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レンタルビデオ屋さんにまだ通っている

つい最近、ボランティア活動を一緒にしている友人とご飯を食べに行った際、映画の話になった。私は最近見た映画や、好きな映画館のことを話した(1番好きなのは新宿武蔵野館か、地元の小さな映画館である)。その際にポロッと「最近借りたやつで、、」と言ったら、「え!まだレンタルビデオ屋行くの?!」とかなり驚かれた。

そう、私はまだレンタルビデオ屋さんに通っている。勿論サブスクで映画を見ることの方が多いが、ほぼ毎週お店に足を運んでいる。何故かと聞かれたらお店の雰囲気が好きだからとしか言えない。

高校生の頃はとにかくお金がなかった。LIVEの出演料、ライブハウスまでの電車賃、スタジオ代、楽器を買うための貯金(軽音楽部だった)、私の日々のお小遣いはほぼそれらに消えていた(加えて、高校はバイト禁止だった)。故にサブスクで映画を見るなんて余裕はなかったし、クレジットカードも持っていなかったから契約の方法もよく分からなかった。そんな時よくレンタルビデオ屋に行った。彼氏とお金を出しあって―と言っても300円くらいだが―、一緒に映画を借りてお互いの家で見ていた。その記憶が今でも大切で、レンタルビデオ屋に行くとその当時のことが蘇る。

それに、レンタルビデオ屋では「あなたへのおすすめ」もないし、星評価もない。タイトルやパッケージ、出ている俳優さんや裏面のあらすじを見て、映画の内容を想像し、借りる。この「自分で選びとっている感じ」が好きだ。誰にも選ばされず、評価も気にせず、自分で決められることはこの情報社会ではあまりないように思える。

レンタルビデオ屋でないと出会えなかった映画は案外ある。例えば「ベティ・ブルー」(配信が一切ない)というフランス映画。愛の暴力と許容、寂しさのようなものを描いた映画で、とにかく絵が美しい。閉園間近の遊園地、モンマルトル駅のシーン、2人でピアノを弾くシーン、誕生日ケーキを渡すシーン、とにかくこの映画は見ていて惚れ惚れするようなシーンが多いのだ。これは地元のレンタルビデオ屋さんで何となく手に取り観た映画で、今では好きすぎて円盤も持っている。もし私がサブスクでしか映画を見ていなかったら、ベティ・ブルーにはきっと出会えていない。そんな人生は寂しい。

〇〇円で映画が見放題、というようなコスパ重視のこの社会では、きっと1本100円程度かけて映画を借りるのはきっとコスパが悪いと見なされるだろう。けれど私はこのコスパの悪さを愛しているし、まだまだ自分で選び取りたい映画が沢山ある。

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