#366 前夜

早大ラグビー部の新人練習が始まる前日。
僕は友人Aが早大ラグビー部練習グランドに近いところにあるアパートを借り、一人暮らしを始めた部屋に居た。
翌日からの新人練習に向け、高ぶる気持ちを抑えつつ、友人Aといろいろ話をした。
友人Aはとにかく早稲田ラグビーに対する熱い思いを捲し立てる様に語った。
彼が早稲田ラグビーの歴史を話しだすと止まらない。1時間でも2時間でも3時間でも止まることなく、話し続ける。
彼は神奈川県にある有数の進学校に通っていた。
その高校は3年になると夏を前に、早々にラグビー部を引退するのが流れだった様で、彼もその流れで引退。
秋に開催される花園予選出場も叶わず、悶々とした思いを抱えつつ、受験勉強をしていたらしかった。
彼は2年ちよっとしかラグビーができなかったが、その間にすっかりラグビーの魅力に取り憑かれ、早稲田ラグビーを目指した。
昨年、残念ながら入部が叶わなかったが今年こそ早大ラグビー部へ入部するんだと言う思いは人一倍強かった。
僕はその彼の強い思いに引っ張って貰い、早大ラグビー部入部の再挑戦への決意をした部分が強かった。
その彼と彼の一人暮らしの部屋で翌日に控えた新人練習開始を前に、語り尽くしていた。
数時間して僕は彼の部屋を後にした。
翌日の健闘をお互い誓い合った。
すっかり暗くなった夜空の下、僕と友人Aはガッチリと握手を交わした。
友人Aの目は潤んでいた。
それを見た僕も思いが込み上げてきたが、グッと噛み締め、堪えた。
さあ、明日からやるぞと言う強い気持ちを抱き、帰路へ。
続く…

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