インクルーシブデザインの「巻き込まれてもらう」難しさ
さゆちゃむです。昨日、乙武さんの義足プロジェクトについて関心をもった結果、下記のような記事を書きました。久しぶりに4000字超えた…
開いて「まじで文字多いじゃん無理」という人もいたかもしれないけど、読んでくれたひとは「めっちゃいいねこれ!!!!!」という興奮冷めやらぬコメントを頂いております。私の興奮がそのまま伝わったようなリアクション本当にありがとうございます。私すごい!これはよすぎる!と思ったものを押し売るようにレコメンドしてうざがられるので自信になりました…苦笑
いやいや、何より乙武さん、遠藤さん、内田さんからのリアクションが本当に嬉しかったなあ。プロジェクト当事者からありがとうって言っていただけることの嬉しさと安心がすごいです。読んでくださり、こちらこそありがとうございます。
(どちらかというと、その情報間違ってますけど、とか言われたらほんとどうしようとか思ってました。臆病w)
(電動ってミスなのかな、それともボケなのかなって突っ込めなかった)
先の記事にはいろんな凄み観点がありますが、その中でも「乙武さんがあんだけ深くコミットしてるのはすごい」ってことを書きました。
でも、乙武さんって普通に考えたらこのプロジェクトに積極的に関わる理由がなかったはずなんです。なぜなら彼自身に今義足が欲しかったわけじゃないから。この観点はめちゃくちゃ重要で、普通ならこんな積極的に巻き込まれたいわけじゃないわけです。
(乙武さん義足プロジェクトがやばいという話 より)
大学院生のころからインクルーシブデザインにおける、ワークショップの学習に着目して研究していた私的には、これはめっちゃ秀逸インクルーシブデザインだなと思っていたのですが、同時にこの乙武さんの積極的関与の姿勢に凄みを感じています。
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インクルーシブデザインとはなにかというと、
見えない方や妊婦さんなど、普段デザインを考える上で想定されない人(ユーザー)に、生活品や日用品のデザインに一緒に入っていただいて、新しいものづくり・アイデアの視点を得るデザインの方法です。
近年だと見えない人と見える人とが、一緒に言葉でみる美術鑑賞なども注目されていますが、この美術鑑賞のように、見えない人にも見える人にも両方に新しい体験が生まれています。その方法を製品開発などにも活かせる方法がインクルーシブデザインです。
(また、ちゃんと「インクルーシブデザインとは」という記事書きますね)
インクルーシブデザインとは明言しなくても、方法としてインクルーシブデザインだなぁという商品開発やプロジェクトは結構増えてきていて、特にここ1,2年で一気に認知度が高まっています。(なんで高まっているのかという話もまた書きます)
そしてこの「普段デザインを考える上で想定されないユーザー」のことを、気づきをリード(Lead:導く)してくれる存在という意味で、リードユーザーと呼ぶことが多いです。
実は認知・関心が高まっていることで起こっているのが「リードユーザー不足」の問題です。いやいや誰にでもよいものを生み出すのに貢献したい人多いんじゃないん?という声が時々あるのでその理由を書いてみたいと思います。ざっくりですが3つかなと。
①負担が大きい
普段例えばユニバーサルデザインなどで商品開発をするときは、障害のある人達は「モニター」という形で、使いやすいとか使いにくいとかをコメントする、みたいなことはわりとよくあります。
これらは拘束時間も短く、わかりやすく自分の障害の特性を元にコメントをするので、反映されている実感が湧きやすい側面があります。
一方インクルーシブデザインの場合、共創的に取り組む、つまりワークショップ形式で取り組む事例がほとんどなので、まだアイデアもプロトタイプもない状態から巻き込まれてもらう必要があります。
ワークショップってだいたい2,3時間かかりますし、1回のワークショップで終わらないので、長期的なコミットを求められます。そのプロジェクトのワークショップの手法にもよりますが、基本的に拘束時間長いです。
しかもしかも、アイデアも一緒に考えてもらうので、モニターみたいに気になるところだけ伝えて終わりません。最初の観点はリードユーザーの視点から始めるものの、実物触ってもらったり、試しながらリードユーザーの観点だけでデザインしないので、一緒に考えないといけません。(場合によることもある)
②メリットが感じられにくい
①に関連しますが、インクルーシブデザインをやろう!という時は「見えない人も見える人も」などと、リードユーザーもデザイナーも一般ユーザーにも双方にとってよいアイデアを考えようという、少しお題としては高度なところから始まります。
この前提からスタートするという意味でもモニター的に「コメントして終わり」になりません。
乙武義足プロジェクトを例にとると、遠藤さんは単に足のない人に義足を作っているわけではなく、足の選択肢として、身体の拡張機能として義足を捉えているので、「乙武さんの観点を参考に、義足のアイデアをアップデートする」という思考でデザインされているはずです。なので、乙武さんが1から100の要望を伝えたらすべて反映させているわけではないし、実際に義足がどんどんアップデートされています。そのプロセスは、要望の背景にあるニーズを汲み取りアイデアでどうい解決するかとか、どの課題については扱わないかとか、選択をしていると思います。
結果としては乙武さんにとってもメリットのあるプロジェクトになっているからこれだけのコミットなのだと思いますが、その成果がすぐに見えにくい。簡単に、安易に反映されないデザインプロセスなので、自分の関与の成果がわかりにくいと思う方は多いように思います。
③なんでも前向きに協力してもらえない
これが意外と重要なポイントかもですが、障害のある人たちは社会にたくさん要望があるから、なんでも前向きに協力してくれるに違いないという勘違いがわりとある気がします。
例えば人と接することに臆病な人たちもいるので、ワークショップみたいな、相互のやり取りが活発そうな場所は苦手という人はわりといます。
また、社会に怒ることがくせになっちゃっている人は、どんな場でもまずお説教から始めちゃうことが多いので、考えたアイデアを真っ向から否定してくるとかもあります。
モニターだとそれでも良いかもですが、インクルーシブデザインのようなワークショップの場合はそこから汲み取って形にしないと行けないので一気に場のモチベーションが下がります。
ワークショップでなくとも結構こういう経験を受けた方はインクルーシブデザインには消極的になる方もいたりします。なのでインクルーシブデザインにおけるファシリテーター、ワークショップデザイナーは超重要なんです。
この辺の問題は、当人の課題もあるかもしれませんが、健常者との関わる経験が薄いほど多く、結局それってそういう学びの機会がないってことなんだよなあと思います。そういう問題についてもまた書きたいなと思います。
最後に、わたしたちのところで協力してくれるみなさんは本当にみんな素敵で楽しい人ばかりです♡楽しいって大事。
まとめると…
①リードユーザーとしての負担が大きい
②リードユーザーとしてのメリット感じにくい
③前向きな姿勢で誰もが協力してくれるとは限らない
ということでした。
🚙おしまい🚙
と、偉そうに書いている私も企業さんとの複数のインクルーシブデザインプロジェクトに関わっています。ただ事情あり外に出せない事例が多いのですが、久しぶりにインクルーシブデザインワークショップを開催します!12月21日(土)に開催しますので、もしよろしければ遊びにいらしてください!
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