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消費トレンドとしての「インクルーシブ」が示すもの

一昨日、ウォール・ストリート・ジャーナルで、2020年の世界の消費トレンド予想の記事があがっていました。

記事にある10大トレンドの一覧をみると、自分たちの生活にも「あるある」と思える記述があるなと思います。

その10大トレンドの中に「インクルーシブ」が。

以下、記事より引用。

 自分の価値観を反映した商品を求める消費者が増えるにつれ、企業は商品やサービスを誰でも利用しやすくするとともに、主流以外の人々に目を向けたマーケティング手法にシフトし始める。身体的・精神的障がい者を含めて「全ての人を取り込む」ことをうたった商品やサービスが増えるだろう。「企業はファッションや玩具、ゲーム、外食サービス、インテリアデザインなどの分野で、変化への社会的圧力に応えようとしている」とユーロモニターは言う。

ただの3文だけですが、重要な記述だと思うので、少しだけ読み解いてみたいと思います。


主流以外の人々に目を向けたマーケティング手法

これは、マイノリティに向けたユーザー調査をそのまま反映するという意味合いと言うよりも、今まで無自覚にマジョリティを対象にしていた認識を変えようということかなと思います。

インクルーシブデザイン的な考え方に近いと思いますが、そもそも今自社が持っているサービスや商品は、想定するユーザー、顧客がいるわけで、それ以外の人にどう届いているのかは、意外とわかってない企業が多いです。

例えばこれは私の友人の話ですが、全盲の友人が、nana musicを使っている話を前に教えてくれました。

nana musicは、スマホで歌声や楽器演奏が録音・投稿できるサービスで、いわば音でつながるSNSというイメージでしょうか。

前に同世代の全盲の男の子が、「nanaが面白いんですよ!!」って、熱く語ってくれたのですが、全盲の友人同士で、歌のシェアをしていました。彼はバンドで歌を歌ったりするタイプの美声で、いろんな歌をnanaに投稿していました。それを全盲の友人同士でシェアして楽しんでいました。

nanaの開発側は、全盲ユーザー同士で楽しんでいることを想定して開発はしていないと思いますが、これってより多くの視覚障害者も巻き込んで、市場調査をする可能性があるということだと思っています。

多分、もっと彼らに調査で介入すれば、お宝データがあるんじゃないかなあって思います。(彼らに勝手にユーザー調査させてもらったときに、あああ私だったらこういうことをやるのに!とか勝手に思ってしまった。nanaのみなさんでしゃばってすみません)

この話題をもっと広げていくと、ラジオ大好きな視覚障害者って結構多いと思うのですが、彼らをあえてターゲットにしながら、ラジオ愛好者を増やしていくマーケット戦略は十分価値があると思います。


「全ての人を取り込む」ことをうたった商品やサービス

とはいえ、気づいたら想定外の顧客がいるパターンもなかなかないですよね。

そしてマイノリティに直接聞いて、すぐほしいと言えるものには限界があります。例えば段差をなくしてほしいとか、タクシーで必ず車椅子の人を乗せてほしいとか。

でもこれは言うは易く行うは難しなんですよね。

なぜならそれだけで売上につながるのかが(企業の立場からすると)不透明だからです。

そもそも

コスト>対象顧客による売上

となると、企業も二の足を踏む状況になりかねません。


じゃあどうなっていくのか。

1つはこれまでに対象でなかった顧客にアプローチしていくようになる。

車椅子タクシー関連の動きは1例かなと思います。

普通車のタクシーに車椅子は直接乗せられませんが(折りたたんで乗るタイプの人もたまにいるけど)、専用のタクシーなら、乗り降りに時間はかかれど車椅子に乗ったままタクシーに乗車できます。

車椅子ユーザーにとって、障害者割引がきいて、行きたい場所に直接連れて行ってくれるならタクシーのほうがよいという人もいるはずです。今までにない顧客へのサービスが、人口減少社会において肝になってきます。

しかも上記の記事をみると、テクノロジー発展にも寄与する部分も大きいなと思うので、うまく取り込めば良いメッセージを生み出せます。

ナイキの事例ももしかすると近いかもしれません。


そして1つは、さんざん解説してきたように、インクルーシブデザインのように、想定外のユーザーを巻き込みながら、新しい発想を得て、想定内・想定外両方の対象の視点から新しい商品やサービスを生み出す事例が増えてくると思います。

そしてこれが正直時間がかかる。ユーザーを巻き込んで形にしていくものに、近道はありません。障害当事者を巻き込むならなおさら、彼らへの配慮も含めてペースをつくる必要があります。

でもここを抜けると、ユーザーそれぞれに対応したサービスや商品を作らなくても、1つの商品やサービスで色んな人に届けられることができるので、こういう事例もこれから増えてくるように思います。

いい例でいうと、マザーハウスのココカラプロジェクトですね。

いろんなユーザーとバッグを作っていますが、その当事者だけでないユーザーにも売れるバッグを作っています。さすがマザーハウス。


企業はファッションや玩具、ゲーム、外食サービス、インテリアデザインなどの分野で、変化への社会的圧力に応えようとしている

最後にこの観点ですが、上記のようなことを通して、道徳的メッセージとは別の角度から、インクルージョンを体現していこうとしている企業が増えてきたように思います。

特にあげられている分野は、nana musicの事例のように、すでに実は顧客にいろんなユーザーがいるという領域だと思います。というか簡単に言うと衣食住に関わる分野こそ求められてくる、ということだと思います。

道徳的なメッセージも大切ですが、それだけでは立ち行けない事情が現実としてある状況の中で、どう工夫していくのか。

その工夫の余地ありなのは、企業の取り組みだなと思います。

企業の先駆的な事例は、私自身も今後レビューしていきたいと思います!


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山田小百合
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