行動力ファクター part3

keywords #マインドフルネス #insula島皮質 #Default mode network #Seiryns network #Central Executive network

それではマインドフルネスを実際に体験できる具体的な方法を紹介します。方法は非常に簡単です。まず目を閉じて自分の身体の状況に注意を向けます。「今身体のなかで温かいと感じる場所はどこなのか?」、「今身体の中で”重い”と感じる場所はどこなのか?」をなんとなくでいいのでイメージしていきます。その後、今度は自分の呼吸に意識を向け、目を閉じたまま2分間程度自分の呼吸に意識を向け続けます。以上がマインドフルネスの具体的な方法の一つです。実はこの手法は仏教の座禅から応用したものであり、「今、この瞬間に価値判断することなく注意を向ける」ことで仏教がたどり着こうとしている、”サマタ”(止)”、”ヴィパッサワー(観)”の境地にたどり着くことを目的としています。まずは自分の身体の状況に意識を集中させることで思考や感情が勝手にさまよう(これをマインドワンダリング状態と呼びます)状況に気づくことが大切であり、また呼吸に意識を集中させることで思考や感情を価値判断せずに放っておけば自然と消えることに気が付くことが大切になります。この方法を繰り返すことによって、思考や感情の微細な起こりに気が付くようになり、今、この瞬間に意識を集中させることができるようになります。まとめると、我々は進化論的に自然と危機回避反応を起こすようにインプットされている生き物であり、これこそが行動力の足枷となっています。これを改善するためには今この瞬間に価値判断することなく注意を向けることが大切であり、そのために座禅の手法を応用したマインドフルネスを実践することで自己効力感を高め、結果行動力を高めることにつながるのです。ここからは少し専門的な心理学の話になるのですが、マインドフルネスとinsula島皮質は比例関係にあり、密接な関係性を持っています。この不思議な名前は、ドイツの解剖学者、神経学者にしてゲーテとも交流のあったロマン派精神医学者であるヨハン・クリスチャン・ライルが、この部位を初めて学術的に取り上げ、これにより「ライルの島」と呼ばれたことに由来しています。insula島皮質では3つのnetworkを構築しており、

1、Default mode network :ぼんやり((人間関係)過去) 内側   

2、Seiryns network :島皮質(ネットワークの切り替え) 気づく  

3、Central Executive network   :集中mode      外側

が挙げられます。1つ目のDefault mode network とは、マインドワンダリング状態における思考や意識が勝手にさまよい過去や未来に意識が錯乱され現在地が希薄化している状態のことを言います。2つ目のSeiryns networkでは、意識の方向性において内側と外側の中間に位置し、自分の現在地を認識している状態のことを言います。最後のCentral Executive networkでは、今生きている身体に意識が向いて、マインドフルネス状態に位置している状態のことを言います。仏教とは身体に意識を向けることでDMNの活性をおさえるという行為のことを指します。マインドフルネスの実践によって、感じられるのは今、つまり今に生きている身体に意識が向くことを目的としています。話が脱線して申し訳ないですがもう少しinsula島について話させていただくとinsula島皮質は多くの心理学者が興味をもっている脳機能である、その理由は19世紀末に、アメリカの心理学者であり、またプラグマティズム哲学者でもあるウィリアム・ジェームスによって主張された感情の末梢起源説にこのinsula島皮質が大きく関連しているからです。末梢起源説とは、何らかの刺激が認識されると、それは内臓を中心とした身体反応を惹起し、その反応の信号が脳に送り返されることで感情体験が生じるという考え方であり、長らくその根拠が提唱されずにいました。しかし近年の神経科学の発展により島の機能が明らかになったことで、感情の末梢起源説に、初めて実証が与えられはじめたと言うことができました。イギリスの認知神経科学者であるヒューゴ・クリッチレーは、内受容感覚に関する島の機能を、神経画像法を用いて可視化し、その機能を詳しく解析することに成功した。

この実験内容は次の通りです。

あなたは、MRIスキャナの中に横たわって脳画像を撮像されている。イヤホンからは、ポーン、ポーンという音が連続的に聞こえてきて、その音に注意するように告げられている。その音が何であるか教えられないうちは、島の活動は全く観測されない。ところが、実はその音はあなたの心臓の拍動であることが伝えられると、島の前部が活発に動き出す。聞こえてくる音に心拍という意味が与えられたことで、単なる外的な音声刺激から自分の心臓の動きへの注意が切り替わる。これにより、内受容感覚の神経回路のゲートが開く。この働きを担っているのが島なのである(Critchley, 2005)。
 興味深いことにこの研究では、このように自分の心臓に注意を向けた時に、島の活動が大きい人ほど、不安傾向が強いことが示された。確かに日常においても、胃が痛む、鳥肌が立つ、胸が締め付けられるなど、身体反応が不安のような感情の記述に用いられる。そのような、内受容感覚が敏感な人ほど神経質であり不安に陥りやすいというのは実感に合致しているし、感情の末梢起源説とも整合しているように思える。http://www.yuhikaku.co.jp/static/shosai_mado/html/1401/11.htmlより引用


このようにinsula島は、身体信号の内受容感覚に基づいて感情体験を形づくる機能を持つ。さらに最近の研究により、島には、それだけにとどまらず実に多様な精神機能が関連していることが浮かび上がってきている。その一つがマインドフルネスとinsula島の比例関係性であり非常に不思議な機能を持っています。


今回はマインドフルネスの具体的な実践法と、それと大きく関係するinsula島皮質の不思議について述べました。次回は3つ目のファクターである、内的イメージの書き換えについて解説していきます。信念というのが行動を司っている、プラシーボ効果、潜在意識について解説、また具体的なイメージ書き換え方法として、スイッシュパターン法などを紹介します。


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