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生きましょう 後編


 玄さんは倒れてから入院するまでの記憶がほとんどなかった。
 激しい罵倒も軽い暴力も、平謝りに謝ってくれ、あなたは素晴らしい看護師だ、と褒め称えた。

 おしっこが出なくなるというのは、なんとも恐ろしいことである。
 私は玄さんに数日間はおしっこの管の管理などの指導をし、また在宅生活を継続するために、近医への受診と訪問看護サービスの利用に繋いだ。

 玄さんは高学歴で某大企業勤務を経て起業した経緯があり、理解力が高く、指導すれば行動変容を起こせる十分な能力を持っていた。

 長く1人で生きて来て、ふだん病院に行くことがなかった方にありがちな出来事であり、定期検診や受診の必要性を実感するケースである。

 「役立たずの看護師」という言葉にムカついた私自身の中に、コンプレックスがあったことは否めない。
 
 地域包括支援センターの保健師は、ふだんは直接医療的処置を行わず、ある意味「繋ぎ」的な役割である。
 やりがいのある仕事ではあるが、時折医療職である自身の承認欲求の疼きを感じることを、
否めない自分がいた。

 その後、折につけ玄さんはセンターに顔を出すようになり、命の恩人であることを会う人すべてに毎回のように伝えてくれた。

 実際の支援はセンター職員みなで連携して行ったことであった。しかし、玄さんの言葉は私の医療職人生に大きな自信を与えてくれた。

 こちらこそ、玄さんは私の医療職人生の命の恩人である。

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