見出し画像

[小児科医ママが解説] おうちで健診:いつまでに、どんな段階のお座りができていればOK?

「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。

前回前々回と、6~8ヶ月健診の第一回として、「寝返り」を見てきました。


今回は「お座り」について。

寝返りと同じ時期くらいから、「うちの子、まだ支えてないと、グニャっとなってお座りできないけど大丈夫?」など、お座りについての心配もふえてきます。

お座り1回目は、いつまでに、「どんな」お座りができていればOKか?を詳しく見ていきます。
お座りといっても、大人が支えて・手をついて・手をつかずに・・・など、色んな段階があります。

単純に「お座りができない・・・」と焦る・もんもんとするのではなく、今、お座りの段階のどこまでできていて・次はどんなステップがあるのか。

もう少し詳しく知ることで、少しでもおだやかに過ごせる時間が増えるとうれしいです。


今回の主な参考文献はこちら。

●「正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン」
阪下和美、東京医学社、2017年

●「ベッドサイドの小児神経・発達の診かた(改訂4版)」
桃井眞里子・宮尾益知・水口雅、南山堂、2017年

●「乳幼児健康診査・身体診察マニュアル」
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/kokoro_jigyo/manual.pdf
平成29 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター


6ヶ月で33%、7ヶ月で70%の赤ちゃんが、お座りをする。本格的に安定してくるのは、9~10ヶ月くらい。


「教えて!ドクター」のフライヤーでは、6~8ヶ月健診で「お座り」の項目がでてきますが、実際にどのくらいの赤ちゃんが、この時期にお座りができるでしょうか。

そもそもお座りといっても、「手をついてなんとか」座れる or「手をつかなくても」座れる、「背中を丸くして」なんとか座れる・「背中をのばして」余裕で座れる・・・いろんなお座りの発達段階があります。

くわしく見ていきましょう。


生後4ヶ月ころのお座り:お座りしても、頭がガクンと前に倒れない。


生後4ヶ月ころは、ちょうど首が座ってくるころでした。
首すわりができているかの判断は、過去の記事をご覧ください。)


なので、あおむけの状態からゆっくり引き起こして、お座りの状態にしてみると「なんとか頭が前にガクンと倒れてこないで、頭を支えていられる」状態が、正常な4ヶ月です。

なお、まだ4頭身くらいのバランスなので、単純な頭の重みで、多少グラつくのも正常です。



生後6~7ヶ月ころのお座り:手を前につくなどして、一人でお座りできるように。


生後6ヶ月では、1/3くらいの赤ちゃんが、両手を前について・背中を丸くして、お座りできるようになります。

「教えて!ドクター」のフライヤーでは、6ヶ月で「手を前について座る」とありますが、これはあくまで1/3くらいの赤ちゃんにみられることです。

つまり、のこり2/3の赤ちゃんについては、まだ「手をついて座る」までできなくても大丈夫です

一瞬だけ座れたけど、ぺしゃっと前に倒れちゃう、というのも、生後6ヶ月ではまだまだ許容範囲内です。

お座り6M
「ベッドサイドの小児神経・発達の診かた(改訂4版)」(桃井眞里子・宮尾益知・水口雅、南山堂、2017年)


生後7ヶ月になると、70%の赤ちゃんがお座りできるようになります。

お座り7M
「ベッドサイドの小児神経・発達の診かた(改訂4版)」(桃井眞里子・宮尾益知・水口雅、南山堂、2017年)

「教えて!ドクター」のフライヤーでは7ヶ月の段階で「手を離して・背中を伸ばして」座れる、とありますが、これはやや早い印象です。

まだ30%の赤ちゃんにとっては、お座りの準備段階という時期です。
お座りできたとしても、手をついていたり・背中が丸まったりしていても、7ヶ月としては、正常の範囲内ととります。

しかし、7ヶ月になっても、体がぺしゃんと前のめりになってしまうのは、要注意のサインです。


なお、この頃、お座りの状態から左右に倒れそうになると、倒れた側の手は、ちゃんと床につこうとします。反対側の腕も、挙げたり・伸ばしたりすることで、バランスを取ろうとしています。

側方パラシュート
「ベッドサイドの小児神経・発達の診かた(改訂4版)」(桃井眞里子・宮尾益知・水口雅、南山堂、2017年)

これは医学的には、側方パラシュートという神経の反射の準備段階です。
体のバランスを保つために大切なので、生後6~8ヶ月くらいに出てきて、一生ある反射です。


完全にお座りをマスターしていなくても、こうした動きが少しずつ見えていれば、赤ちゃんはお座りの準備をがんばってるんだな~と思って良い証拠です。

単純にお座りができる・できない、の2択ではなく、こうした準備段階にも注目してあげられることで、親御さんもハッピーな時間が増えたら嬉しいです。


生後8ヶ月ころのお座り:お座りの状態で、おもちゃを持って遊べる。


この頃になると、お座りのときに手をつかなくても良くなってきます。お座りのときに丸まっていた背中も、だんだんシャキっと伸びてきます

なので、お座りしたまま、おもちゃを持って遊ぶお子さんも増えてきます。

お座り8M
「ベッドサイドの小児神経・発達の診かた(改訂4版)」(桃井眞里子・宮尾益知・水口雅、南山堂、2017年)

また、お座りしたときに自分の横にあるオモチャを、体をねじって取ろうとするのもこの頃です。

さきほどの「側方パラシュート」の反射もますますしっかり出てきて、お座りの状態で多少バランスが崩れても、自分で立て直すことができるようになります。


なお、同じ時期にハイハイやずりばいなどが見られるお子さんもいます。
が、ハイハイやずりばいからお座りの姿勢に自分でなるかというと、8ヶ月ではまだ少し早いです(もちろんしても異常ではありません)。

こうした別の姿勢から、お座りをするようになるのは、生後9~10ヶ月ころが一般的です。

生後8ヶ月で、必ずしもフリーハンドで座れない・手をついていないと座れないのが異常かといわれると、むずかしいです

手をつけば安定して座っていられる、のであれば、必ずしも絶対に異常というわけではなく、ひきつづき、手をはなして座れるようになるか様子を見ていきましょう、となります。

が、生後8ヶ月の段階で、なんとか手を支えたとしても、どうしても一人で座れない、というのは、要注意のサインです。



生後9~10ヶ月のお座り:手を支えなくても、本格的に安定したお座りができるようになってくる。


ようやく、本格的にお座りが安定してきます。

さきほどの「側方」パラシュートにくわえて、「後方」パラシュートも発達してきます。
つまり、お座りの状態から後ろ方向にすこしバランスが崩れても・崩されても、自分で手をついたり・体の筋肉を使ったりして、バランスを立て直すことがますます上手になってきます。

ハイハイやうつぶせなどの姿勢から、自分でお座りの姿勢をとるようになるのもこの頃です。
お座りの姿勢から、膝立ちしようとするお子さんも出てきます。



いかがでしょうか。

一口にお座りといっても、色んな段階があること。
またお座りの姿勢をとるために、じつは神経の反射も成長している。
など、お座りのための色々な準備を日々、赤ちゃんが頑張っている様子が伝われば幸いです。

次回は、お座りの姿勢(バリエーション)、お座りできない原因、またお座りで受診をする目安を、ご紹介していきたいと思います。

(この記事は、2023年2月2日に改訂しました。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?