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挨拶に|泣いた話

新年のあいさつに実家に帰省した。
車の運転は夫と半分ずつ。なれない夫の車で緊張しながら走る。
友人と今度来るかもしれないからと、下見もかねて2か所観光地を巡る。
ああ、ここは違ったな。ああ、ここは季節が違えば楽しいかもね。夫とそんな話をしながら歩く。

夫は楽しむ才能があると思う。
ハーブを触り、香りを楽しんだり、とりあえず行ってみようよと、私を連れ出してくれる。私はビクビクして動けないことが多い。今回も連れ出してくれてすこし空気を吸えた気がした。

運転を替わり実家につく。今日の目的は新年のあいさつだ。
「今年もよろしくお願いします」これだけ言えればいい。
両親と会うと思うと顔がこわばる。いやな記憶が頭を駆け巡る。
ピンポンを押す。家の中に入る。 
声が出ない。
夫が世間話をしている。私は顔がこわばり上手く動かせない。
一言、二言返事をするので精一杯だった。「今年もよろしくお願いします」小さな声で言う。
「この後のご予定は??」母に言われる。
答えられない。
夫が「二人の体調で決めようと思っていて、先に神社だけ行ってきますね」
返事をしてくれる。歩いて最寄りの神社まで向かう。
「顔こわばってるよ」「どうする」「楽な方選んでいいでね」
私は決められない。30分経っても決められない。
考えられず、頭がフリーズしてしまう。自分の決定が怖くてたまらないのだ。もう、決めてくれればいいのに。意図的に決めてくれない夫に悔しくなる。
「今日帰る」これだけは決めることができた。
が、「いつ帰るか」決められない。
家に帰ってきて、「帰る」それだけを伝える。
もう精いっぱい。その後いろいろ言われたがもう頭には入らない。
「いい」「いらない」「もういいから」
車に逃げるように乗る。夫がその後の対応をしてくれている。
早くここから離れたい。パニックで涙が出てくる。
つらい。きつい。自分の対応の悪さに後悔し、焦り、不安でいっぱいになる。一人車で泣いていると、夫が戻ってくる。
私を見て驚く。急いで帰ろうとしてくれる。焦っている。ナビもせずに実家を逃げるように飛び出した。

数分、車で走ると涙がおさまる。パニックが少し落ち着いている。
ああ、泣いてしまった。でも親には見られていない。大丈夫。
挨拶も形だけはなんとかできた。今日のミッションは達成している。
自分で自分を納得させようとする。涙が出たことで若干すっきりしているのに気づく。横を見ると焦っている夫。我に返る。「ごめんね。もう大丈夫」と声をかける。近くのコンビニで一度休憩する。

私は泣く。自分でも泣いている理由がわからないこともある。わかりたくないだけかもしれないけれど。泣くとすっきりすることもある。涙は何のためにあるのだろう。

ああ 恥ずかしい。

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