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Never Die Young

この夏はこれまでより蚊に刺されない。あと、1日中冷房にあたってもぶっ倒れなくなった。暑さが過酷なのか、私が鈍くなったのか。極端な気候のなかエアコンの風に触れてすっかり運動などしない生活を送っていると、身体の耐用年数のことを考えていたりする。この身体はあと何年もつのだろう。

東京キネマ倶楽部で、Hermann H. & The Pacemakers(以下、ヘルマン)主催のNever Die Youngを見てきた。ヘルマンは高校生の時から憧れだった、SFCの軽音サークル出身のバンドだ。昭和のサザンみたいな暑苦しさと、英語圏のドライさが両立しているっていうか、まあかっこいいんです。

Hermann H. & The Pacemakers - 言葉の果てに雨が降る https://youtu.be/R-T6CLzrqhk

その中心的ソングライターでもありギターボーカルの岡本洋平が、闘病から復活した最初のライブがNever Die Youngである。30代のシンガーとして、咽頭がんのステージ4の宣告はまじで崖から突き落とされるような衝撃だっただろう。家族や、当時活動休止明けでこれからという時期にあったメンバーの心労も計り知れない。しかし岡本は文字通り復活を遂げ、あの声で歌う姿を見せてくれた。

彼を迎える客席は、OA含む4組の対バンの演奏時からゆるやかなお祝いムードを共有し、トリのヘルマンのステージを見守った。誰かの帰りを待ち望んだ人たちの笑顔が集まっている場所は、なんて幸せだろう。その光景を目にし、ありがとうの言葉しか出ない岡本を、メンバーも無言で見守っていた。もともとMCの少ないバンドだけど、この日が来たことの意味を感じる「間」だった。観客もその意味をかみしめていた気がする。

岡本がギタリストとして共演する中村一義はアコースティック編成で登場し、自身の歌詞にからめて「ここには『死んでるように生きてる』人はいないよ!」と笑った。岡本は新曲の演奏の前に「死んじゃダメだよ」とつぶやいた。こんなに鬼気迫るタイトルを冠した、そしてこんなにあたたかさを感じるライブイベントがあるだろうかと思った。

個人的にはPOLYSICSのフミちゃんが私と同じ型のベースを弾いてたのをガン見できたことが満足だったが、バンド特有の高音と全体的な音量に耳がやられたのが心残りだった。ヘルマンにはぜひ渋谷あたりでライブ活動再開してもらいたい。ウルフ含めて7人の音を立たせるにはライブハウスのPAが必要だ(ウルフの存在がどんどんでかくなっていて、それすら泣ける。ことほどさようにヘルマンにおけるウルフというパートはエポックメイキングだ)。そして岡本洋平にはアコースティックでミニアルバムでいいからリリースしてほしい。あの声と曲はいま、アコースティックでこそ輝くと思う。

イエモン再結成の時も今回も思ったけれど、つまり私は「15年前から好きなバンドのライブ(ビューイング)」に行く人になった。15年前の自分には、「(昔を懐かしんで、なじみのあることにばかり関心とお金を使う)ダサい大人」に映るだろう。

それでも、これからの人生で一番若いのは今。私は自分が喜ぶことを知っている。15年前に比べたらいろんなものを見てきて、それとともに自分の熱量が減っていく毎日の中で、自分を生きた自分として保つ方法を持っている。自分として音楽をやって声を出したり、お酒を飲んだり、3時間スタンディングでライブ聴いたりして楽しめる時間は永遠ではない。仕事のためになけなしの情熱を傾けたり向上心持てるのも体力があるうち。若くして世を去ったあの子やあの人のことも思いながら。ネバーダイヤング。しあわせに今を生きる。

#エッセイ #コラム #日記 #音楽 #ヘルマンエイチアンドザペースメーカーズ

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