#318 同級生A

お互いほぼ同時に気付き、驚きの声を上げた。すれ違った彼は早稲田大学ラグビー部新人練習で知り合った神奈川県の進学校出身で僕と同じ2浪して合格したAだった。Aは新人練習の時に彼から僕に声を掛けてくれて仲良くなった新入生だった。
僕は新人練習を突然行かなくなったのでAとも別れの言葉を交わすことなく、もう会うこともないかもしれないと思っていた。
そのAと春の早慶戦の当日券を買うべく徹夜していた時にばったり出会うとは何たる偶然かかなり驚いた。
この日集まっていた大学生達の数を考えると、たまたまばったり路上で出会う確率はかなり低いものと考えられた。
僕はAに「何でここにいるんだ?」と聞いた。
Aは僕に「何で急に新人練習来なくなったんだ?」と聞いてきた。
僕は黙って居なくなったことを詫び、「休みを挟んでまた行くのが馬鹿らしくなった。何だか緊張の糸が切れてしまった。」と答えた。
Aは「あれから俺は新人練習で落とされてしまった。今はあるサークルに入り、早慶戦の当日券買う為、並んでいたんだ。」と答えた。
Aが歩いていたのは僕と同じ様な理由で気分転換を兼ねてだったようだ。
それからお互いの現状を話した。Aは最初、大学内でもラグビーサークル内で1,2を争う強いラグビーサークルに顔を出した様だがすぐに違和感を感じ行くのを止めたらしい。そして来年、もう一度ラグビー部の新人練習を目指すべく、準備をしているとのことだった。
その準備とは、基礎体力を上げる為にトライアスロンサークルに入部したとのことだった。あくまでも1年後、ラグビー部の新人練習に受ける為、1年限定で入会させてもらえないかトライアスロンサークルの部長に直談判し、入会許可をもらったとのことだった。
Aは既に来年にラグビー部入部を目指す事を決意し、それに向け動いていた。
僕は新人練習の時に知り合った2年入部を目指している鹿児島出身の2年生に話を聞いて、そんなシステムがあるのかと驚いた。
まさかその2年入部をAが目指しているとは思いもしなかった。
Aはすぐに僕も一緒に来年に2年入部を目指そうと誘ってきた。僕は正直、そのつもりはなかったので、返答には言葉を濁した。
続く…

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