味しい」と可愛いコメント残していました)。
……しかし、こうやって、人がはしゃいで観光とかして、おいしいものを食べたりしている様子、Facebookで見ては呪っていた以前の私なので、ごめんなさい、お気持ち逆なでしていること、察します。許してください。自慢したいのではありません。
選挙に出られるのは、健康で元気はつらつな人だけ?
でも、何が言いたいかっていうと、「選挙も休もうよ!」なんです。「選挙って、なんで休みがないの?」です。
きっとこの土日、全国で「選挙戦唯一の週末、候補者たちがマイクを握り、熱い闘いを繰り広げました!」みたいなニュースが踊って、大騒ぎで報道されているんだろうなぁと想像している(テレビは見ていないので分かりませんが)。やれやれ、ごくろうさまです。選挙スタッフのみなさま、おつかれさまです。取材されてる方々、がんばってください。何より候補者のみなさま、本当におつかれさまです。
と、私は一市民として、また選挙日記を書くライターとして、みなさんを少し遠い目で見ています。だって、なんで休まないの?だから。ふだん、過労死が問題になりますよね? 働き過ぎはよくない、長時間労働反対、きちんと休もう……そう言いながら、なんで選挙には休みがないのか? それで日記は、一日お休みした。
今回の選挙、公示されたのは10月19日。投票日は31日。選挙運動できるのは12日間。その間、一日も休みなく選挙運動するって何? どうしてそこに誰も疑問をはさまないの?
12日間もあるなら間に一日、絶対に選挙運動をしてはダメ、その日は全員が必ず、告知含め休まなくてはいけないという日を設け、休む。その代わり、選挙期間は必ず2週間以上とするとか、どうして法律を変えられないの? ここにも公職選挙法よ、変わってください!という問いかけ、願いが生まれる。
国の代表者を選ぶ選挙なのに、候補者が過労死寸前みたいに朝から晩まで動き回り、周りのスタッフもボランティアも死ぬほど働き、やばいじゃん!と言いたい。メディアはそこに一度でいいから疑問を持ってよ、頼むよ。ああ、メディアの人たち自身だって、その間はお休みなしとかでしょう?
それって結局、選挙に出られるのは、国会議員になれるのは、健康で元気はつらつの人ばかりってことにも通じる。
たとえば「鬱病」のような心の病を抱える人が選挙に出ることは、今のあり方じゃ難しいだろう。毎日朝から晩までびっしり選挙運動なんて、想像しただけで困難だ。
鬱の当事者が国会に代表として出たら?
「〇〇議員は本日、心の具合が悪いので議会にはリモート参加です」
といった感じになるかもしれない。それでいいんじゃないの? ダメなのかな?
私、そういう寛容な、多様性ある社会こそ、あってしかるべきだと思う。心や体に持病を抱えるからこそ、「国のため、みんなのため、同じ病の人のため働きたいと思うんです」そう静かに、でも、決意をして語る人が、休み休みでも働ける場であればいいのにと願う。
「また和田さんが甘っちょろいこと言ってる」
そう言われるかもしれないけど、そうあって欲しい。私自身、鬱の当事者だったひとりとして、そういう人が国会にいてくれたら、すごく心強いなぁと思う。たまには「鬱のためにお休みします」と、堂々とお休みしてくれたら、ああ、鬱でお休みしていいんだなぁ、それは決して恥ずかしいことでもないし、悪いことでもないと、当事者たちが安らかに思える。今、日本中に心を病む人がどれほどいることか!
そして、当事者たちが安心して休み、治療し、社会にゆっくりと復帰していくシステムが作られていく……そんな風になってほしいんだけど? 当たり前!とみんなが思い込んでるこの社会のあり方に疑問を呈して、少しずつ変わって欲しいんだけど。
でも今はみんな休みなく、選挙運動にいそしむしかない。小川さんだって昨日の夜、疲れ切った顔をしてたなぁと思う。
そして、今日の夕方、ホテルからトコトコ歩いて買い物に出たら、瓦町駅前で平井卓也さんが街頭演説をしていた。
平井さんもお疲れだろう。連日の選挙運動だ。
「私は腹が立っています。フェアじゃありません」「PR映画にだまされてはいけません」「総理大臣になるとかならないとかちゃんちゃらおかしいです」「いまに国会議員全員が映画を作りますよ」「民主主義に反します」と、ひたすら映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』の悪口というか、嫉妬めいた愚痴を延々言い続けていて、そんなに一本の映画に怒っても仕方ないのでは? そもそも平井さんだって新聞社もテレビ局もご親族じゃありませんか?と問いかけたくなったが、きっとお疲れなのだろう。疲れれば愚痴も出る。悪口も言いたくなる。やっぱり休みましょうよ、と思った。
平井さんは「デジタル庁を通じて、この5年で国のシステムをすべて作り替える」とも堂々言っていた。じゃ、公職選挙法も変えてください、お願いします。でも、ふと、思うと、平井さんて、もうデジタル大臣じゃないんだよね。また戻るおつもりなのかな? デジタル大臣に。
それでもなんでも平井さん、「日本の閉塞感はデジタル開発の遅れが原因」とも断言していた。並々ならぬ思いをデジタルにお持ちなのはよく分かった。そして、想像していたよりずっと小柄な人だったなぁ。
よく「分からん」まま18年、国会議員を応援する
そんなこんなで私は日曜日、小川事務所にも行かず楽しく休んでおりました。でも、土曜日は実は行って、また、電話かけ体験をしてきたんですが、分かりましたよ、自分の欠点。私、電話かけにおいて、めちゃくちゃ早口になってしまう! 緊張して、わあああああ!となっているから、相手が「もしもし」と出るやいなや、「もしもし私は小川淳也事務所のボランティアをしている和田と申します。ああだこうだ、それだこれだ〜〜〜!」と一気にまくしたて、相手につけ入るスキを与えず、「ありがとうございます!」と自ら切り上げ、ガチャンっと切ってしまう。しかも、こちらの方々はみなさんふんわり優しい讃岐弁でお話されているけど、私はキリキリと切れ味鋭い東京弁。ダメだ、これ。かえって、迷惑になる。やらない方がいい。電話ボラ体験、これにて終了〜と決めた。
それで、秘書の八代田さんの横に行って、こまごました雑用などをもらって働いてるふりをしていると、電話ボラに飽きたのか、そもそもあんまりボラはしてなくて、ただただここに来たくて来ているのか、毎日見かけるHさんが話しかけてくる。てか、毎日話しかけられているんだけど、Hさんに。
毎日毎日いるHさん。18年前から小川さんを応援している。
「小川さんのこと、そんなに好きなんですか? そもそも、どうして小川さんが好きなんですか?」
ちょっと聞いてみた。そうしたら意外な答えが返って来た。
「どうして好きか? 分からんなぁ」
えっ? 分からん? 分からんのに18年? いろいろ尋ねると、「好きに理由はいらない」とかいうHさん。面白い。そして
「それより、うどん行こう。山奥にいいうどん屋がある」
などと、私をうどんに誘う。「和田さんなら3軒は行けるだろう」とか言う。「3軒も食えねえよっ」と、つっこむ。
なんだ、このユルさ。外では相変わらず小川さんが頭を下げてお願いをしている。家族も総出だ。でも、選挙事務所では、なぜ応援するのか「分からん」おじさんが18年も通い続けている。小川さんを大好きだと言う。
ああ、そうだ、このユルさだ。これが理想だ。これこそ、あるべきものだ。なんだか分からないけど、とにかく小川さんが大好きなおじさんが来る。それでいいんだ。考えたら、私だって「何が分からないかも分かりません!」とか言っちゃって、小川さんのもとへ行った。
選挙も休み休み。そうあるべきだと私は思う。
それにしても土曜日の青空対話集会は、そのとおり、空が青かった。