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帰ってきた音楽実験室

重厚な男声合唱、その澄み切った世界。声楽家・石井一也さん主催の「帰ってきた!Laboratorio141-4431」を聴き終わったあと、しばらくは動くことが出来ませんでした。

前回公演からおよそ8ヶ月。さながら巡礼者のような彼らの音楽は、さらに進化を遂げていました。

今回の公演の白眉となったのが、信長貴富 作曲 男声合唱とピアノのための「Fragments ─ 特攻隊戦死者の手記による ─」。特攻隊の若者の手記のみならず、軍令なども引用され、言葉と音楽のコラージュによって戦争の不条理が浮かび上がる作品です。

時にひとりが語り、時に皆が語り、「Fragments」の時間は進みます。これから死ぬという日、その前に見た緑の美しさ。息子を心配して、遠い旅を経て訪ねてくれた母に、照れ臭さからそっけなく接してしまったことへの後悔。しかし若者たちのそうした柔らかい心情を、戦争は残酷な機械のように押しつぶしていきます。

演奏後、会場はしばらくの静寂に包まれました。ややあって、我に返ったかのように、少しずつ拍手が包んでいきました。

他のどの作品も素晴らしかったのですが、この夜の一曲を挙げるとするなら、私にとっては「Fragments」です。それほどまでに、圧倒的でした。

今後も「Laboratorio141」の実験は続いていくことでしょう。その未来をこれからも見守っていきたいと願います。

演奏者の皆様、スタッフの皆様に心からの感謝を捧げます。ありがとうございました!


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