見出し画像

どうして採用合同説明会を「公共とデザイン」さんと一緒にやるのか

インクルーシブなプロジェクトやデザインに伴走する、デザインリサーチチームCollableの山田小百合です。こんにちは。

先日、一般社団法人公共とデザインさん(以下:PDさん)と一緒に合同説明会を開催するということで告知を出させていただきました!

今回説明会をご一緒させていただく、PDの共同代表の石塚理華さんとは以前から仲良くさせていただいておりまして。今年の頭には一緒にとあるプロジェクトもご一緒しました。その打ち上げで美味しいスペイン料理食べたのはいい思い出です!

さて、この2人が継続的に接点を持っていることが不思議な人も多いでしょうし、公共とデザインのほうに関心はあるけどみたいな人もいそうだなと。なんじゃその一緒にいるNPOなのかよくわからん団体は?という方もいるかもですよね。わかります。

なので自己紹介からさせてください。わたしたちCollableはインクルーシブな環境づくりに伴走するデザインリサーチ&コンサルティングチームとしてかれこれ10年以上、インクルーシブデザイン等の普及に取り組んできました。

代表の私(山田小百合)は2011年に大学院生(修士課程)に入り、そこでインクルーシブデザインやワークショップデザイン、ファシリテーションと出会いました。障害当事者とともに取り組む学びの場やプロジェクトを、道徳的な理由でするものではなく、むしろお互いにとって意味や価値があると思える機会や環境づくりをするには?ということに関心があり学生をしていたんですが、なぜだか大学院修了後の2013年にすぐ法人をつくることになりました。インクルーシブな環境づくりのプロジェクトは誰よりも取り組んできた自信があります。詳しくは下記に。

10年前には見向きもされなかったインクルーシブデザインは、今となっては国内の大企業も取り組まれ、ミュージアムではその広がりを見せています。


私たちの最近のプロジェクトを一言で表すと「あらゆる異なる人たちとの共創を実現する」ためにご一緒させていただいています。その切り口としてインクルーシブというキーワードは、ここ最近なんとなくうまく言い当ててる、ハマっているワードなのだと思います。

「インクルーシブ」というキーワードがバズワード化しつつあるなと思いながらも、なかなかこの領域の課題解決に飛び込んでくれるプレイヤーが増えないなと感じています。私はこの状況に危機感を感じていると同時に、このインクルーシブなプロジェクトに身をおくことの価値に気づいてない人、もったいないな、と思ってます。

どうしてそうなってしまうのか。それはおそらくインクルーシブというキーワードから知らず知らずのうちに福祉的な領域や文脈をイメージするからではないでしょうか。「限られた人が取り組むもの」という無意識的な偏見誤解がそこにあるからではないかと思います。

人の異なりからの創発をうみだす仕事

私たちが取り組むインクルーシブデザインは、障害のある人たちとの共創のプロジェクトが多くあります。障害のある人たちに限らず、外国にルーツのある方、ご高齢の方、小さなこどもをもつ保護者の方などなど、あらゆる人との関わりのなかで創発を生み出すことを目指すデザインの考え方です。しかし、どうしてもこの障害のあるひとと「ともに」というイメージが、障害のある人の「ために」、ともに取り組むというイメージに引きずられてしまっているように感じます。しかし、私たちのプロジェクトは究極の「ともに」を追求します。

インクルーシブデザインワークショップの様子。テーブルを3人でかこんでおり、写真左から男性、女性と横並びに座り、その向かいにかとけんが座って対話しています。
元ブラインドサッカー日本代表のかとけんは私たちの認定リードユーザーでもあります!(写真右)

おおよそ私たちが取り組むプロジェクトではワークショップの機会が度々あります。その協力してくれる方々(ここではリードユーザーと呼びます)にワークショップの場にきていただくのですが、ワークショップの初期段階ではまずはその人たちにぐっと寄せた活動をします。この時間は単なるヒアリングをするのではなく、彼らのなかに飛び込んでいくことで気づく時間です。当然明確な困りごとをリードユーザーが教えてくれる場合もあります。しかし、むしろ彼ら彼女らの価値観や視点、習慣などにふれていく時間で、アプローチは文化人類学の発想に近いと思っています。

リードユーザーの当たり前に飛び込んでいくことができて初めて、今までに気づかなかった視点を獲得することができます。リードユーザーの人たちですら認識していなかった行動の特徴や違い、工夫などに気づき共有し、それを手がかりに共創に向かっていきます。

このプロセスがうまくいくと、障害やそのほか様々なメインターゲットとして認識できてなかった人たちだけでなく、あらゆる人がターゲットになるアイデアに化けることができます。見えない人も見える人も、聞こえない人も聞こえる人も、共有できる価値を見つけていくことができます。「見える人も見えない人も体験として共有できるものを生み出す」という、ワークショップで起こしたい矛盾条件でのプロジェクトは、非常に難解で、だからこそ非常にクリエイティビティにあふれています。

それだけではなく、ラベリングを通じて見ていた「〇〇障害」「△△な人」という存在が、テーマの中で揺さぶられ、身近な個人として見えてきます。今まで接点の薄いと思ってた人に対し、共感的に理解する視点が知らず知らずのうちに育まれているのです。

参考:安斎勇樹, 塩瀬隆之, 山田小百合, 水町衣里(2013)インクルーシブデザインワークショップにおける共感的理解を促すアイスブレイク手法の提案

共感的理解は、創造的なアイデアを生み出していくだけでなく、バリアフリーやアクセシビリティなど、マイノリティの人たちに届けるべき環境づくりすら自分ごとになってきます。多様なユーザー行動が自分目線で共感でき理解し、想像できるようになるので、バリアフリー1つとっても意味のあるものに変わっていきます。

さらにさらに、こうしたプロセスは、社会的マイノリティの人たちの社会参画の当たり前すら崩している側面があります。リードユーザーになる当事者の多くも楽しんでくれているのですが、聞いてみると「ただ利用されるようなヒアリングではなく一緒に作っていけるというのが、貢献実感もある」のだそうです。(うれしいね)

ただ、これを実現するにあたって、リードユーザーとプロジェクトメンバーだけではなかなか一筋縄にいかないの難しさがあります。だからこそ、プログラム設計とファシリテーションがまず必要で、私たちがあちこちのプロジェクトでお声がけしていただいているのだと思います。

ファシリテーションはワークショップだけに使うものではない

ワークショップの場では、お互いが気付けるようにプログラムを設計し、プログラム内で補えないことはファシリテーションでフォローします。ワークショップ中にリードユーザーに寄せていく時間のなかで、気づきを集めきれてないときや、場に緊張感があるときも、その原因をともに発見しながら介入します。

しかし、例えば見えない人とプロジェクトに取り組むのが初めての人、聞こえない人と対話をしたことが全くない人がプロジェクトの中にたくさんいます。「初めての人」と出会うのは誰でも緊張します。一方で、「見えない人にはこういうサポートをしてあげましょう」という前提知識を下手に入れてしまうと、目の前にいる見えないリードユーザーとの関わりが「視覚障害の人」との関わりから脱却できないまま、ワークショップが進んでしまうこともあります。ある程度自分なりに仮説を立てながらも、ワークショップを通じた関わりの中で、無意識の偏見をポジティブに取り除いていくことも、ワークショップでは重要です。

だからこそ、私たちのプロジェクトは、リードユーザーと出会う前、出会った時間、その後も含めて、インクルーシブ・ファシリテーションで一気通貫でご一緒させていただいております。プロジェクトの途中にあるインクルーシブデザインワークショップは、あくまでもプロジェクトの山場に過ぎません。みなさんの今ある状況を見ながら、何が必要になるのかを見極めながら、あらゆるご提案をさせていただきつつ、みなさんの取り組みたいことに伴走させていただいております。

それだけではありません。障害のある人との共創は「御用聞きをしなければいけない」と思い込んでしまっている公共セクターの人の固定概念を崩しながらも、彼らがもつ不安な気持ちにも寄り添いながらプロジェクトを進めることもあります。クライアント目線では「やらなければいけないけれど、やることに前向きじゃない」プロジェクトもあるのが、この領域の難しさでもあります。

さらに、当然ながらリードユーザーのみなさんには、前向きな気持でプロジェクトに参加していただけるように事前のコミュニケーション・対話をしながら、安心感を感じていただけるようにします。

異なる人同士のプロジェクトなので、ときには衝突や齟齬もあります。衝突や齟齬は悪いことではなく、関係性を育てる重要な機会でもあります。それすらも乗り越えていき、重要な組織の学習になるよう伴走します。

10名が並んでこちらに右手で「C」の形をつくったポーズをとって並んでます。視覚障害のあるリードユーザー3名も一緒にいます。
主催のワークショップ体験会にきてくださったみなさんとの集合写真

公共とデザイン&Collable

こうしてこれまでのプロジェクトを俯瞰してみると、私たちがご一緒しているプロジェクトは(も)非常に民主的で公共的なものなので、公共とデザインのみなさんが取り組んでいるトピックにも非常に共通してくるのです。ただ、公共とデザインが重きをおいていること、Collableが重きをおいていることが少しことなるだけで、非常に包含関係にあるのが私たちの関係性です。

実際に、募集している人材要件としてはほぼ同じで、取り組むプロジェクト等の傾向からあくまでどこに重きをおいているかの違いでしかないです。石塚さん自身も公共というフィールドでは当然、インクルーシブというキーワードに対しても関心が高いということを勝手ながら添えさせていただきます。(だから説明会も一緒にやるので、全然無関係な領域ではありません)

ということで…仲間を探しています

募集しているポジションについて

現在主にファシリテーターとアクセシビリティディレクターを募集しています。それぞれについて改めて触れたいと思います。

私たちが言うファシリテーターは、「あらゆる異なる人たちとの共創」を共に実現してくださる方です。ワークショップ単体だけでなく、あらゆる人と取り組むプロジェクトを進めていくこと自体もファシリテーションだと考えています。

アクセシビリティディレクターは、もう少しあらゆる人の「アクセス」にフォーカスしたプロジェクトに関わっていただくイメージです。インクルーシブデザインのもう少し手前の入口をデザインする仕事です。わかりやすいところであれば新設したWebアクセシビリティのプロジェクトがありますし、「アクセシビリティ」もWebに限りません。(でもWebアクセシビリティの勉強は取り組みながらやってほしい)

インクルーシブデザインも、アクセシビリティも当然ながらシームレスに繋がっているものですが、今動いているプロジェクトが「アクセシビリティ」に寄っているのか、「(広義の)インクルーシブデザイン」に寄っているのか、の違いです。

Collableの中の人について

経営チームには理事監事に加えて、障害者雇用領域とHRに詳しい中塚翔大(なかつかしょうた)さんがいます。営業戦略、経営戦略、お金まわりも含め、毎週戦略会議を行っています。今のコラブルがあるのは彼の視点や視座のおかげです。彼自身も経営者だからこそ、私のただ専門性の中にいただけの人間の視座をいつも引き上げてくれつつ、対等に議論をしてくれます。彼の人を見る力もすごくて、デザインのバックグラウンドはないのに、リードユーザーとの対話では誰よりも気づきをかき集めます。もはや怖い。笑

我々はNPO法人なので事務局がありますが、この屋台骨になってくださっているのが藤﨑梢(ふじさきこずえ)さんです。メンバーの見えないところで細やかなサポートをしてくださるだけでなく、HRの専門もあるため、この人材募集に関するプロジェクトは彼女のディレクションなしには実現できておりません。加えて本当にインクルーシブなコミュニケーションが大変上手な、優しいスーパーウーマンです。事務局って、本当に難しく繊細な仕事だと彼女を見ていて思います。(これで民間企業に務めながらやってるんだからすごい。フルタイムで働いてくれるのかというくらいの業務に取り組んでもらってます)

そして、今回あえてデザインリサーチャーを(明確には)募集していません。それはなぜかというと、インクルーシブデザイン系のプロジェクトに加え、リサーチ等々を引っ張ってくれている、長年の友人であり尊敬するデザインリサーチャーでもある浅野翔(あさのかける)くんがすでにいるからです。が、デザインリサーチャーのご経験等のある方は大歓迎です。浅野くんのようにインクルーシブな場のファシリテーションもできて、デザインリサーチもできる人とかいるのかな、いたらぜひお話したいです!

そのほか、学生職員(有償インターン生)が複数名。障害の有無なども多様な個性あふれるメンバーもいます。(学生もあとちょっとだけ募集してます)

最後にお取り組み実績について(なぜあんま公開してないか)

Collableで以前非公開実績も含めてまるっとまとめたらとんでもない量になっていたのですが、ほとんど公開していません。というかできていません。それは、企業が「公開されたら困る」ものが多かったからでした。商品開発のNDA事情というのもありますが、それ以上に「インクルーシブを目指して取り組み、それを公開することで『取り組んだと言っておきながらできてないじゃないか』という当事者からのクレームを言われるのが嫌なので、公開を避けてほしい」と以前とあるクライアントに言われたことがありました。こうした事情のものは少なくないのです。

(かつ、人材不足の影響で実績公開記事が書けてないからです。苦笑)

インクルーシブがバズワード化しつつある今、この数年前からさり気なく社会に存在している社会的な偏見すら変えていく必要があります。

ただ、ここ数年でガラッと変わりました。いろんな相談ごとが増えてきて、社会が大きく変わるダイナミクスみたいなものを感じています。今、インクルーシブな環境をつくり、ファシリテーションをすることは、超ハードで学びにあふれています。そして、あらゆるプロジェクトや人との関わりにおいて、汎用できる経験とスキルが身につくことを保証します。

障害のある人とのプロジェクトすら取り組んだ経験がないけれど、色んな人をつなぎながら、ハードな局面を乗り越えてきたり、そこからクリエイティビティを見出すようなことをしたりした人は相性がいいかなと思います。また、人と課題が複雑なプロジェクトに、想像力をもって取り組んだことのある人も楽しんでいただけるかも?と思います。

こう書くと大変そうですかね。結構中の人たちは軽やかにやってます。なぜならチームになりつつあるからです。

というわけで、続きはぜひ7月31日の説明会でお話できればと思います!お待ちしております!

最近はこんなことをしています

  • ワークショッププログラムのパッケージを作っています(クライアントワークでも、内部でも)

  • インクルーシブデザイン普及のための仕組みづくりをクライアントさんと取り組んでいます

  • ミュージアムのプロジェクトは引き続き国内最大数取り組んだ自負があり、今も関わっています(例えば浜松科学館など)

  • 内部でリサーチチームの活動が生まれつつあります

  • アクセシビリティを入口にあえてしながらも、インクルーシブな共創に向かうプロジェクトも動き始めています

みなさんとお話できることを楽しみにしております!


いいなと思ったら応援しよう!

山田小百合
いただいたサポートは、多様な人たちとの関係性が当たり前にある社会の実現に向けて、Collableに寄付します!