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「痩せていることは美しい」はここから?ミニスカートとダイエットとツイッギー
先日、いつものように職場のパートさんと世間話をしていました。後期高齢者を過ぎても元気なパートさんで、
「若い頃はミニスカートを履いてたのよ〜」と楽しそうに言われるので、
若い頃の写真を持ってきて!とお願いすると、
「いやだよ~!」と照れた後、
「私たちが若い頃はツイッギーが流行って、みんっなミニスカート履いてたのよー」
あ、そうかと私は思いました。
日本の「痩せ賛美」と
痩せを崇め奉る「痩せ信仰」の火付け役は、
イギリスのモデル・女優の「ツイッギー」だったのかもしれないと。
40代の私はもちろんリアルツイッギー旋風を知りません。
けれども、時代を振り返るクイズ番組などで、何度も見たことがあります。
小さい顔にショートカットがスタイリッシュで、ミニスカートから出たスラリと伸びた長い脚、
何秒かの映像だけど、時代を感じさせない洗練された姿に、魅力を感じない人はいるのかと思うほどでした。
ツイッギーは何のために来日したのか調べてみました。
来日した日は1967昭和42年10月18日、今から57年前でした。
文春オンライン『ご存知ですか?10月18日はミニスカートの女王ツイッギーが来日した日』より抜粋
「ツイッギーを日本に招待したのは、合成繊維メーカーの東洋レーヨン(現・東レ)だった。」
「このとき企画の中心として働いた同社の宣伝部長(当時)の遠入(えんにゅう)昇は、前年のビートルズの武道館公演を観て、時代の新しい流れを感じ、ミニスカートの普及のためツイッギーを呼ぼうと決めたという。」
「繊維産業に陰りが出ていたこのころ、遠入には『もしスカートが短くなれば、ジャケットもワンピースも、コートも短いものに買い替えることになる。ランジェリーすら替えなくてはならない。日本中の女性がそうなれば、膨大な経済効果が期待できるはずだ』との思惑があった(『朝日新聞』2010年9月25日付夕刊)。」
「はたしてツイッギーの来日を機に、ミニスカートは若い女性を中心にまたたく間に日本に広まり、2年後には、時の佐藤栄作首相の寛子夫人が渡米時に着用するまでになった。」
ツイッギーが日本に招待したのは合成繊維メーカーの東洋レーヨン(現・東レ)、繊維産業の経済発展のためでした。
宣伝部長の先見の明もあり、パートさんが「みんっなミニスカートを履いていた」と言うようにツイッギーの経済効果は期待通り、もしくは期待以上だったのかもしれません。
こういった服飾業界はいかにトレンドを生み出していけるかが鍵となりますよね。
安室奈美恵さんが爆発的人気を博した時にも、ミニスカートが流行り厚底ブーツも流行りました。
ツイッギーでも、安室奈美恵さんでも、他の誰の効果でも、ミニスカートが流行ればもちろんミニスカートが売れるわけですが、
「ミニスカートが流行れば、ダイエットも流行る」だろうと思っています。
「脚を出す」からです。
ミニスカートの下は隠せない、隠しようがないため、少しでも細く見えるように浮腫み対策をしたり、筋トレしたり、必死にダイエットをするのです。
「ミニスカートが流行ると景気が良い」なんて聞きますが、
「ミニスカートが流行るとダイエット率が上がる」
ような気がするのは、統計があるわけではなく自分の経験からですが、
関係ないわけでもないと思えませんか?
ダイエット率が上がれば、ダイエット関連の商品が売れます。
ダイエット市場は「ダイエット」の一言を広告に載せることで売れ行きが変わるんじゃないと思うほどなので、
ミニスカブームの経済効果はバツグンだと思います。
ツイッギーによりミニスカートが流行し、恐らく当時の若い女性たちも、彼女のように小枝のようなスタイルになりたいと思い、
食べないダイエットなどしたのではないかと思っています。
ツイッギーは
「痩せていることは美しい」
「痩せることは可愛い」
という当時の女性たちのダイエットモデルとなって、
ツイッギーが現れた辺りから、
今日まで延々続く「ダイエット思考」「痩せ賛美」は浸透していったんじゃないかと思えます。
こんなことを考えていると、
私たちが「痩せたい」と思うこと
「痩せていることは美しい」と思うことは
結局のところ、
ミニスカートブームにあるような
「経済効果や経済発展の波及効果」として「作られたもの」だと、
私は思ってきているんです。
「延々続くトレンド商戦」
なんだろうなと。
モデルやタレントが細い身体を保つのは、商品としての価値を上げて経済効果を生むための1つの手法で、
それに、私たちはまんまとハマり、振り回され、
健康を害して、命を削っているんだろうなと。
「痩せていることが美しい」
とされていることに、
何の思いも抱かずに受け止めていましたが、
それが良いとか悪いとか、
事実そうだとか事実そうじゃないとか置いてみると、
「痩せていることが美しい」
とされていることが、自然にそうなったわけではなく、
「様々な経済効果や経済発展を目的の上に成り立ち、作られているものなんだ」
ということが、
言えるような気がしてきたんです。
小枝のようなスタイルで日本中を魅力したツイッギーは現在75歳。
Wikipediaにスタイルは生まれつきのものだと書いてありました。
2004年の来日時やせていたのは体質で「今でもかなり食べますけど、当時は太りたくていっぱい食べていたんです」と語っています。
スタイルを保つために絶対に何かしているでしょと思うのに、「特別なことは何もしてないんです」と言う日本のタレントさんもいますが、ツイッギーは本当に自然体の人のようです。
Vogue Japan ツイッギー、祝74歳「世界は私の脚を記憶している」往年のカルチャー・アイコンが語るナチュラル・エイジングでの記事です。
「『私の自慢は、自分の顔のシワです。私は、これまで一度も美容医療を受けたことがありません。ですが、他人が顔に少しばかり手を加えたいと思う気持ちは理解できます。将来的には、もしかすると私も手を出すかもしれないですから。だけど、綿を詰めたように不自然に膨らんだ頬になるような注射だけは怖くて絶対にしたくない。それに、ボトックスも今はセレブにとって当たり前のような扱いになっているけれど、よく考えてみて下さい。“ボツリヌス菌”ですよ?』」
「こう苦笑する彼女は、ボディメイクの面でも背中の不調を解消するために60歳を過ぎてから始めたという週1回のピラティス以外は特に激しい運動もしておらず、リラックスしながらボディメンテナンスを続けているという。」
「“ボディ”といえばツイッギーはティーン時代から今までのキャリアを通して、すらりと伸びた美脚が印象的だが、一度もランジェリーやヌードになったことはない。これはティーンの時に彼女が決断したポリシーだったと明かしているが、例えば72歳でチャリティのためにトップレス姿になったヘレン・ミレンや、81歳のマーサ・スチュワートの水着姿など、晩年になりボディを披露するセレブが多い中、彼女がこれから挑戦する可能性はあるのだろうか?」
「『いいえ。私はしないでしょう。デビューしたときからそれはしないと決めていたし、今も、これからも絶対にあり得ない。ほかの人がやっているのは大いに結構ですが、私にはヌードや水着が似合わない。それが分かっているからやらないのです』」
自分の魅力をわかっているから、自分の魅せ方をよくわかっていますし、自分を信頼し愛しているから堂々とした自信が伺える記事です。
生まれつき恵まれたスタイル、自分を愛して、自然体の姿で生きているツイッギー。
多くの人が、スタイルはもちろん中身にしても、ツイッギーのようになりたいと思うことでしょう。
「本当の美しさは表面的なものではない」と、ツイッギーは分かっています。
美しさが勝負の世界で、こういったコメントができるのは、やはりこれまでの苦難と功績があってのことだと思います。
けれども、
「ツイッギーのように自分を愛せるほどに素晴らしい個性に恵まれている人だから、本当の美しさは表面的なものではないと理解できるんだろうな」なんて、
ひねくれた考えをするのは、きっと私だけではないはずです。
自分の意思なのか判断なのかも分からなくなるくらいに、疑いもしないくらい普通に、
社会的通念や世間一般の流れに飲み込まれていることは、たくさんある気がしています。
「美しさは表面的なものではない」
というツイッギーのような理解が、
「そうはいってもね」
という、
これまでずっと抱いている「世間一般的見解」を差し込むことなく、
本当に自分の理解になるまで、
こんなことを書いている私にだって、
やっぱりもうしばらく時間がかかるかもしれません。