私をふった彼から数ヶ月ぶりに連絡がきた。
私がふられた理由とは何であっただろうか。
私がお風呂に入っている間に元カノに電話をかけていたことを咎めたから?
遠距離恋愛なのに、地元に帰ってきても、私が言わなければ会いに来ようとしなかったことを怒ったから?
あなたの誕生日をサプライズで祝った夜に、バイトの送別会に行きたいから先帰っていて、と駅で言われ、家に帰ってきたあなたに泣いてしまったこと?
思い出せばあなたは最低な男だった。
そして私が本気で大切にしたいと思った男だった。その時は。
あなたは、私と付き合い、きっと私のこともそれなりに好きだったはずだ。しかしそれとは別の世界で、あなたの心の中には彼女がいた。彼女はあなたが高校生の時の元カノで、浮気をしてあなたのことを振った子だけど「別に好きじゃない」なんて言いながら、私の目を見ないあなたの横顔は、きっと今の私と同じ顔をしていた。
別れてから5年近く経っても、彼氏と別れてはあなたに連絡をしてきて、まんまとその彼女にあなたを奪われた私だけれど、今はもう、それで良かったと思っている。少なくとも、あなたと私は、ずっとは一緒にいられなかった。
お互い、気づいていただろうけれど。
でも、あなたを過去の男にするまで、私がどれだけ悲しみ、憎しみ、傷ついたかをあなたは知らないだろう。平気で別れてからも連絡してきては、期待させたあなたは、やっぱり最低だった。
あなたが目に入らないように、連絡先は消し、SNSも変え、私の人生からあなたを消すことができるように最善を尽くした。
それでも、毎日頭の中に出てくるあなたを、泣きながら押し殺しては、新たな自分の人生をつくろうと必死だった。
破壊と創造の繰り返しだった。
あなたと付き合っていた日々と引きずる日々が同じになりそうで怖くて仕方なかった。誰かと出かけても、街のコーヒーショップを見つけては「あ、好きそう。」と思い出す癖はなくらなかった。
いつになったらあなたのことを思い出し、泣かないですむ日がくるのか分からなくて辛かった時、ある人にこんな言葉をもらった。
「変わらないことってないんですよ。良いことも悪いことも、変化しないものって一つもないんです。だから大丈夫。」
なんの確証もないこの言葉に、確かにあの時の私は救われた。そして今でも私を支え続けてくれている。
変わらないものはない、そしてその言葉は本当であった。
今の私は、あなたを脳内のどのフォルダ入れたのだろう。
「淡い思い出」「いらない過去」「飲み会でネタにできる過去の男」
どれも間違いであって、間違いではないかもしれない。
あなたを思い出して涙は出なくなった。でもなんだろう、何かわからないがものが、心のどこかにある。言語化するには、私の語彙力が伴わないが、もう少し大人になれば分かるのだろうか。正直に言うと、はっきりさせてしまうのが怖い。
そんな今の私にあなたから数ヶ月ぶりに連絡が来たのは、つい数日前。
別れた頃あんなにも欲しくて仕方なかったあなたの連絡を、6時間以上開かずにいた私は何か成長したのだろうか。
でも確かに、あなたからの連絡を無視して消すことはできなかった私もいた。
「明日の国試、頑張ってね」
私が泣きながら話をしたいと言っても時間をつくろうともしなかったあなたが、数ヶ月間連絡をとっていない私の国試を応援するなんて馬鹿らしい。
馬鹿らしい。
馬鹿らしいって思ってやる。
その返信を、何度も書いては消してを繰り返したことが悔しくて、でもそんなの、あなたには分からないことを良いことに
「ありがとう、そちらも頑張って。」
そう送ってまた連絡先を消せた私を、少なくとも今は褒めたい。
ふられた理由を突き止めても、あなたみたいな最低な人にふられたと言う事実を再認識するだけだから、そんなことはもうとっくにやめた。
あなたと私は合わなかった。もうそれで終わりにしよう。
でも一つ、数ヶ月経った今でも私がふとあなたを思い出すように、あなたも私を思い出したということだったのなら、お互いに過去を、良い思い出というフォルダに入れられたということでしょうか。