ベアトリーチェ①
マリリンが故障してから半年。私は筆記用具を探していた。
新しい万年筆を買った方がいいだろう。しかし、金が無い。愛人の治療費すら賄えないほどの貧乏なんですよ、そんな金どこから出てくるんですか。
そもそも万年筆って時代遅れの筆記用具だろ。
パソコンやスマホで文章がぽちぽち書ける令和の時代に、何故手書きで、しかも万年筆というメンテナンスが大変なものを使っているんだ。ゼブラとかユニのゲルインクボールペンを10本くらい買ってストックしといたらそれでいいじゃないか。実際履歴書はそれで書いてるんだし。
万年筆が使えなくなってから、日記をつけるとか原稿を書くということが億劫になった。
やる気が出ない。せっかく書くのが楽しくなってきたのに、水をさされたような気分になった。
水性ボールペンだと書き出す気力が湧かない。書いてても楽しくない。気分が上がらない。そもそもボールペンは手首が痛くなるからあんまり好きじゃないの。インクが薄いし、文字が細いし、なんか嫌。
万年筆を言えば、モンブランか。それしか思いつかない。
スマホで金額を調べてみた。吐いた。これ文房具に使う金額じゃないだろ。これ。一桁多いじゃないか。
分かった、モンブランは止めよう。これはお金持ちのための道具だ。他の万年筆を見てみよう。
パイロット(国産)
プラチナ(pt)
モンブラン(ドイツ)
ペリカン(鳥)
知っているのはこれだけだ。1番安くて10,000円弱か。
アホらしい。
筆記用具に万札を出すとは馬鹿馬鹿しい。
お前には万年筆は早すぎる。
お前の先輩万年筆は1000円だったんだぞ。
身の丈にあった買い物をするべきだ。そうだ、いい機会だからいろんなボールペンを買ってみるんだ。自分に合ったボールペンが日本にはあるはずだ。これで経済的にも余裕ができるはずだ。俺は万年筆のマニアじゃないんだ。筆記用具なんて書ければいいんだよ、書ければ。
《続く》