廓を通って 前編
訪問看護のお仕事初日。
先輩看護師が訪問先まで同行してくれるはずだった。
が、緊急別件対応のため一緒に行けないと。
自分で現地まで行ってね、と。
訪問先のマンションの部屋前で、待ち合わせることになった。
渡されていた地図通りに自転車を走らせると
突如として情緒あふれる料亭の立ち並ぶ区域に、突入した。
自転車から降りてあたりを見回すと、
なんともいえないノスタルジックな雰囲気に
思わず「綺麗……」という言葉がこぼれた。
「おつかれさまです。」
可憐な声が、聴こえる。
私は緊張していたため、びくっと驚いた。
見ると立ち並ぶ建物の入り口が開け放たれており
玄関にあたる場所に、可愛い女の人が座っている。
私がぺこりと頭を下げると、女性が小さく微笑んだ。
どゆこと?
どゆ場所?
……後編につづく……
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