#370 甘い匂い
日に日に練習が過酷になっていった新人練。練習メニューで唯一ラグビボールを使って行われるキックダッシュ。
4人一組でボールをパスで繋ぎ、30m~50mを走り抜ける。
ゴールラインを越え次第にすぎにスタート位置に戻り、順番がくるとどんど再スタートを繰り返す。このメニューが進むにつれ、4人1組が崩れ始め、4人の中で着いていけなく遅れを出す者が出てくると、遅れずに走り続けている者はより負荷が掛かり、辛くなる。僕の組も毎回、遅れを出す者がおり、4人が3~2人で行うことが生じた。この練習の毎日の組もあまりメンバーが入れ替わることなく、時間が経つと同じメンバーが遅れ出す。
そのメンバーを責めることは出来ないのでその事実を受け入れるしかなく、この時間が来るのは憂鬱以外の何物でも無かった。
そのメンバーも自分のことで精いっぱいで自分が遅れている事を詫びる余裕も無いまでに消耗しているのを見るとどうこういうことができない。
本当はラグビーボールを持って行う唯一のラグビーらしい練習なのだが、楽しめない自分がいた。
当然、このメニューで終わりの訳ではなく、次はグランドの外を走りに行く練習。これは持久走的なメニューで僕にとっては苦手なもの。
コースの途中にキャラメルコーンで有名な東鳩の工場があった。
この工場に近づくと、キャラメルの甘い匂いに包まれた。
よってこのメニューは「東鳩」と言われていた。
キャラメルコーン自体は大好きだが、このメニューは大嫌いでもう少しでキャラメルコーン自体も嫌いになってしまいそうな程だった。
これを乗り切ると最後は恒例のタイム走。一抜けできるか否かは死活問題とも言える。体の疲れも追い込まれた精神も悲鳴を上げていた。
毎日、今日はなんとか切り抜けることができたと練習が終わった後にほっとするのだが、そう思うのも束の間。すぐにまた過酷な翌日がくることを思うとずっしり気が重くなる。
新人練期間の6割を過ぎた時、事件が起きた。
続く…