「笑える~こわい話」第26号
メルマガ 2014年11月12日
笑える~こわい話 第26号 発行 アメージュ
ブログでは語れない真実をお届けするメールマガジンです。
目 次
(1)紗依のここだけの話「生活苦」
(2)編集後記
紗依のここだけの話 第26回「生活苦」
私は幼い頃、二階建ての二軒長屋に住んでいた。通路が隣とつながっており、共同トイレ、共同キッチンだった。
会社員の父、和裁師範の母と母方の祖母、そして5歳年上の姉、3歳年下の弟のほか、母の弟子である住み込みの弟子ふたりを含めて、合計8人で住んでいたので、二階建てとはいえとても狭かった。
一階の居間には和裁で使うバン板(大きなテーブル)が広く陣取り、そこで和裁の仕事をしていた。
二階には四畳半の部屋がふたつあった。ひとつは弟子ふたりの部屋で、もうひとつは祖母と姉が使っていた。
両親と私は、とても部屋とは言えない屋根裏で寝ていた。
うろ覚えだが、姉の部屋にはオルガンがあった。姉はオルガンを習っていたので、絶対音感をもち、とても歌が上手かった。今思えば、生活苦だったのに姉は優遇されていたように思う。
冬のある日、顔が冷たくて母親を起こした。
「お顔が冷たいの……」
母は何も言わず、やさしく私の顔の雪を払ってくれた。
壁の隙間から雪が入ってくるようなところで私たちは生活をしていた。
生活がたいへんなところに追い打ちをかける出来事が次々とあった。
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